住宅版テスラの衝撃「最先端スマートホーム事情」
▼ こんな方にオススメ
- 最新のスマートホーム事情について知りたい方
- 日本とアメリカでの住環境の違い、テクノロジーの進化について知りたい方
- 世界における最新のスタートアップの取組み状況と未来を知りたい方
▼ 登壇者
本間 毅 氏 HOMMA Group Inc., Founder & CEO
学生時代に起業したスタートアップを経て、2003年よりソニーにてネット系新規事業の開発、事業戦略に従事。2008年よりアメリカへ赴任。電子書籍の事業戦略等を経て、2012年楽天株式会社入社。執行役員として、デジタルコンテンツのグローバル事業戦略を担当。2016年楽天を退社し、シリコンバレーにてHOMMA, Incを創業。
- 01 Expert Pitchとは?
- 本間 毅氏プロフィール
- 100年間つくりかたがかわらないアメリカの住宅事情
- 新築市場は日本よりアメリカが活況
- ミッションは「未来のHome Living Experiences」
- ハードとソフトが融合する住宅:住宅版テスラの発想
- スマートホームに関わる4つの課題
- 視聴者からのご質問:共通仕様「Matter」について
- 動画「HOMMA Experience」
- HOMMAの展開計画
- 視聴者からのご質問:日本展開について
- まとめ
小川:こんにちは。お待たせいたしました。本日はご参加いただきまして誠にありがとうございます。
それでは、12時になりましたので、01 Expert Pitch第20回を始めてまいります。「シリコンバレー発!世界のエキスパートが最新情報を日本語で解説!」ということで、本日は『住宅版テスラの衝撃「最先端スマートホーム事情」』をお送りいたします。さて、今回はHOMMA Group Inc., Founder & CEO, 本間 毅さんをエキスパートとしてお迎えしております。本間さん、本日はどうぞよろしくお願いいたします。
本間:はい、よろしくお願いいたします。本間でございます。
小川:そして、本イベントの主催者であるTomorrow Access, Founder & CEOの傍島さん、本日もよろしくお願いいたします。
傍島:よろしくお願いします。
小川:そして、私は本日のナビゲーターを務めてまいります、フリーアナウンサーの小川りかこと申します。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは早速ですが傍島さん、本日は記念すべき20回目ということですが、この01 Expert Pitchの狙いを少し教えていただけますでしょうか。
01 Expert Pitchとは?
傍島:あらためまして、Tomorrow Accessの傍島と申します。よろしくお願いいたします。Tomorrow Accessという会社は、シリコンバレーを拠点にしたコンサルティング会社になります。この01 Expert Pitchも遂に20回ということで、本間さんを迎えられて非常にうれしいです。
本ウェビナーの狙いとしては3つあります。まず、日本とアメリカの情報格差の解消ということです。多くの日本の企業の方から「シリコンバレーで今何が起こっているのか」「グローバルでどういったことが行われているのか」といったお問い合わせをよくいただきます。そういった声にいち早くお応えして、迅速に日本に情報をお届けして、日本とアメリカの情報格差を埋めたいというのが1つ目の狙いです。
2つ目は、正しい情報をお届けしたいということです。いろいろなニュースが日本のメディアを通じて届いているかと思いますが、たまにアメリカで感じている温度感と日本に伝わっている温度感が違うなと感じることがあります。ですから、今回ご登壇いただく本間さんのようにエキスパートの方に来ていただいて、正しい情報を解説していただいて、理解をしていただきたいというのが2つ目の狙いです。
3つ目は、日本語での解説ということです。いろいろな情報を英語で取得することができますが、やはり英語だと大変ですのできちんと日本語でお届けしたいという、この3つの狙いを持って01 Expert Pitchを運営しております。
今日も本間さんをお迎えして、最先端のスマートホームの事情ということで、特に日本とアメリカの文化の違いといったところもご解説いただけると思いますので、非常に期待してまいりました。どうぞよろしくお願いいたします。
小川:本日も楽しみです。よろしくお願いいたします。傍島さん、ありがとうございます。
本日のイベントは皆様からのご質問を随時受け付けて進行を進めてまいります。参加者の皆様、ぜひ本間さんにご質問のある場合は、Zoom画面の下にございますQ&Aボタンからご質問をお寄せください。随時私のほうで拾ってまいりますので、皆様たくさんのご質問をお待ちしております。
さあ、それでは本間さん、本日はポートランドにいらっしゃるということですが、まずは簡単に自己紹介からお願いしてもよろしいでしょうか。
本間 毅氏プロフィール
本間:はい。あらためまして、本間でございます。よろしくお願いいたします。自己紹介と言いますと、私は今、アメリカに在住15年ほどになります。もともとは学生時代に会社をつくって、それを売却したあと日本でソニーに入社しました。そこから2008年にアメリカに赴任をして以来、ずっとアメリカに住んでいます。現地で楽天に転職をして、その後2016年にこの会社をつくったという経歴になります。
小川:ありがとうございます。
傍島:珍しいですよね。貴重ですよね。アントレプレナー/起業家と大手の企業、さらに海外を経験されている、本当に数少ない存在ですよね。
本間:そうですね。やはりアメリカに赴任して、アメリカはいいなと思いながらも、傍島さんも同じだったと思いますが、結局、赴任者だといずれは日本に帰らざるを得ない運命がある中で、そこをいかに変えるかという。別にソニーが嫌いになったわけではなく、ソニーは今でも大好きですし、楽天も同じく大好きなのですが、やはりアメリカに来ると、日本人の方が少なくて、日本の起業家も少なくてと、今ではだいぶ増えましたけれども、やはり海外で頑張るというのも1つの選択肢かなと思って今に至る感じです。
小川:ありがとうございます。では、早速セミナーのほうをお願いいたします。
本間:はい。自己紹介の続きになってしまいますが、今発売されている『DIME』の中でも「最強のスタートアップ」でご紹介いただいたり、それから、これも最近出た本ですが、日経が選ぶ「世界を変える100の技術」ということでIoT住宅の項目が2022年の期待度ランキングで19位に選ばれているのですけれども、その中で今まさに私がいるこの「HOMMA HAUS Mount Tabor」という自社物件の中での取材というのが取り上げられています。
傍島:すごい!
