これまでのWeb3とこれから
▼ こんな方にオススメ
- Web3の基本を理解したい方
- Web3の今後について知りたい方
- 世界における最新のスタートアップの取組み状況と未来を知りたい方
内山 幸樹 氏
株式会社ホットリンク 代表取締役グループCEO
合同会社Nonagon Capital Founder&GP
東京大学大学院博士課程在学中に、日本最初期の検索エンジンの開発&検索エンジンベンチャーの創業に携わる。2000年 株式会社ホットリンクを創業、2013年 東証マザーズ上場。現在は世界中のSNSデータアクセス権販売と、日本市場向けにSNSデータを活用したマーケティング支援を展開。2018年よりブロックチェーンを活用したLGBTの課題解決方法として「Famieeプロジェクト」を着想。2019年8月に一般社団法人 Famieeを設立、代表理事就任。2019年4月に新経済連盟が発足した「多様な性的指向・性自認の活躍促進プロジェクト」チームリーダー就任。2022年8月には、Web3の普及を目的とした経営者らの有志団体「Web3․JP」の代表世話人として、自由民主党が発表した「NFTホワイトペーパー」に追加的提言を実施。さらなる事業機会の模索と最先端のIT技術に触れるため、2020年5月よりアメリカを拠点に活動中。
- 01 Expert Pitchとは?
- 内山 幸樹 氏プロフィール
- ブロックチェーン技術への取り組み
- そもそもWeb3って?
- Web3の進化のプロセスから理解する
- ビットコインを再発明してみよう
- これだけあれば、これからのWeb3の未来は予測できる
- これからのDAO
- 今後のDAOの進化予測
- DAOの好事例:WorkDAO
- Web3のこれから:SDGs編:Famieeによる社会変革
- 会社員が今すぐできるWeb3/SDGs活動
- まとめ
小川:皆様、こんにちは。お待たせいたしました。本日はご参加いただき誠にありがとうございます。それでは12時になりましたので、01 Expert Pitch第19回を始めてまいります。「シリコンバレー発!世界のエキスパートが最新情報を日本語で解説!」ということで、本日2023年第1弾は、視聴者の皆様からのご要望が最も多かったWeb3について、「これまでのWeb3とこれから」と題してお送りしてまいります。
さて、今回は株式会社ホットリンク 代表取締役グループCEO 内山 幸樹さんをエキスパートとしてお迎えしております。内山さん、本日はどうぞよろしくお願いいたします。
内山:はい、よろしくお願いします。
小川:内山さんは、本日シリコンバレーにいらっしゃるということでよろしいでしょうか。
内山:はい、ですので、今はもう夜7時でございます。
小川:ありがとうございます。景色がすごくいいと言いますか。
内山:そうですね、最新鋭のスタジオです。
小川:ご自宅ではない?
内山:はい、自宅がこんなに素敵な景色だといいのですが。
小川:いえいえ、ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
内山:はい、よろしくお願いします。
小川:そして、本イベントの主催者でもあります、Tomorrow Access, Founder & CEOの傍島さん、本日もどうぞよろしくお願いいたします。
傍島:よろしくお願いします。
小川:そして、私は本日のナビゲーターを務めてまいります、フリーアナウンサーの小川りかこと申します。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは早速なのですが、傍島さん、この01Expart Pitchの狙いなどを少しお話いただけますでしょうか。
01 Expert Pitchとは?
傍島:はい、あらためましてTomorrow Accessの傍島と申します。よろしくお願いいたします。Tomorrow Accessという会社はシリコンバレーを拠点にしたコンサルティング会社になります。この01Expart Pitchはいろいろな情報を日本に発信していくウェビナーになりますが、狙いとしては3つあります。
まず1つ目は、日本とアメリカの情報格差の解消ということです。おそらく内山さんも多くの日本の企業の方から「シリコンバレーの状況はどうなっているんだ?」「グローバルの状況はどうなっているんだ?」というお問い合わせをたくさんいただくと思います。そういったところで、アメリカで注目されているニュースやグローバルで行われている事象、そういったものを迅速に日本にお届けして、日米間の情報格差を埋めたいというのが1つ目です。
2つ目は、正しい情報をお届けしたいということです。最近はもういろいろな日本語のネット記事もあり、情報も届きやすくなっているとは思いますが、われわれがアメリカのシリコンバレーで感じている温度感と、メディアで伝わっている温度感が若干違うなと感じることがあります。そういったときに、今回ご登壇いただく内山さんのようにエキスパートの方にきちんと解説をしていただいて、正しい情報を届けたいというのが2つ目になります。
3つ目は日本語で解説ということです。英語の情報はたくさんありますので、読める方はいいのですが、なかなか英語の情報を取ってくるのは大変ですので、そこをきちんと日本語で解説したいという、この3つの思いでウェビナーを運営しております。
先ほどお話にありましたように、「Web3を取り扱ってほしい」という声を本当にたくさんいただきますので、今日は2回目のWeb3ということです。エキスパートの内山さんをお迎えしてお話を聞けるということで、私も非常に楽しみにしてまいりました。どうぞよろしくお願いいたします。
小川:傍島さん、ありがとうございます。本日のウェビナーでは、皆様からのご質問を随時受け付けて進行を進めてまいります。皆様、ぜひご質問をお願いいたします。内山さんにご質問のある場合は、Zoom画面の下にございますQ&Aボタンからご質問をお寄せください。随時、私のほうで拾ってまいります。皆様、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは内山さん、まずは簡単に自己紹介からお願いしてもよろしいでしょうか。