小川:すごいですね。
傍島:最近ですよね、『DIME』は。
本間:そうです。出たばかりです。たまたま立て続けに出たのですが、そうなのです。
小川:それだけ注目度が高いということだと思います。
100年間つくりかたがかわらないアメリカの住宅事情
本間:では、ここから私のプレゼンテーションを始めさせていただきます。そもそもこの会社をつくろうと思った理由もそうですが、シリコンバレーはいろいろな会社がイノベーションを起こしていて、GoogleやAppleが今のスマホの状態をつくりました。また、本社を移転しましたけれども、シリコンバレーに本社を置いていたテスラが電気自動車やオートパイロットをかなり普及させました。一方で100年経っても家はあまり変わっていないというのが私のアメリカに住んでいる実感で、ここからアメリカの住宅にもっとイノベーションを起こしたいということを思いました。
そもそも、私の会社の話をする前にまずアメリカの住宅事情に触れたいと思います。なぜアメリカの住宅にはイノベーションが起きていないのか。分かりやすく言うと、この左側のグラフです。アメリカでは家を買う人の9割ぐらいが中古を買うのです。家の長さが長く持つということもありますが、新築は全体の10%ぐらいしかありません。「家を買いましょう」と言うと、日本では「建てる」という選択肢がまず頭に来ると思いますが、アメリカの場合は「建っている家を買う」というのが9割方メインです。まず入れ替わりが少ないからイノベーションが起きていかない、古い家をどんどん直しながら使うというのが1つあります。わずか10%しかない新築は、このような感じです。
小川:きれいですね。
本間:良いのですが、100年間つくり方が変わらない、つまり現地でトンテンカンテン家を建てるやり方で、日本のように工業化が進んでいません。それから、見た通り「すごくモダンでかっこよくて未来的で」ではなくて、「新築なのにクラシックですね」というような感じです。
また、これだけスマートホームのテクノロジーが話題になっている割に、スマートホームのテクノロジーが入っている家はまずありません。少しは付いていますけれども、基本的には「お客さん付けてください」と購入者任せです。なぜかと言うと、建売住宅というのが新築のメインで、彼らのビジネスモデルは土地を仕入れて家を建てて売ることで、とにかく「安く建てて、早く高く売れればいい」というのが、当然ビジネスモデルの根幹です。ですから、このような面倒くさいテクノロジーを入れている場合ではありませんし、「お客さんがテクノロジーを入れてくれないと、うちが入れて何か文句が来たらどうするのですか」と、基本的にそういう感じで100年間つくり方も変わらないし、建てれば売れてしまうので、イノベーションは必要とされてこなかったというのが現実です。
傍島:古いですよね。私もアメリカに来たときに、賃貸ですが、1970年代の築50年というような家で、家の中にアリがたくさん出ました。本当にそんな家でした。
小川:えーっ、大変。
本間:日本でその年代だと、もう壊して新しい家を建てているかもしれないですね。耐用年数30年ぐらいですから、下手をすると40年で日本の家は壊してしまいますから。
傍島:そうですよね。実はその家が1.数ミリオンドル(1億~2億円)で売られているのです。中古の家なのですが…。
本間:そうなのですよ。
傍島:あり得ないですよね。家の中にアリが出てくるのですよ。
小川:(笑)日本ではあり得ないですね。
本間:何が違いとして大きくあるかと言うと、日本では新築を建てるのにどんなに長くても1年ぐらいで建てられます。ですから、みんな気軽に壊して建てたり、新しく土地を買って家を建てるのです。一方、アメリカの場合は建築許可が下りるのにものすごく時間がかかる上に、スライドにも書いてある通り、現場で家をつくります。家は当然現場でつくりますが、日本では現場の外で家のモジュールをつくり、キッチンはシステムキッチン、お風呂はユニットバスをつくって持ってきてポンと置くので、工業化がかなり進んでいます。アメリカは現地でキッチンのキャビネットを組み立てたり、お風呂のタイルを貼ったりするので、すごく時間がかかります。また、家を建てることそのものもツーバイフォーという従来の在来工法で現地で建てるので、効率も悪く、ゆえに人が足りなくなってきて2~3年かかります。これがアメリカの住宅です。
日本は住宅メーカーというのがあって工業化されているので、メーカーがプロダクトをつくって現地で家をつくりますが、アメリカにはメーカーという概念がなく、工務店の方々が在来工法でトンテンカンテン普通に家を建てます。そこにはあまり工業化の要素がないというのがアメリカの住宅なのです。
傍島:いわゆる〇〇ハウスとか〇〇ホームというようなメーカーはないのですか。
新築市場は日本よりアメリカが活況
本間:基本的にはありません。そもそも建売業者さんは土地を仕入れてお金を調達してきて家を建てるのですけれども、建てるのも全部外注ですし、スライドにも書いてある通り、設計も全部外注してしまいます。基本的には、お金を集めて土地を買ってマーケティングして売るところまでが仕事という感じです。ですから、住宅がそもそも規格化されておらず、工業化もされていません。ただし、1つだけあるのは、日本は住宅の着工数がどんどん減っています。人口が減っていってしまっていますから当然ですよね。一方、アメリカはいまだに供給が不足していて、かつ人口が増えています。スライドではグラフが途中で止まってしまっていますが、今、新築市場は日本のほうがアメリカよりも小さくなってしまっています。
小川:抜かれているのですね。
本間:今、全部で年間で約20数兆円、30兆円近いマーケットがあると言われていますから、そういう意味で言うとものすごく大きいです。それでもイノベーションが起きていません。ここがアメリカの住宅市場の面白いところです。
傍島:面白いですね。いろいろな理由があるのでしょうね。もちろん歴史があるのでしょうけれども。
ミッションは「未来のHome Living Experiences」
本間:簡単にはいかないのですよ。日本の住宅系の会社も何回もアメリカを変えようと思ってチャレンジしてきましたが、うまくいきませんでした。でも、またチャレンジするというのを何度も何度も繰り返しているという中で、「そこにイノベーションを起こすにはどうすればいいでしょうか」というところが私たちの会社そのものの問いになります。
そういうことで、それに対してわれわれが今どういうアプローチをしているかと言うと、まず会社のミッション、なぜこの会社があるのですかということに関しては「未来のHome Living Experiences」、要するに住生活の体験といったところですかね、未来の住宅の生活体験を自分たちでデザインしてつくってしまおうというのがわれわれの会社のミッションです。今、アメリカにはそういうものがありませんので、それならつくってしまおうというのがわれわれの会社のミッションです。
傍島:簡単に言いますけれども、そんな…。(笑)
ハードとソフトが融合する住宅:住宅版テスラの発想
本間:そんな感じでございます。では、どうやってやるのですかというところに入っていきます。
われわれは、いろいろ紆余曲折はありましたが、自分たちもホームビルダーになることにしました。スライドの右側ですね。つまり、自分たちが土地を仕入れてきて、家を設計して、外部の業者さんと家を建てて販売するという機能を持つことにしました。もちろん規模は小さいのでマイクロホームビルダーといった感じですけれども、要はこれでハードウエア部分をサポートするわけです。左側が、われわれはITスタートアップですので、スマートホームに必要なソフトウエアやサービスを自社で開発します。ですから、右がハード、左がソフト、この両方を行ってスマートな家をつくりますというのが現在のわれわれの立ち位置です。
傍島:最初は左側(ソフト)のイメージがあったのですが、徐々にいろいろと作戦を変えてきたという感じですか。
本間:簡単に言うと、最初は左側だけやろうとしていました。当然左側のほうが早くて効率が良いです。だって家を建てるのに2~3年かかると言われたら、そこに引っ掛かってしまいますよね。しかし、「ソフトウエアができました。これを売りに行きましょう」と言って先ほどの100年間同じことをしている人たちに売りに行くわけです。そうすると、「いやいや、要らない。クレームがついたらどうするの?」という話になるのです。ソフトウエアだけつくって変えようと思いましたが、それだけやっていても埒が明かないので、「まず自分たちでやって見せなければ駄目なのではないか」ということで、自分たちも家を建てることにしました。
ちなみにこれが、自分たちでは言いませんが、先ほどのメディアもそうですが、外部の方々に住宅版テスラと言われる所以になりました。その辺りの話をしていきたいと思います。
スライドに書いてある通り、要はテスラはハードとソフトの両方をつくっているのです。どういうことかと言うと、テスラは自動車をつくる会社です。ハードウエアですから、工場を持って、電気自動車を設計して、製造して販売します。しかし、実はテスラのバリューはソフトウエアにすごくあるのです。例えば自動運転をしてくれるソフトウエアも自社でつくっています。それから、バッテリーのマネジメントはすごく大事です。細かい話になってしまいますが、テスラは小さい単三電池のようなものを何百、何千、何万個も入っていて、それらを全部管理して、それをうまく組み合わせて動かすソフトウエアを自分たちでつくっています。これがないと車は走らないのです。また、通信して車が新しいアップデートが行われます。そういった話も含めて、実はテスラはソフトウエア会社なのですが、ハードとソフトがあるからテスラという車が存在するわけです。ですから、われわれはこのハードとソフトを垂直統合して全部やるというところでイノベイティブな家をつくろうというのをやっています。iPhoneもそうですよね。AppleはiPhoneのハードウエアを設計して外部に委託してつくらせていますけれども、それだけではなく、iOSやApp Storeをつくります。結局、それがあることによって今のiPhoneができているわけです。
しかし、住宅の場合は家を建てる人と家の中のソフトウエアをつくる人がまったく別で、今はまさに「お客様が自分で買って自分でインストールしてくださいね」という状態になっているのです。ですから、われわれはこれを1つ完成品でつくり上げなければなりません。つまり、スマート化を前提にして住宅を建てるところからつくっていかないと結局後付けで自分でやらなければいけなくなり、いろいろな問題を逆に引き起こしてしまうので、「イノベイティブな本当にスマートな家をつくろうとするならハードウエアからつくらなければ駄目だ」というのがわれわれが行き着いた結論でした。
傍島:なるほど。確かに、Googleもそうですね。最初はAndroidのようなソフトウエアでしたが、結局、自分の端末を出してきました。やはりハードとソフトのセットになってくるのですね。
本間:そうですね。われわれのやり方はAndroidに近いです。Androidは最初にファーストパーティで決めたメーカーさんとガッツリ組んで新しい世代のものをつくりますが、いろいろなメーカーさんにライセンスでOSを広げていきますよね。実はこのあと出てきますけれども、今、われわれもそれに近いアプローチを取ろうとしています。
傍島:面白いです。最初はハードとソフトをセットにして密につながったようなもので、本当に良いものを出さなければいけないというところですよね。
本間:まさにLiving Experiencesです。Experiencesをつくるにはソフトだけではできないのです。ハードがないとできません。
傍島:確かに。
本間:ハードだけでソフトがなかったら、エクスペリエンスは変わらないですよね。というわけで、ここを全部つくろうというのがわれわれのアプローチです。
小川:両方からということですね。
スマートホームに関わる4つの課題
本間:はい。この辺りから、われわれの話というより世の中の話に少し展開をしていきます。「スマートホーム」と皆さん言いますけれども、日本でもアメリカでも結局「スマートホームは素晴らしいよね。手放せないよね」という人は一定程度います。しかし、実はその裏にはかなりの課題があるということも事実です。その辺りを少し話していきます。
スマートホームに関わる課題について、われわれは大きく4つに分けて話をしています。まず1つ目が、ほとんどのスマートホームがDIY(Do It Yourself)、自分でやりなさいという前提でつくられています。昔、傍島さんが自分の家をスマートホーム化するという企画を考えてやっておられました。
傍島:やっていましたね。(笑)