内山:はい、スライドを使いながらでも大丈夫でしょうか。
小川:もちろんです。お願いします。
内山 幸樹 氏プロフィール
内山:はい。皆さん、初めまして。ホットリンク代表の内山と申します。よろしくお願いします。
私は、ホットリンクというソーシャルメディアマーケティング支援の会社の代表をしております。それ以外に世界のWeb3のスタートアップに投資をするNonagon Capitalという投資組織のFounderであり、投資責任者でもあります。また、今日、事例の中で1つお出しさせていただきますが、Famieeという非営利の一般社団法人の代表理事もさせていただいております。
ブロックチェーンやWeb3との関わりで簡単な紹介をさせていただきますと、実は私は2015年、今をときめくFTXの日本法人となりました元Lipuid社というシンガポールで立ち上がった会社ですが、そこの仮想通貨の取引所にエンジェル投資を個人的にしたのが仮想通貨との最初の出会いでした。そういったところに投資をしていたということもありまして、いろいろな情報が入ってきて、世の中の流れを割と早いときからトラックできていたなという幸運に恵まれました。
そのあと2019年に会社としてもきちんとブロックチェーンに対してある程度のリソースを張っておかなければいけないということで、東京大学にブロックチェーンイノベーション寄付講座を、いくつかの会社さんと一緒にお金を出し合って、いろいろな学部・学科・研究室をまたがったブロックチェーンの研究講座をつくりました。
それがきっかけで世界最初のWeb3のカンファレンス「Web3 Summit Berlin」や「Consensus NY」に参加するきっかけになりまして、そのときに世界と日本のブロックチェーン業界の差や違いに驚愕しました。それがきっかけで、「Web3 Summit Berlin」に参加していたStake Technologies、今、日本初のパブリックブロックチェーンで相当有名になっております渡辺創太君らと、そのBerlinに行ったメンバーと一緒にWeb3勉強会を立ち上げまして、それから約3年あまり、2週間に1回ずっとWeb3の勉強会を今でも継続しております。
そういった縁もありまして、Stake Technologiesにエンジェル投資したり、あとはWeb3は実際に自分でやってみなければ分からないということで、非営利の一般社団法人の団体を立ち上げてプロジェクトを進めたり、今はシリコンバレーに居を移しまして、世界中からやはりWeb3の良いスタートアップが集まってきますので、そういった人たちのコミュニティに深く入り込むということでブロックチェーンの世界に足を突っ込んでおります。
傍島:早いですよね。2015年からですと8年前ということですものね。
内山:そうですね。これはもう本当に縁ですよね。
傍島:さすがです。2015年に私はアメリカに来たのですが、全然気付いておりませんでした。(笑)
小川:そうなのですね。ありがとうございます。でも、本当にメタバースやブロックチェーン、トークンなど、いろいろ言葉は聞くのですが、なんだか難しい世界のような気がしてなかなかまだ追い付いておりませんが、ぜひ内山さん、本日は詳しく教えてください。
内山:はい、大丈夫です。今日のタイトルは、「目からウロコのWeb3」という副題がついておりますので、楽しみにしてください。
小川:ありがとうございます。
ブロックチェーン技術への取り組み
内山:それでは、少しこの辺は飛ばしましょうか…。自己紹介のところで少し触れましたけれども、世界と日本のブロックチェーン業界は全然違うということで、もう世界の動きをトラックしなければいけないと2019年のときに思いまして、STRUCK CAPITALはロサンゼルスにある割と有望なベンチャーキャピタルでしたが、ここはディカプリオもロサンゼルス出身でここにお金を入れていたりするのですが、ここにお金を入れたことで、本当に世界のいろいろな良いスタートアップの情報を2019年から得ることができました。
左上の1つは「1inch」という、分散金融の世界ではアグリゲーターという、ここに1つ登録すればいろいろなサービスを全部アグリゲートして使ってくれるというようなサービスです。今、企業価値が数ビリオンドル(数千億円)の会社になっています。こういった会社にシードという非常にベンチャーとして初期の頃にお金を入れられていたので、分散金融の世界等の動きを割と早くから知ることができていました。
最近では、私と一緒に投資事業をしている若いメンバー、岡本というのがいますが、2人で世界中のWeb3のカンファレンスに行きまして、2人合わせて昨年1年間で26件のカンファレンスに参加しました。
小川:すごい!
傍島:すごい!(笑)
内山:当社調べとなっておりますが、日本人で最多ではないかと思っています。
傍島:最多でしょうね。月2件ですものね。
内山:そうですね。
小川:すごい、世界中に。
傍島:すごい!
内山:はい。やはりブロックチェーンの世界もオンラインで世界中とやり取りしているとはいえ、やはりリアルで何度も会うことでの情報のネットワークの構築というのはすごく大きいですので、これでいろいろな情報が入ってくるようになっているというのはあります。
今、Nonagon Capitalは、実は他社さんからのお金を集めずに、とにかく今は投資することにフォーカスしたいということで、自分たちの自己資金での投資を実行しております。
去年の半ばぐらいからスタートしましたが、ゲーム系やNFT、分散金融など、結構いろいろなところに入れています。Shima Capitalというのは昨年の上期でもゲームやNFT、そういった分野に世界で2番目に積極的に投資していてランキングに入るようなキャピタルさんです。また、PanteraさんというのもWeb3で有名なファンドです。こういったところといつも共同投資できているぐらいネットワークもつくれているという段階です。
最近、私はシリコンバレーにおりますけれども、Web3勉強会のメンバーと一緒に政府のWeb3政策の立案にも積極的に関与しておりまして、日本のWeb3立国に向けて私も少なからず貢献したいと思っております。
では、もういきなり本題に入ってよろしいでしょうか。
小川:はい、お願いいたします。
そもそもWeb3って?
内山:今日は「これまでのWeb3とこれから」というタイトルですが、これからを考えたときに、もうWeb3は次から次へとたくさんの言葉が出てきます。そして、NFT然り、DAO然り、いろいろな言葉でみんな踊らされてしまいがちです。
傍島:踊っています。(笑)展開が早過ぎますよね。
内山:はい。でも、実は本質を押さえると、そんなに踊らされずに済みますし、未来は予測しやすいということで、今日はこれまでのWeb3をしっかり本質的な面から振り返ってみたいと思います。
そもそもWeb3って、どんなキーワードを思い浮かべられますか。
傍島:小川さん、何か、1つでも知っているものはありますか。
小川:そうですね。メタバースとか、Bitcoinとか。
内山:ありますね。
小川:そういう感じですか。
内山:入っていますね。
小川:よかったです。(笑)
傍島:いいですね。
小川:でも、分からない言葉が多いですね。
傍島:いや、当たり前ですが、英語、1つ日本語が出てきましたが。(笑)
内山:はい。少し日本語も入れてみましたが、やはり3文字のアルファベットも多いです。
小川:うーん。何の略だろう?という。
内山:はい、用語についていくだけでも大変ですよね。
小川:そうですね。
Web3の進化のプロセスから理解する
内山:そして、これだけいろいろな言葉がたくさん散らばっている中で、「Web3の定義は何ですか」というふうに、まずやはり定義から皆さんスタートしたくなりますよね。私もそうなのです。
小川:そうですね。まずはスッキリ分かりやすくと言いますか。
内山:はい。そうすると、いろいろな人がいろいろな言い方をします。分散型台帳だとか、中央集権の仕組みだとか、分散型システムだとか、トークンを使ったサービスだとか、Trustlessだとか、いろいろおっしゃいますが、実はWeb3というのはある時点で誰かが「これからWeb3というものをつくりましょう」と言ってWeb3を設計し始めたわけではないのです。
実は、2010年ぐらいからサトシ・ナカモトさんという方がBitcoinをスタートされているのですが、このBitcoinの発明がきっかけで、「あれ? だったらこんなことができるのではないか」「こんなこともできるのではないか」というかたちで、ブロックチェーン技術をベースとしてどんどんいろいろなイノベーションが起きてきていまして、それらを総称して今Web3と呼んでいます。
そして、実はこのWeb3も今もまだまだ進化し続けておりまして、去年のDAOと今年のDAOがまた言っていることが違ってきているというようなことがあったりします。ですから、定義をしても仕方がないです。
傍島:(笑)
内山:これからのWeb3を予測するには、この成り立ちから「何が起きて、今次のこれになっているのだ」という本質を理解することで、その先が読みやすくなるだろうというのが今日のセミナーの骨子でございます。
傍島:いいですね。言葉が本当にややこし過ぎて、ここにあるように、ある人によっては「分散型台帳だ」とか、「トークンがどうだ」とか、わけが分からないですものね。
内山:そうなのです。
傍島:でも、明確な定義がないのですね。仕様でもないし、なんとなくこういうほわっとしたというか、全体的にWeb3というのがあるということなのですね。
内山:そういうことなのです。歴史を追いながら整理をしていって、それぞれの段階でどんな特徴が生まれてきたのかというのを少しずつ解説していきたいと思います。
まず、2010年にBitcoinのサービスがスタートしています。このBitcoinができたことがきっかけで、Bitcoinの取引所ができました。これはCEXと呼んでいますが、Central Exchangeという、中央に集まった取引所です。東京証券取引所のようなところです。
次に、Bitcoinというものができるのだったら、もっとこういうこともできるのではないの?と言って、Ethereumというものができました。Bitcoinは、Bitcoinという仮想通貨しかこの上で動かせなかったのですが、Ethereumの上ではEthereumのコインが動きますし、実はそれ以外のいろいろな仮想通貨やトークンをEthereumの上でつくって動かすことができるようになりました。同時にEthereumの上ではこの通貨やトークンを使っていろいろな金融サービスがスタートしています。このときもCentralized Financeという中央のところで集まってお金を貸したり借りたりというようなサービスや保険がスタートしています。
そのあとCryptoKittiesと言われるようなゲームが始まったりして、この頃から実を言うと、DAOはもう2016年ぐらいにヴィタリックさんがこういうものができるのではないかというふうに書かれていました。そのあとNFTやNFT Marketplace、メタバースへ行き、ゲームとNFTを足してGameFi等、さまざまなアプリケーションがEthereumの上で動くようになりました。
これらのアプリケーションはいわゆる仮想通貨やトークンとセットで動くのですが、このトークンを利用して資金調達をしようよと、いわゆるスタートアップの場合、よく株式を発行して資金調達しますが、株の代わりにトークンを使って、トークンをあげるから代わりにお金をください、あとあと株よりも早くトークンのほうが上場できるからねということで、仮想通貨のトークンを使って資金調達するという、ICO(Initial Coin Offering)というものが流行りました。
このときには、スタートアップとしては、コインを一般ユーザーさんに「これはあとあと儲かるよ」と言ってお金を集めていたので、一般ユーザーさんはベンチャー投資のことも分かっていませんし、ブロックチェーンも分かっていませんでしたので、いろいろな詐欺的な資金調達がたくさん流行りました。
こうしてEthereumの上でいろいろなアプリケーションやトークンにおいてお金が集まり出したら、今度はEthereumの上でいろいろなものが動くには、Ethereumのパフォーマンスが追い付かなくなり、スピードが遅くなってきたり、手数料が高くなってきたりしました。すると、Ethereumよりももっとスピードが速くて手数料が安いブロックチェーンができないのかということで、いろいろなブロックチェーンが2020年ぐらいから立ち上がりました。
この途中に、BitcoinやEthereumはいわゆる分散システムと呼ばれますが、中央がなくて分散しています。にもかかわらず、そのBitcoinやトークンを扱う取引所はなぜ中央集権なのか、おかしいではないかと、これを分散してつくるべきだと言ってDEXと呼ばれるDecentralized Exchange、分散型取引所というものができてきます。さらに、DEXもこのDeFiの一つなのですが、保険やローンの仕組みも分散型にしようよというふうに分散金融というものが取引所以外にもたくさん出てきます。