本間:まさにDIYですよね。
傍島:いろいろなものを買って、いろいろなものを家に取り付けて、最新の家にしようと思いましたが、断念しましたね。(笑)
小川:そうなのですね。
本間:そこに落とし穴があります。要は、まずメーカーごとにアプリが違います。アプリが違うということはIDとログインが別です。スマホの中に何十個(私の場合は本当に何十個入っているのですが…)、いろいろなメーカーのアプリが入ってきます。ですから、本当は1個で行いたいのに、鍵はこのアプリ、ライトはこのアプリ、エアコンはこのアプリというように分かれてくるのです。もちろんそれをみんな統一しようと努力はしているものの、基本的にまず自分でインストールしなければいけません。かつ、メーカーごとにアプリがばらばらという辺りからインストールできるかどうかも少し怪しくなってきます。
小川:断念しそうですね、確かに。(笑)
傍島:(笑)
本間:うまくインストールができるという話になったとして、基本的に後付けです。家が建ったあとに付けますから後付けですよね。何がいけないかと言うと、別に悪くもないのですが、要は有線で電源とコードをつないできちんと電源が供給できるようになるというケースもありますが、多くのものがバッテリーで動きますからバッテリーを交換しなければいけません。また、後付けですので当然配線がきれいに見えませんよね。
小川:配線がぐちゃぐちゃしていると嫌ですよね。
本間:そうなのですよ。さらに、例えば皆さんは、家の中にライトが何個あるか、コンセントが何個あるか、分かりますか。日本とアメリカは若干違うかもしれませんが、仮に3ベッドルームで180平米ぐらいの平屋のアメリカの家、これは実際のケースですが、コンセントの数が何個あったと思いますか。
傍島:3ベッドは、日本で言うと3LDKのイメージですよね。
本間:そうですね。最近の家ですから、割と数が増えているというのはありますが…。
傍島:1部屋に2個ずつぐらいですか。
小川:2個のイメージですね。
本間:いや、1部屋に2個では済まないのですよ。最近の家はやはり6~8個付きます。
小川:そんなに!?
本間:アメリカは特にそういう仕様になっています。それだけの数を付けなければいけません。
傍島:それはそうですね。
本間:ですから、数えてみたら50何個ありました。
小川:すごい!
本間:例えば、今、私がいるこの「HOMMA HAUS Mount Tabor」の自社物件は、天井のこのダウンライトだけでも全部で30~40個ぐらいライトが付いています。これが全部スマートデバイスになりました。その設定をお願いしますとなったら、これは何十個、何百個ですよね、どれだけ設定が大変ですかと。
小川:大変過ぎます。
傍島:1個ずつですか。
本間:ペアリングして、アプリで設定して名前を付けて、どこの部屋かグルーピングしてと、全部マニュアルで行います。もうこの時点で普通の人は諦めます。
小川:諦めます。無理です。
本間:では、「うまくいきました。やっとできました」と言っても、アプリで結局コントロールが必要ですよね。アプリを取り出して、スマホを取り出してライトをつける。子どもはアプリを持っていませんから、「お父さん、ライト消して」「自分でしなさい」といったことが起きます。また、「Alexaに頼めばできるよね」と言っても、「Alexa、ライト消して」「Alexa、鍵開けて」「Alexa、エアコン付けて」「Alexa、Alexa、Alexa…」とずっと喋っていて結局マニュアルなのです。手でやっていたことがアプリか声に変わっただけですから、あまり変わらないです。
例えばこれを、ユーザーは別として、先ほどのホームビルダーの建売業者が自分の家に付けて売ったとします。うまく設定もしてあげて、ユーザーよかったねと思いきや、問題が起きるのです。やはり「ペアリングが外れました」「通信がうまくいきません」といった問題がよく起きるのです。しかし、この問題はどこにいくかと言うと、Googleに文句を言えなくもないのですが、そこにいくよりは家を建てた人のところに「動かないのですが…」と普通は言います。
傍島:確かに。(笑)
本間:ですから、そこが面倒くさいです。また、オートメーションで「Alexa、おはよう」と言ったら全部動きますというデモを見たことがあると思いますが、「おはよう」と言いますよね。それは、冬の日照時間が短い朝は暗いからライトはこことここがついてほしいというのがあるのですが、「おはよう」は「おはよう」で、同じようにライトがつくのです。ということで、これらはなかなかスマートホームの体験がよくならないし、導入も大変だし、管理も大変だしということで課題だらけです。
傍島:確かに。僕も「Alexa、”どこどこ”の電気つけて」と言うのが面倒くさくてやめました。(笑)
本間:呪文のようになります。「Alexa、リビングルームのライトを30%の明るさでつけて」と。
小川:結構、長く言わないと駄目なのですね。(笑)
本間:そうなってしまうのです。
傍島:もう壁パチッと押したほうが早いですよね。
本間:それは元のアナログの世界ですよね。ですから、われわれはこれを解決しようとしています。少し話が長くなりましたが、われわれがどのようにしているか、お話します。もちろん100%ではありませんよ。ある程度できましたという話なのですが、まず弊社は、ハードウエアはもちろんあるものをなるべく使います。全部つくるわけにはいきませんので。ですが、われわれはプラットフォームのソフトウエアを自社で開発していて、全てのライトのスイッチやセンサー、ライトやエアコンのコントローラ、スマートロック等を1つのアプリケーションソフトウエアに全部統合してしまいますので、アプリは1つです。ですから、IDとログインも含めて全部1個です。これだけでも驚かれます。
2番目として、それだけではなく、うちはビルトインにしてしまいますので、設計段階から、例えば図面があるところから、どこに線を這わせて壁の後ろに隠すとか、メンテナンスを考えてここは表に出すとか、どこにライトをつけると人間の動線に合うとか、全部考えて体験を箱からつくる、きちんと立体からつくるというのがまず1つあります。それに加えて、われわれは家を建てられる能力があるので、建てる順番に合わせてどこでどんな作業をしなければいけないかということもきちんと分かる状態です。
さらに、弊社はソフトウエアツールを自社で開発して、100個を超えるデバイスでも数十分で設定を流し込めたり、スキャンしてバーコードを貼っておいて、それをバッと設定できるツールもつくっているので、その手間も人件費も全部圧縮できます。
さらに、それでどういう体験が生まれるのですかと、ここが一番大事なのですが、うちの場合はもちろんアプリでもAlexaでもコントロールできるようにしていますが、基本的にそこは使わせたくないので、家の中にセンサーが入っていて、人間の動きに合わせて自動でオンオフをしてくれます。それはよくありますが、それに限らず、例えば夜中トイレに起きますよね。トイレのドアをガチャッと開けるとライトがつきますが、眩しくないようにまず柔らかい弱い光で点いてくれます。かつ、夜ですから、青白い光ではなくてもう少し暖かい暖色系の光でついてくれて眩しくありませんし、トイレから出たら勝手に消えます。それから、リビングルームに朝行くと、青白い光で目が覚めるような感じのライトをつけることもできます。それが嫌なら自分のスマホアプリを取り出して、朝の時間帯はこのように変えてくださいということもあらかじめカスタマイズできるようにしておきますが、基本的には全て自動です。
私はここの家で生活をしているときには、基本的にライトのスイッチは朝も昼も夜も一切触りません。ですから、ときどきホテルや別の所へ行くと、「なぜいちいちトイレに行くときにライトをつけなければいけないのだ、面倒くさい!」となります。そのぐらい本当に何もしないということがまず前提になります。
それくらい最初の導入も楽、設定も楽です。それらをしなくても、生活している人はまったく何も操作しません。アプリを使うときは、ユーザーを増やしたり、玄関のスマートロックのPINコードを変えたり、カスタマイズして夜中の新しいムービーナイトなシーンをつくりたいというのも全部アプリでできるのですが、そういう設定をするだけです。アプリを取り出してライトをつけたり一切させません。
最後、それを家に付けて売ったときのケアはどうするのですかという話があります。弊社の場合はリモートで何百件何千件のユニットに対してリモート監視をしていて、障害が起きそうになったときや起きたときにいち早くエラーを検知してケアをしてあげます。事前に「そろそろライトが消えそう」「電池がなくなりそう」というのを理解して管理会社の人に行ってもらいます。電池はあまりありませんが、「通信が途絶えているから様子を見て」といったこともできます。ですから、管理コストを減らしつつお客様があまり困らないようにしてあげる、そのようなことをしています。
傍島:なるほど。先ほど、夜中にトイレに行ったときに電気の光を少し暖かくて落としてあげるというのは本当にJapanクオリティですよね。おもてなしの気持ちがあると言いますか。加えて管理している側の人もメンテナンスしやすくなっているというのは本当にJapanクオリティで、アメリカでは考えられないという感じがあります。
視聴者からのご質問:共通仕様「Matter」について
小川:きめ細やかさですね。そして、ここでご質問をいただいておりますけれども、本間さん、お答えいただいてもよろしいでしょうか。「”Matter”での仕様共通化である程度のインターオペラビリティが出てくるのではと考えていますが、Matterに対応したものを使うことがベースになるのでしょうか。その上でそれを使いやすくするソフトウエアを提供するのが御社だという認識です。お考えをお聞かせください」ということです。お願いいたします。
本間:そうですね。最近Matterという通信規格が出てきて各社相乗りしました。これに対応していると、各デバイスとの通信が一定程度共通化されますので、先ほど言った1つのソフトウエアでいろいろな機器を管理したり通信したりすることが簡単になります。これはグッドニュースです。われわれももちろんそれには大賛成で乗っかっていきますが、基本的にMatterがあってもなくても1つのアプリケーションでいろいろな機器を管理する、コントロールするというのはみんなが目指していた方向ですので、それはおそらく今後も変わらないです。
ただ一方で、先ほど言ったセンサーの情報をベースに、「こちらのデバイスにこういうことをしなさい」とさせるのは意外と単純に見えて難しいのです。つまり、「センサーが反応してライトがつきます。以上」という感じでまったく100%同じことを何回も繰り返すのでしたら楽ですが、時間帯に応じて、季節に応じて、天気に応じてというようにいろいろな外部の要因が入ってきて、それに合わせて判断させることを、弊社はソフトウエアで、裏側でずっと24時間365日それが動き続けてやっています。その辺のソフトウエアのロジックやアルゴリズムのところは実はMatterにかかわらず必要ですが、これをできているところはほぼありません。それをユーザーが自分で設定しなくてもできるというところがほかにありませんので、ユーザー体験をつくる上ではいろいろなデバイスとつながって便利で楽になったという話はあるものの、オートメーションになってくると、Matterだけでは済まされないというところが現状です。ですから、確かにご認識という意味ではソフトウエアでバリューを付けていくというのは正しいと思います。
傍島:確かにね。今年1月にCESというイベントがラスベガスでありましたが、ハードウエアの製品の人たちはみんな「Matterに対応しました」と言っていましたが、今おっしゃった通り、これは2~3年前もありました。「Alexaに対応しました」「Appleに対応しました」ということがあったのです。そういう仕様だけ決めても広がらないのだなというのはここ数年で感じていることです。先ほど本間さんがおっしゃったように、本当にきめ細やかなところまでユーザー体験を向上させることがやはり大事なのでしょうね。
動画「HOMMA Experience」
本間:そうなのです。ここで2分ほど皆さんのお時間を頂戴して、われわれの体験というのはどういうものですかというのをビデオでご覧いただくのが早いと思いますので、日本語字幕付きのビデオでご覧いただければと思います。
(「HOMMA Experience」紹介ビデオを再生)
本間:これがちょうど1年ほど前に完成した「HOMMA HAUS Mount Tabor」の様子です。
小川:すごいですね。
傍島:欲しいです!(笑)
小川:はい。わくわくします!
傍島:いいですね。
本間:ちなみに、これは賃貸物件です。
小川:えーっ!