そして、資金調達の方法も進化してきました。これまでは企業さんが自分たちで近くのユーザーさんに「トークンをあげるからお金をください」と言っていましたが、このDecentralized Exchangeという取引所ができたので、「取引所さん、僕たちは資金調達したくて1万トークンあげるから、これをいろんなあなたのお客さんに売ってお金を集めてきてよ」と言って、DEXさんにお願いしてお金を集めるという、IDOという仕組みが流行ってきました。
ところが、このDEXも分散型の仕組みで、システムが勝手に行う仕組みなので、あまりきちんとお客様対応をしないのです。そのため、やはり消費者を守らなければいけないということで、いわゆる中央集権型の取引所さん、例えば日本で言うとCoincheckさんやbitFlyerさんに、「今度、トークンを使って資金調達をしたいです。いくらトークンをあげるから、これをあなたのお客さんに売って資金調達してくれませんか」という資金調達を取引所にお願いするという、IEXというものが今最新の資金調達の方法になってきています。こんな感じでいろいろな言葉が何となく生まれています。
傍島:すごい。10年近く歴史があるのですね。この右上にあるSolanaは日本でもニュースになったと思いますが、STEPNという歩くことによって稼げるアプリが去年だか一昨年ぐらいに話題になりました。おそらくこれぐらいしか知らないという方が多いのではないでしょうか。このような歴史があるというのはすごく分かりやすいですね。
小川:確かに。皆様ここまでお聞きになっていかがでしょうか。ご質問などぜひお寄せください。少し難しいなという方もいらっしゃるかもしれませんが、ぜひご質問をお寄せください。
ビットコインを再発明してみよう
内山:それでは続けます。ここまでは単に歴史をなめただけで、何もまだ本質の部分にいっていません。これからです。さて、Web3の進化をたどるためにBitcoinを皆さんで今日は再発明してみたいと思います。
小川:えっ。そんなことができるのですか。
内山:はい。今、Bitcoinというものが世の中になかったとします。「これからつくってください」と言われたらどうやってつくりますかという話です。
まず課題としては、紙のお金はコストが掛かる、保存するにも場所が要るし、渡すにも持っていかなければいけないし、それをやり取りするのにもっと速くもっと安く送金したいという課題があります。また、紙幣というのは基本的に中央銀行、日本で言うと日銀が発行しますので、その人たちが勝手にお金を刷ったらお金の価値が減ってしまうではないか、信用できないという課題をサトシ・ナカモトという人が持っていました。
では、この課題を解決するためにどうするかと。まず、紙はコストが掛かるのだったら、デジタルマネーをつくってしまおうかとまず思いますよね、普通に。では、デジタルマネーをつくろうとしたときに、いや、デジタルはコピーできるよねと。例えば音楽をダウンロードしてきたら、それをコピーして誰かに渡したら、誰かも聞けたりしますよね。だから、100円コインをダウンロードしてきて、僕が傍島さんにメールで添付して送りましたと。傍島さんに100コインいきますけれども、僕の手元にも100コイン残っていますよね。だから、無限にコピーできるのがデジタル情報なのに、どうやってデジタルでお金をつくるのだろうと悩むわけですよね。
デジタルのお金をコピーできないようにするにはどうすればいいか。いわゆるコピープロテクションをつくったらどうかとか、いろいろな著作権管理の方法もありますが、なかなかうまくいかないと。そこでサトシ・ナカモトさんは考えました。お金自体をデジタルでつくるのはやめよう。お金はデジタルではつくりません。その代わり、「お金を誰がどれだけ持っているか」という記録簿だけをつくろうという発想の転換をしました。
小川:すごいですね。
内山:いわゆる台帳です。つまり、銀行通帳のようなものですよね。例えばAさんが100円持っていました。AさんからBさんに30円送りました。BさんからCさんに10円送りましたという、こういう台帳だけをノートに書いていったとします。そうすると、Aさんは30円送ってしまったので残りは70円ですよね。Bさんは30円もらって10円送りましたから20円ですよね。こんなふうに所持金の台帳ができますよね。この台帳だけあれば、お金をデジタル化しなくていいのではないかというのがサトシ・ナカモトさんの最初の発想です。
傍島:わけが分からないのですけれども。(笑)
内山:ここでわけが分からなくなりました?
小川:はい。
内山:なるほど。
傍島:台帳だけあればいい、お金のやり取りが分かればいいということですが、お金というモノ、デジタルでも、それは要らないよということなのですよね。
内山:そういうことなのです。
傍島:分かったような気がしましたが…。お願いします。
内山:はい。まあまあ、これでよしとしますと。台帳があれば、まあいいだろうと。お金を発明したと、ノートをつくったとなりましたと。
ではもう1つ。中央銀行は信用できないとします。中央の権威や信頼に依存しない仕組みをつくろう。日本の場合、銀行にお金を預けておいても銀行さんが悪さをするとは思いませんよね。中央の権威を意外と日本人は信頼するのです。ただ、サトシ・ナカモトさんは信頼しなかった。
では、そのためにどうするかと言うと、1つのアイデアとして、分散型で誰かが真ん中でやるのではなくて、みんなで分散して、かつ誰か1人にすごく依存することのないかたちのシステムにしたらどうかと考えました。でも、みんなでやろうとしたら、例えば100人で何か一緒にシステムをつくろうとしたら、途中で騙す人がいたり、さぼる人がいるかもしれないと。悪さする人がいても大丈夫なようにするためにはどうすればいいだろう。あとは、多くの人に参加してもわらないと大きなシステムはできないのだけれども、100人1000人10000人の人に参加してもらうにはどうすればいいかと、サトシ・ナカモトさんは考えました。
そこで悪さをする人がいても大丈夫にするには、例えば台帳を勝手に書き換えて自分のところにたくさんのお金が振り込まれたように見せるような人がいたり、そういう書き換えたらすぐに分かるように、ブロックをこんなものと、次のブロックはこんなものと、次のブロックはこんなものという感じで、凹凸があってジグソーパズルのようにくっ付くようにデータをつくっていきました。そうすると、途中で何かを外して入れ換えたとしたら、隣のパズルと合わないですよね。そんな感じで途中で書き換えられないような仕組みをつくりました。
また、みんなで同じ台帳を持ったときに、私の台帳をちょっと書き換えておこうと言っても、100人中55人以上が持っている台帳が一番正解で、あなたと同じ台帳は数人しか持っていないのだからそれは偽物ですよね。みんなが持っている台帳に書き換えてくださいというような感じで、大多数の人が持っている台帳を正解にするようにしました。
さらに、台帳に書き込むときに、私から誰々さんにお金を送りますというときに、通帳とハンコを持っている人しか送金できないようにしようと。でも、私のハンコは、このハンコを私が押したので送ってくださいと言っても、このハンコが本物かどうか分からない、誰でもこのハンコは内山さんのハンコだよと確認できるようにすればいいでしょうという暗号の方式を持ってきました。そういう感じで、この中央の信用ができない、悪さする人がいても大丈夫にするにはということを実現しました。
さらにみんなに参加してもらうにはどうすればいいかと言うと、まず、こんなシステムができたら、世の中世界通貨ができてすごくないですかというビジョンを論文としてサトシ・ナカモトさんは示しました。そして、協力してくれた人にBitcoinをあげますよと。そうすると、あなたもこのビジョンに参加した仲間になりますよね。そして、これが実現して、このBitcoinの価値が上がったらあなたも儲かりますよという、トークンを与えることで自分事化してもらって、経済インセンティブでモチベーションを上げさせようとしました。
普通、経済インセンティブを与えるときにはお金を与えなければいけないのですが、自分でつくったBitcoinの紙っぺらを渡すのです。つまり、価値がないのだけれども、あとあとうまくいったら価値があるよという約束手形で人を騙しているようなものですよ、最初は。
小川:(笑)
内山:信じる人たちだけが成功すればあとで儲かります。
小川:そうですね。
内山:約束手形のようなもので、とにかく人に参加してもらいます。
あとは、フェアネスの再設定です。投資の場合はベンチャーキャピタルさんがお金を出したり、起業家が会社を立ち上げるときに資本金を出したりすることで、株式というのをこれまで持っていました。お金を出した人が偉い。社員の人たちはストックオプションを普通はもらいますが、少ししかもらえません。基本的にはお金を出した人が偉いという世界だったのに、何がフェア、公平なのかということをサトシ・ナカモトさんは再設定しました。お金を出した人だけが貢献ではないのだよと。協力してくれた皆さんも貢献なのですよと言って皆さんにトークンを付与するようにして、サトシ・ナカモトさんは自分は全然取りませんでした。誰からも資金調達せずに、紙っぺらのBitcoinというのを渡すだけで、多くの人が協力してくれたというかたちでみんなに参加してもらいました。
これをもう少し箇条書きにすると、Bitcoinの実現によってもたらされたものです。まず実現したのはBitcoinという仮想通貨ができて、低コストで高スピードで世界中に送金できるようになりました。中央の権威の人はいなくなるような仕組みができました。そして、本来デジタルの情報はコピーして無限にコピーできるのに、お金自体を情報にせずに、誰がいくら持っていますという台帳をつくることで情報の所有者を限定できるようにしました。そして、多くの人を巻き込む仕掛けをつくりました。これがBitcoinがおこなったことです。
これを見たヴィタリックさんという人は、いや、こんなことができるのだったら、これに上乗せしてもっとこんなこともできるのではないの?ということで、Bitcoinと同じようにEthereumという仮想通貨を自分はつくるけれども、ほかの人も簡単に通貨をつくれるようにしてあげましょうという仕組みをEthereumにつくりました。さらにこのEthereumの上でプログラムを動かそうとしたときには、Facebookのプログラムは誰も中身を見れませんよね。Googleのプログラムは中身を見れませんよね。だから、Googleが裏でアルゴリズムをどう触ってくるか、僕らは分かりませんよね。でも、そういう中央の人たちをやはり信用したくないよという、このサトシ・ナカモトさんの意志を継いで、プログラムも全て全員に透明性のあるかたちで見えるようにしようとしました。そういったプログラムが1回起動されると、ずっと勝手に起動し続けるような、人間が止められないような仕組みにしました。
傍島:(笑)悪さできないとか、誰かに支配されないとか、みんなでもっと自由にやろうぜとか、透明にやろうぜとか、そういうムーブメントというか、流れだったということですよね。
これだけあれば、これからのWeb3の未来は予測できる
内山:そうです。では、ここまでできたら、、、ここに今のを箇条書きにしました。Bitcoinの実現によってもたらされたものはこれでした。Ethereumの実現によって、この上にさらにこういうものを上乗せしました。さて、これだけあれば、これからのWeb3の未来は予測できます。どういうことでしょうか。
傍島:ちょっと待ってください。内山さん、これまでというのは、こういう仕掛けを、去年までですかね、主に仕掛けが出来始めて準備ができましたという理解でいいのですか。その中でもいくつかいろいろなアプリが出てきたりしていると思うのですけれども、大きく言うと仕掛け、準備ができましたという理解でいいわけですよね、これまでは。
内山:はい。いえ、これまでというか、2015年辺りにこういったことが実現できていましたと。では、これとこれを使ってこんなことができないかなと言ってあるサービスが生まれたり、Bitcoinのこの多くの人を巻き込む仕掛けはよかったよねと、これと何かプログラム自動実行を組み合わせたらこんなことができるのではないかなと言っていろいろなWeb3サービスが出て来るのです。
傍島:なるほど。
内山:ですから、Web3の定義はなくて、Bitcoinのサトシ・ナカモトさんがこんな特徴を見つけてくれた。ヴィタリックさんはこんな特徴をつくってくれた。だったら、これとこれを組み合わせればこんなこともできるのではないかと、みんな発想し始めるわけです。そこで出たのが、例えば1つ、情報自体はコピーできてしまう、音楽データ等はコピーできる、お金もコピーできる。にもかかわらず、台帳のおかげで「お金の所有者はこの人です」というふうに限定できるようになりました。
小川:はい。
内山:では、これを応用したら、ほかにどんなことができるか。例えばアーティストXさんがBさんに、自分がつくった絵画Xの所有権の1つを送りました。送ったというか、送りますという台帳に書きました。Bさんは、アーティストXさんに、この絵画Xの所有権をあなたに送ったよと台帳に書いてくれるお礼にEthereumを20個送りました。これは台帳に書いただけですよね。これは何でしょうか。アートのNFTです。
傍島:言葉が止まってしまいました。(笑)
内山:つまり、NFTというのはコピーできない。あなたしか持っていないと言いますけれども、この絵はパソコンで画面キャプチャすれば誰でも移せるし、ダウンロードできますよね。コピーできますよね。でも、「この絵の持ち主はこの人です」と台帳に書いてあります。台帳に書いてあるのが持ち主ですとか、台帳にこの人がいくら持っていると書いたら、その人はお金を持っていることになるのですという発明をサトシ・ナカモトさんはしたわけです。そうしましょうという発明をしたわけです。ですから、NFTというのは、台帳に誰々さんが何かを持っていますと書いているだけなのです。
小川:その絵が何かに使われたら、その方にお金は入ってくるのですか。
内山:入って…。この仕組み上からは入ってこないです。
小川:そうですよね。
内山:入ってこないです。
小川:では、絵は一人歩きしてしまってもいい?