傍島:賃貸ですか。
本間:はい。2階建て、中が階段でつながっていて1階と2階があって、1階がリビング、ダイニング、キッチンで、2階にツーベッドルームがあって、今私はそのベッドルームのほうにいます。日本的に広さで言うと107~108平米ぐらいです。今、賃料が約平均3,000ドルぐらいです。
傍島:小川さん、ピンとこないと思いますが、先ほどの1970年代の家、一軒家ですけれども、アリが出る家でも月5,000ドルぐらいです。本当にそんな感じですけれども、この最新の家でそのお値段というのは。
小川:そんなお値段で住めるのですか。
本間:ポートランドはやはり、例えばシリコンバレーに比べるとお値段が安いということもあります。われわれはそれでも実はほかのところよりも賃料はプレミアムを付けていますが、もうほぼほぼ埋まっています。
小川:そうですよね。人気ですよね。
本間:はい。わりとすぐ埋まって、今は不景気ですので、むしろ賃貸のほうに人が流れているということもありますが。
傍島:これは驚きますよね。賃貸でこの設備が整っていたら、多少高くてもこちらに住みたいですよね。
小川:住みたいですよ!
傍島:これはいいですよね。
本間:ありがとうございます。今、われわれの取り組んでいることは、こういうアプリがあって、間取りに対してセンサーを何個付けてと一通り基本のセットができている感じです。ですから、これをこれから外部に展開をしていくということです。
この辺りのスライドは少し省きます。ちなみに、今までに何軒か案件を手掛けました。最初はシリコンバレーの一軒家を手掛けて、もともと築50年の家をリモデルして、オフィス兼ラボとして使っていたものがあり、そして今の、この「HOMMA HAUS Mount Tabor」 ということになります。
今後の展開だけ少しお話させていただきます。今、ご質問が来ているのでそれを先に読んでいただいてからのほうがいいかもしれないですね。
HOMMAの展開計画
小川:ありがとうございます。「足元の供給戸数や今後の開発計画について教えてください」というご質問です。
本間:まさにそれがこのお答えになるかなと思いますが、われわれはスタートアップですので成長戦略を立てて取り組んでいきます。今は4段階考えたうちの3段階目に差し掛かっているかなと思っています。最初は、先ほどお見せしたように、垂直統合で自分たちのデザインした建物に自分たちのテクノロジーを入れて1つのスマートな家をつくるというのが最初の初期的なプロダクトとして行いました。
2番目が、まさに今ビデオでご覧いただいた、ポートランドの「HOMMA HAUS Mount Tabor」をつくりました。「HOMMA HAUS」というのはわれわれのプロダクト名で、住宅です。今回ここが18ユニット(18世帯)のプロジェクトで、実は今後の「HOMMA HAUS」ブランドでの展開は、ポートランドで次の土地も購入済みで、これからそちらでも展開していきます。
とはいえ、何千軒を一気に建てる会社になるとは思えなくて、当然それだけの土地を仕入れて家を建てるためのお金を確保するとなると、建てるのにも時間もお金もすごく掛かります。ですから、今は3番目のところに差し掛かっているのは、より多くの方々にこの体験を広げていきたいということで今考えて進めているのは、地域のアメリカのデベロッパーさんや建売業者さんとパートナーシップを構築していって、その方々にわれわれがつくったテクノロジーを提供していくと。
もう少し細かく言うと、外部の方が手掛ける新築の例えば賃貸マンション20階建てがありますよね。そこにわれわれが設計の段階から入ります。図面をいただいて「ここにセンサ―を付けて、ここにライトを付けて、こうですね」と、そういう最初のデザインのサポートから入って、それをインストールして設定をして、お客様が来たときには「既に設定済みです、すぐ住めます」という状態で提供します。こういうことをわれわれの物件を超えて外部の方々に提供していく、これを今取り組もうとしています。ですから、数で言うと今われわれが自分たちで手掛けられるのは数十世帯がせいぜいですが、ここで言うと桁が1つ2つ変わってくる数の供給が可能になるかなと思います。
最終的にはそれが全部で何百軒、何千軒、何万軒となっていくと4段階目ですね。これをより大きなプラットフォームとして、あとから例えばソフトウエアの追加、更新だけで機能が増えるとか、また、有料サービスでAmazonプライムのように毎月いくら払うとセキュリティサービスが付いてきますとか、お掃除を月に1回してくれますとか、そういうのを付け加えていってプラットフォームとして展開をしていく、そういうところまでを今考えております。
傍島:ステップバイステップで分かりやすいですよね。これはアメリカの人からの引き合いと言いますか、「本間さん、この技術ください」といった話はないのですか。
本間:興味はすごく持っていただいていますね。やはりユーザーの関心のある内容がよく定期的にレポートが出るのですが、「どんな機能を家に求めますか」については、例えば「コロナになって家で働きたいので、リモートワークしやすい環境が欲しいです」「家にいてむさくるしいので、アウトドアのパテオが欲しいです」「バルコニーが欲しいです」といった声が出てきますよね。今挙げた例は全部事実ですが、今や「スマートホームが入っていてほしい」というのは結構上位に来ています。しかし、先ほどの問題がまだ解決していませんので、正直最初から全部インストールできるものはなく、みんな中途半端にこちょこちょと付けてごまかしている状態ではあります。そのため、そこに対する引き合いは当然潜在ニーズのところで実際にすごくあります。
傍島:あるでしょうね。本当に使いたいです。私の家に何とか入れてください。(笑)
本間:ありがとうございます。ぜひ、われわれの賃貸物件が広がっていくパートナーさんの先のところでぜひ。
傍島:そうですね。
本間:いろいろ今後も発表していけると思います。
傍島:住みたいです。
視聴者からのご質問:日本展開について
小川:もう日本でも皆さん「ぜひぜひ」という方が多いと思うのですが、ご質問も来ておりますので、ご紹介させていただきます。「日本国内の住宅メーカーと提携するお考えはありますでしょうか」というご質問です。いかがでしょうか、本間さん。
本間:はい。その次のご質問も一緒に読んでいただいたらいいかなと思います。
小川:はい。続いて、「個人的に非常に住みたいと思う住宅だなと感じました。米国ほどブルーオーシャンではないと思いつつ、高級賃貸としてここまで完成度の高い物件は日本でもない印象です。今後日本での展開は検討されているのでしょうか」というご質問です。お願いいたします。