内山:はい。いいです。ただ、絵を誰かにまた売ったときに、作者にお金が入らなければいけないなど、そういう仕組みがあったりしますけれども。
小川:ありますよね。著作権や肖像権など。
内山:はい。そういうのは、この台帳を書き換えるときに、必ずこのプログラムを読みなさいという、プログラムの自動実行と組み合わせてこういうことを行いますが、基本的には情報自体はコピーできるのに、持ち主だけを書けば持ち主と移転先と何をどれだけと書けば、もうデジタルの情報で所有者を限定できるよねという考え方をサトシ・ナカモトさんがつくったのでNFTができたのです。
また、では、NFTができるようになりました。これとBitcoinやEthereumは世界中のどこにでも安く一瞬でお金やモノを送れるようになりました。では、NFTと「低コスト・高スピードの送金の仕組み」と「情報自体はコピーできるのに、情報の所有者を限定できる仕組み」を組み合わせたらどんなことができるかなと考えてみます。
そうすると、例えばあるアート、「僕のこのデジタルアートは1億円です」というアーティストがいたとします。そうすると、1億円でアートを買える人は少ないですよね。では、そのアートの権利を1億分割して、「1人1円でお金を出してくれれば、僕のアートの権利1億分の1をあげます」というふうに考えたとします。通常それをしようとすると、契約書を1億枚書かなければいけなくて、ものすごいコストが掛かります。でも、ブロックチェーンの仕組みを使うと、1億分割して1億人に送信して、台帳に1億人分の何々さんが1億分の1持っています、何々さんが1億分の1の2番目を持っていますと書くのは簡単です。デジタル上、Excelにバーッと1億列書けばいいものですから。
そうすると、今まで高額なアート作品は1人の人に買ってもらわなければいけなかったのに、何十人や何億人で共同保有するということができますよね。この特徴とこの特徴を組み合わせたらとか。
あとは、「中央の権威者を排除できるような仕組み」をBitcoinでつくったのだよねと。では、その仕組みを応用して。これまではアートは基本的に画廊さんを通じてしか売り買いできませんよね。そうではなくて、画廊さんを通さずに1億分の1のNFTをみんなで売買し合う場所をブロックチェーン上につくりましょうかと、そうすると、画廊さんを排除した分散型の絵の売買の仕組みができるわけです。そういう感じでどんどんいろいろなことを発想していけるのです。
最近はデジタルのアートだけではなくて、例えば島で、「この島は1億円します。これを何百人で分散して一緒に買いませんか。島の権利を何分割してNFTとして発行します。それをみんなで買ってください」というような、リアルなものの権利をNFT化して販売するというようなことも行われてきています。つまり、この台帳があれば、リアルな世界にあるどんなものの権利だって権利化して売買できるではないかということができるようになったということが、ブロックチェーンが価値のインターネットと言われる理由です。
この辺はサクサクッと、飛ばしましょうか。こんなふうに、これとこれを組み合わせたらNFTができました。では、これとこれを組み合わせたらDAOができるのではないか、GameFiができるのではないかという感じにどんどん進化していきます。
傍島:内山さん、ちょっと待ってください。Q&A、質問が来ています。
小川:そうですね。すみません。Q&Aをいただいていますので。実は、私もちょっと先ほど疑問に思ったのですが、先ほど、絵の売買で「特に買ったからと言って、絵は一人歩きの状態」というお答えでした。「では、なぜアートを買うのでしょうか」というご質問をいただいていますが、それはいかがですか。
内山:なぜアートを買うのかですか。
小川:はい。先ほどの方が、「買っても結局いろいろな方が見ることができてしまって、特にその方に利益が入るわけではない」というお答えだったのですが、「では、なぜその方はアートを買うのでしょう」というご質問が来たのですが、いかがでしょうか。
内山:例えば、モナリザの絵があるとしますよね。ルーブル美術館かどこかに飾ってあるとします。今のデジタル写真の技術でつくれば、そっくりなモナリザの絵を僕らはつくれるわけです。
小川:そうですね。
内山:自分の家にレプリカを飾れるわけです。だから、誰でもモナリザの絵を複製できるにもかかわらず、何億円もかけてモナリザの絵を買う人がいるのです。なぜですかと。「俺が持っているんだ、本物を」というのが欲しいのですよね。
傍島:本物だから。
内山:本物というのかな。「俺が持ち主なのだ」という名誉が欲しいのですよね。
小川:なるほど。(笑)
内山:そうですね。ちょっとこれは1時間では終わらなそうだから、少しペースを上げますか。
小川:すみません。はい。少しお時間が結構押し迫ってまいりましたので。
これからのDAO
内山:こうやっていろいろなものが出ます。DAOは、結構皆さんからも注目が高いと思いましたので、最初に持ってきたのですけれども。もともとは…。DAOももともとはEthereumの創業者のヴィタリックさんが論文で提唱しました。でも、ヴィタリックさんが提唱したものとは違うようなかたちで、「いや、こんなふうにも使えるのではないか、こんなふうにも使えるのではないか」というかたちで、いろいろなWeb3プロジェクトの組織がトークンを活用して組織運営をどう効率化して自走させられるかを模索しています。そうすると、ヴィタリックさんが当初思っていなかったような使い方もされてきていて、まだまだ進化し続けています。定義にそんなに意味はないと。では、DAOが今後どうなっているかを予測するためには、先ほどと同じように、ブロックチェーンの成り立ちの特徴から見ると、こんなふうに何か組織運営に生かせるのではないかという予測ができてきます。
先ほど言ったものをもう1回並べてみます。もともとヴィタリックさんは、組織運営はみんなにトークンを持たせますと。「みんなが投票して意思決定しましょう。社長の言いなりになるな、社員全員で投票して決めるのだ」と。みんなが投票してこうしようと言ったら自動的にプログラム、自動的なプログラムというのがありましたね。プログラム自動実行というものがあるので、みんなが例えば会社の戦略はこうしようと言って投票してそれがOKになったら、そのプログラムが自動実行されて、会社の戦略がそっちに動けというふうになります。そのときに社長や管理部門など、そんなものは要らないと。そんな投票に一生懸命参加したり、いろいろな提案をした人に貢献に応じたトークンを付与していく、そんな組織になったらいいのではないかということを、すごく嚙み砕いて言っていますが、ヴィタリックさんは考えました。
ところが、そんなにうまくいくかと思うわけですよ。例えば500人の会社になって、「500人全員で今後のこの社員の採用をどうするか、みんなで投票」なんてやると思いますか。
傍島:すごく荒れますよね。
小川:ちょっと無理がありますね。
内山:無理ですよね。そうすると、では、20人の組織だったらそれも成り立つかもしれないけれども、500人だと成り立たないよねとかいうことも出てきますし、いろいろなDAOでできた問題点というのは、DAOが、こんなDAOを立ち上げるぞと言って、うわー、俺もやるやると言ってトークンをもらって、トークンをもらった瞬間次のDAOに行く、あとは任せたという人がたくさん出て、トークンを持ったらみんな自分事化して、みんな一生懸命投票したり提案してくれるだろうと思っていたのだけれども、トークンで儲けたいだけであって、トークンをもらったら次に行く人がたくさんでたさけですよね。
そうすると、理想通りにはいかないよと。あとは、戦略をプログラムで実行しようと言っても、例えばこの人を採用しようとみんなで決めました。でも、採用をする人、面接するのは人間ですよね。プログラムで自動実行されませんよね。そうすると、何でもプログラムで自動実行できる組織というのはないですよねとなってきます。
今後のDAOの進化予測
内山:そういうことをいろいろ僕なりに考えていくと、これが僕のDAOの今後の進化予測です。今のDAOは、参加してくれる人、貢献してくれる人にトークンを渡します。トークンを持つと投票権があります。さらにあとあとお金にもなりますと言うのですけれども、「いやいや、あなたはお金だけ欲しいのですよね、意思決定は専門の僕に任せてください」となっていくだろうと。株式会社で言うと株主の人たちは株を持っています。株主総会には出ていって投票してもいいです。でも、株主総会で取締役を決めたら、普段の経営は取締役に任せてください。取締役もある段階になったら執行役に任せて、ここは執行役でおこなってください、ここからは部長陣でおこなってくださいというふうに段階化されますよね。ところが今はもう「全員で同じように同じことをやりなさい」というのが今の多くのDAO なのです。ですから、どう組織をマネジメントしていくかはもっと階層化され、分野ごとにファイナンスのことはファイナンスのトークンを持っている人たちで決めてください、開発のことは開発の人で決めてくださいというように、もっともっと階層化されたり、分野ごとに分担されるようになります。
実際に最新のDAOでは、プロフェッショナル・デリゲータという職の人がいて、いろいろなDAOに入っていって、「会計のことはあなたたちは分からないのだから、私にトークンを預けてくれれば全部私が代わりに投票して意思決定してあげるよ」というデリゲータという職が出てきています。
傍島:専門職ですね。もう本当に会計士というような。
内山:はい。
小川:すごいですね。
内山:要は、株主がみんな会社経営するわけではないですよね。「株には投資するけれども、運営は任せたいです」ということもDAOの世界で起きてきています。
そうなってくると、DAOとリアルな組織を比べたときに、DAOというのは今まで株式会社の場合は社員全員に株を配るのは大変でした。世界中の国籍の人に株式口座をつくってもらうのは大変でした。でも、トークンだと大量に配れますし、世界中の人に配れます。そうなってくると、株式で手続きが大変だったり、コストが掛かっていたことをトークンで手続きを簡単にして世界中に配れるようになったら、もっともっとインセンティブ設計がうまくいくのではないかとみんなが発想したとすると、どういう組織形態ができるかなと考え出したわけです。
そうすると、世界中から集めた10人の思いを持った人たちで最初はスタートした。それが50人になった。100人になった。1,000人になった。だんだん組織のマネジメント方法が変わりますよね。今のDAOは「うちのDAOはこういうかたちでガバナンスしています」とカチッとホワイトペーパーに書いてスタートするのですが、そうではなくて、組織は変化していくのだから、その進化に合わせてガバナンスの方法を変えましょうよというかたちのDAOに変化していくはずです。
ベンチャーで言うと、立ち上げ当初は社長が全部決めます。でも、上場するときになったら、それは株主総会で決めてくださいとか、取締役会で決めてくださいとかいうように進化に合わせてガバナンス方式が変わるでしょう。そしてまた、うちはやはり社長をもっと生かしたいよとか、われわれは合議制でいきたいよとか、組織ごとにいろいろな特性がありますし、先ほど言った進化のどのライフステージにいるかにもよるので、あなたの場合だとこういうやり方のDAOの運営の仕方にするといいですよという設計パターンが構築されると思います。ただ、これにはまだ数年かかると思います。なので、これからのDAOはみんなやってみたけれどもうまくいかない、失敗したというようなDAOがたくさん出てくるのが今年、来年になります。
傍島:なるほど。理想通りにはいかないぞと。結局リアルでしていることにやり方自体は近付いていくということですね。
DAOの好事例:WorkDAO
内山:はい。さて、そんな中で非常にうまくいっているDAOの例が1つあります。WorkDAO、これは大好きなDAOです。世界中のエンジニアや法律家などフリーランスの人たちがいるとします。私がWeb3プロジェクトを世界中のメンバーと一緒に進めようとしたときに、インドの人もいれば、フランスの人もいれば、アメリカの人もいます。そういう人たちを採用してグローバルチームを組織しようとすると、それぞれの国や州によって労働法や税法、その他さまざまな規制がありますよね。それら全てに対応しきれないので、インドの人を僕のプロジェクトに採用するとなったら「このWorkDAOに所属してください」と言うのです。そのインドの人はこのWorkDAOに所属して、WorkDAOから僕の会社に派遣されます。派遣という言葉が合っているかどうかは分かりませんが、業務委託を受けます。そうすると、僕はその人の給料をWorkDAOに払って、WorkDAOがそのフリーランスの人に払います。そうすると、その各国の労働法や税法、経理、事務等は全てWorkDAOが僕らの代わりにおこなってくれる、そういうDAOが出てきています。
傍島:なるほど。
内山:これは先ほどの特徴のどれを使っているのかと言うと、おそらく世界中にトークンだったら給与支払いや業務委託支払いが簡単にできますよねということと、あとは実は会社の立ち上げ登記が楽です。
傍島:手続きがですね。