本間:ありがとうございます。ご興味を持っていただいて本当にうれしいです。考えとしてはあります! ありますが、われわれもそんなに大きなスタートアップではなく、今はまだ20数名のチームで基本的に100%アメリカの市場でやっています。ただ、ITの世界で起きていることは、アメリカでまず起きて、アメリカ以外の国にグローバルに広まっていくというのはまあまあセオリーとしてあると思います。逆に、業界にもよりますが、日本で始まって世界に広がるというのは最近なかなか例がないということがあります。ですから、われわれもその例に倣ってというわけではありませんが、まずアメリカの市場できちんとプロダクトを確立していって、そこから日本を含むグローバルの国々に展開していきたいなと思っています。
もともと、われわれも会社をつくったのはアメリカで、創業の地はアメリカですし、チームも日本人とアメリカ人が混ざっていますが基本的には英語で標準的なコミュニケーションを取っています。基本的に日本は私も自分の母国ですから、もちろん行きたいのは山々で、すごく行きたいのですが、順番の問題かなと思っています。実際、日本のメーカーさんからもいろいろな方々からお引き合いを頂戴しています。とはいえ、日本に行くとなると、いくつかハードルがあるのも事実です。例えばエアコンの方式が違いますし、日本独自の方式は結構出てきます。これを今、対応するのかと言うと、少し「ムムッ」となってしまうのも事実です。
小川:なるほど。
傍島:これに絡めて日本の住宅メーカーさんの技術や家のパーツをアメリカで仕入れてというか、アメリカに輸出しているような感じなのですか。
本間:すでにいくつか輸出しています。やはり市場の背景的に言うと、日本の住宅市場がシュリンクしていかざるを得ない状況の中で「海外進出をしたい」と皆さん思っておられます。一方で、海外に行くと言っても先ほど説明したようにアメリカで家を建てている人たちはものすごくコンサバティブですから、見たことない、使ったことないものは一生使わないという人たちがほとんどです。ですから、日本の各社は皆さん苦労しながら市場開拓されていると思います。われわれはそこも理解している上で、日本に対してかなりの理解がある前提で、日本のいろいろな住宅向けプロダクトや技術・素材、そういったものを自社物件を中心にアメリカに積極的に展開しようとしています。
例えば、ここで使っているエアコンはダイキンさんがアメリカのテキサスのヒューストンでつくっているものをご提供いただいています。それから、建築部材で軒下の喚気部材があるのですが、これを日本の城東テクノさんという会社がつくられていまして、これをアメリカでも導入させていただいています。結構いろいろなものが多岐にわたってあります。これはアメリカの安全基準に適合していなければいけませんし、さまざまな輸入規制のハードルがありますが、それを乗り越えてきたものについては一緒にやらせていただいています。
先ほど、アイリスオーヤマさんのライトの話はビデオでもありましたが、これも同じくです。やはり日本には素晴らしいものがたくさんありますので、これをアメリカに持ってきて展開するというのも1つ取り組みたいと思って進めていることです。
傍島:そういう話は最近多いですよね。日本の良いもの、伝統的なものも含めて世界にもっともっと広めたいということで頑張る起業家もよく出てきていると思います。今日もたくさんの企業さんも参加していただいていると思いますので、日本のパーツというか、例えば素材もあるかもしれませんが、「私はこういうものを持っています」という感じで何か本間さんと連携できる話があるといいですよね。
本間:日本の住宅技術は本当に素晴らしいと思っていますので、それを世界に広めていくことができたら本当にうれしいなと思っています。
小川:日本でも興味がある方は本当にたくさんいると思いますが、本間さんご自身は、せめて何年後ぐらいには日本でも実現したいとお考えでしょうか。
本間:そうですね、2~3年のうちには何か取っ掛かりをつくりたいなと思います。やはり今はアメリカのほうで引き合いが増えてきてしまって、人手が足りない状態が続いている中で日本向けの開発をとなると、やはり日本で大きな案件があるとか、大きなパートナーの方々が手を挙げてくださるとか、そういうラッキーな話があればすごく取り掛かりやすいと思っています。
傍島:確かに。お金が掛かりますよね。本間さんのプロジェクトをやるためにはやはり現実的にお金をたくさん集めて進めていくということもあります。部品を持っている方はもちろん良いのですが、ある意味お金で本間さんのところに出資をさせてもらう等、何か協力することがもしかしたらあるかもしれないですね。
本間:いいパスを投げていただいてありがとうございます。ただ、あまりそれを言ってはいけない決まりもありますので…。ちなみに、今、スライドを1枚送り忘れていました。ここで見ていただきますと、過去に取り組んだプロジェクトは、先ほどアイリスオーヤマさん、城東テクノさん、ダイキンさんの名前を挙げさせていただきましたが、ほかにもいろいろな会社さんとコラボレーションさせていただいています。まさに右下に書いてあるように、「アメリカのマーケットに参入するためにわれわれと一緒にやりましょう」というところもあります。われわれは一番付き合いやすいビルダーだと思います。一方、左下に書いてあるように、オープンイノベーションでわれわれが持っているスマートフォンの技術、ソフトウエアを中心にいろいろな連携を図ることは、日米かかわらず、もっと言うとグローバルにできる話だと思いますので、こういったコラボレーションさせていただいているという流れです。
傍島:いろいろなコラボレーションができそうですね。ここにあるロゴの会社さんたちは部品だけ持っている会社さんたちではないですものね、いろいろな方たちが仲間にいらっしゃいますよね。
本間:そうですね。もちろんハードルはそれなりに高いです。細かい話ですが、日本とアメリカではインチとセンチが違うなど、落とし穴がたくさんあります。
傍島:確かに。
本間:ですが、やはり成長している市場で家を必要としている人たちがいるというのは間違いない事実ですので、ここに可能性を見出すのは本当に良いことだと思います。
小川:これからもっともっと進化していきそうですよね。
本間:本当にポテンシャルがあると思います。
傍島:コラボレーションでいろいろなロゴが並んでいるのは見ていてすごくうれしいですね。いろいろな人たちが協力して1つの家をつくっていくというのはすごくいいですね。
本間:これをなるべくであれば一発で終わらせずに続けたいと思っています。とはいえ、やはりいろいろな状況が重なっていくと1回で終わることもありますが、それにもめげずにいろいろチャレンジしていきたいなと思っています。
それから、先ほど資金調達の話をしてくださったのですが、ご参考までにお話しますと、弊社の特徴はアメリカ市場でありながら、実は親会社は日本法人です。もともとはアメリカ法人だったものを途中で日本法人に親会社が変えたという、少し変わったことを行いました。今はいろいろな日本の企業さん、ベンチャーキャピタルさん、日本の投資家の方々、個人の方々にこうしてご支援いただいています。こういう仲間がいる中でわれわれも頑張らせていただいているというところで、こういう仲間がもっともっと増えていけばいいなと思っております。
傍島:いろいろな方がいますよね。業界もばらばらというか、いろいろな方たちが本当にご協力されて、これは本間さんの人望ですよね。
本間:いえいえ。やはり住宅というのはそれだけいろいろな可能性を秘めているということだと思います。それこそエンターテイメントから健康、ヘルスケア、通信に至るまで全部に家は関わってきますから、ある意味自動車と似ているところがあります。
傍島:確かに。接点として家の中にいる時間は長いですからね、寝ている時間も含めて。
小川:そうですよね。
本間:そうです。4割は家の中と言われていますから。
小川:なるほど。きっとコロナ禍でもっともっと増えた方もいらっしゃいますよね。
本間:そうなのです。おっしゃる通りで、今や職場も学校もレストランも家に来てしまう時代ですから。
小川:どんどん家を充実させたいとお思いの方は本当に多いと思います。
本間:そうなのです。
傍島:これは本当にいろいろな方が協力できるチャンスがあるなと、今回お聞きしてあらためて思いました。これだけのロゴが並ぶと「自分のところは関係ない」という感じがしないですね。
本間:われわれとしては日本企業が、私が日本人であって、日本人としてアメリカで仕事をしているというのはある意味強みだと思っていまして、その強みの1つがやはり日本の皆さん、日本の企業の方々とのつながりだと思っています。ですから、そこをうまく活用して、お互いのベネフィットにつながるようなことをどんどんしていきたいなと思っています。
小川:ありがとうございます。本間さん、今日はスライドをほかにもご用意いただいておりますか。
本間:いいえ。これでおしまいです。
小川:これでおしまいということで。ありがとうございます。傍島さん、ここまでお聞きになっていかがでしたか。
傍島:いやもう素直に、今すぐ欲しいです。(笑)
小川:(笑)
傍島:今住んでいるエリアでも早く物件が見たいというのはあります。でも、ご質問にもありましたけれども、日本にもどんどん進出していけるクオリティで、われわれ日本人でも欲しいなと本当に思いますので、みんなで応援して、アメリカでグローバルで成功されて、日本に凱旋帰国といった感じで早く出てきてほしいなと思います。
本間:ありがとうございます。(笑)今、われわれもいろいろな新しいテクノロジーを試していまして…。
傍島:何でしょう。
小川:何か動きがありますね。
本間:これはまだ安定していないのですが、やはり省エネルギーやプライバシー等いろいろなことを考えると、このシェードを、今はモーターで動かしていますが、これを自動化できないかなということを考えています。誰でも考えることですが、今はリモコンで行っていますが、これをうまくソフトウエアで制御して標準装備していけば、例えば人がいないときに外から日差しが強いときにこれを閉めれば家の中の暖房効率・冷房効率が上がりますし、これを気にしないで行えるようになればいちいち出かけるときにカーテンを閉めたり、ライト消したり、鍵をかけたりするのを全部なくせます。人の生活というのはいろいろな面倒くさいことをはらんでいますので、これをうまくわれわれが解決していければ、まさに最初に冒頭で申し上げたわれわれのミッションである「未来のHome Living Experiences」をつくっていけるのではないかと思っています。
小川:一人暮らしや家族によって必要なものが変わってくると思いますが、今、本間さんがお住まいのところはご家族も住んでいらっしゃるし、一人暮らしの方もいらっしゃるという感じでしょうか。
本間:そうですね。私自身はここに今一人でいますが、いろいろ見ていくと、ツーベッドルームですので、例えばお子様がいらっしゃる家族もいますし、お1人でお住まいで1部屋を自分のオフィスにして、もう1部屋をベッドルームにされている方もいます。また、お子様が巣立っていかれた、わりとご高齢のシニアのご夫婦の方がお2人でお住まいになったり、私は最初、テック企業に勤める若いカップルでこれからお子さんがというイメージを勝手に思っていました。そういう方もいらっしゃるのですが、実はマジョリティではなくて、やはり家というのはいろいろな人をお迎えできるのだなと思いました。
小川:確かに。本当にいろいろなタイプの方がすでにお住まいということですね。
本間:そうなのです。
小川:ますます、いろいろまた展開されていきそうですよね。
傍島:面白いですよね。人種も違いますし、アメリカ人と日本人も違いますし、ヨーロッパの人やアジアの人もいろいろ違いますから、もう本当に無限に可能性があって止まらないですね。
本間:そうなのです。あらゆる生活習慣、バックグラウンドの人が集まるアメリカだからこそ、ここから始めるとグローバルに展開しやすいのではないかと思います。
傍島:確かに。分かりやすいです。
小川:これからますます楽しみだと思います。それでは最後に本間さん、本日のまとめをお願いいたします。
まとめ
本間:はい。家はこれまで皆さんがあまり目を向けてこなかった領域ですが、とても大事な領域です。ここでイノベーションを起こすことで人の生活をどんどん未来にしていきたいなと思っております。引き続き、応援よろしくお願いいたします!
小川:はい。これからのご活躍も楽しみにしております。ありがとうございます。それでは、そろそろお時間となりましたので、本日の01 Expert Pitchは終了とさせていただきます。本間さん、傍島さん、本日はどうもありがとうございました。
本間:ありがとうございました。
傍島:ありがとうございました。
小川:そして、最後までご視聴いただいた皆様もありがとうございました。また次回もぜひご参加ください。それでは、さようなら。
以上