内山:DAOの実現によってもたらされたもの、みんなでフリーランスが大企業と契約を結ぶのは大変ですが、大きなDAOの下に入ったら、大きなDAOと大企業で契約を結んでくれるから安心ですというような、DAOの実現によってもたらされたものの中に仮の団体になれるというようなのが出てきて。では、それとこれを組み合わせたらどうなるのかというようなものも、またDAOの進化によって出てくると思います。
小川:なるほど。今またご質問を頂戴しているのですけれども、「DAO組織は自律分散型組織と言われていますが、今のご説明ですと階層型になったり、結局ガバナンス的には今の株式会社組織の構造とあまり変わらないという感じでしょうか」というご質問ですが、いかがでしょうか。
内山:はい。変わらないかたちのDAOもありますし、もっともっと自動化させるDAOのかたちもあると思います。例えばこのWorkDAOさんの場合で言うと、私がインド人の方への支払いをトークンでポンとおこなったとしたら、そのインド人の人にここの仲介業者が何%取るというのが全部プログラムでオープンになっているので、自動的にポンとリアルタイムで払われるようになると自立的になりますよね。だから、給与支払いなどはどんどんプログラムで自動化していくと思います。ですから、本当の理想的なDAO的に自動化されるものと、きちんと人間がいて階層化されてやはり手続きを踏まなければいけないものと、どの業務がDAOに合って、どの業務がDAOに合わないのかということはどんどん分かってくると思います。
小川:これからということですね。そして、ご質問の続きなのですが、「株よりもトークンのほうが運用が楽だからという理由や、WorkDAOのように国のローカルルールを超えた世界共通ルールで事業運営できるようにというメリットが享受できるからという理由で、DAOベースで事業運営したい組織が増えていく感じでしょうか」というご質問です。
内山:そういう人たちも増えてくると思います。要は、先ほどのそういう特徴によって、今、グローバルの法律をまたいで何とかできるとか、そういう特徴がありますよね。私たちはこの特徴とこの特徴を使って私たちの例えば自治体を管理してみようかとか、新しい私たちのNPOはこの仕組みでやってみようかとか、いろいろなかたちのアイデアが出てくるので、これは使えるなと思ったら使う人は使うでしょうし。ですから、どんどんいろいろなアイデアが出てくると思います。
小川:そうですね。
Web3のこれから:SDGs編:Famieeによる社会変革
内山:最後に「Web3のこれから:SDGs編」ということで、僕はこのWeb3の中で中央の権威者は要らず、このビジョンで人を集めて、トークンによってみんなが自分事のようになって世の中を変えるという、この特徴がものすごく素晴らしいなと思っています。例えば、通貨は本来法律で定めて通貨を国の権威によって通貨をつくるのですけれども、Bitcoinの場合は論文を書いて、Bitcoinのようなものができたらいいと思うよ、俺はサーバーつなぐよ、マイニングするよ、俺のEコマースでBitcoinで決済ができるようにしてあげるよ、という人たちがどんどん増えてきたら、いつの間にか世界通貨のようなものができてしまったのですよね。つまり、中央の権威で何かを実現するのではなくて、ビジョンを信じる1人1人が集まって、それが大きくなると社会が変わるというのを、僕はWeb3型の社会変革だと呼んでいます。
実はこれを実際に適用した例がありまして、LGBT、同性婚が今日本で認められていません。夫婦別姓も認められていません。そういう人たちは公的年金の被扶養者になれないとか、賃貸契約のときに友人同士NGの物件に入れないとか、介護休暇も認めてもらえないとか、いろいろな問題があります。こんなにいろいろな家族の形が多様化しているのに、社会制度は追い付いていないのではないかと。そこで、同性婚を国に認めさせようというやり方ではなくて、うちの会社は同性婚でも家族と認めるよ、うちの生命保険会社はそれでも家族だと認めるよという企業が増えれば、法律を変えなくても世の中を変えられるではないかという、Web3の社会変革の仕方があるなと思っています。
実際にこのFamieeという私が経営している一般社団法人では、それをブロックチェーン上でおこなっています。同性の方が戸籍謄本や独身証明書を出して申請すると、パートナーであるという証明書をEthereumのブロックチェーン上で発行し、それを生命保険会社に持っていったり、企業に持っていったりすると、家族として取り扱ってくれるというような、企業のネットワークをつくるということまでおこなっています。現在、みずほフィナンシャルグループ、損保ジャパン、マネックス、JAL、Panasonic等々の大手さん、それから自治体、生命保険会社等まで、同性婚が日本で認められていないにもかかわらず、「それでいいではないか!」という人たちが出てきています。
傍島:すごい!
会社員が今すぐできるWeb3/SDGs活動
内山:これこそまさにWeb3的な社会変革だと思っています。皆さんも今、会社にいらっしゃる、お勤めだと思いますけれども、「Web3で何をしたらよいかよく分からない」「SDGsでうちの会社も何かしなければいけない」と思われているかもしれませんが、今すぐできます。社内の福利厚生の規定において、配偶者とか家族とか、書いてあるところにおいては、注意書きで「※同性パートナーも家族として取り扱うようにしますよ」という但し書きを1つ入れるだけで、もうあなたも社会変革をする企業の一員になってWeb3を体験できます。そして、その同性の人を「この人たちは本当に夫婦に相当する仲だよね」と認めるときに、この「Famieeというところが出した証明書を持ってくるのでもいいよ」としていただければ、今すぐ、明日からWeb3のサービスを実体験できます! ぜひやってみていただきたいと思います。以上です。
傍島:素敵ですね。
まとめ
内山:最後、今日お話しましたけれども、この上にいろいろDAOの特徴がいろいろ出てきますが、こういう特徴をもとに、「これとこれを組み合わせたらこんなサービスができるよな」ということで、ぜひ皆さんもWeb3の今後の未来を想像してみていただけたらと思います。ありがとうございました。
小川:ありがとうございます。私たちももっともっと勉強してまいりたいと思います。ありがとうございます。
傍島:これは1時間では足りないですね。
小川:そうですね。もっともっとお聞きしたかったです。
傍島:3回目、もう1回お願いしてもいいですか。(笑)
内山:はい!
傍島:すごくためになりましたね。
小川:はい。ありがとうございました。それではあっという間にお時間となりましたので、本日の01Expart Pitchは終了とさせていただきます。内山さん、傍島さん、本日は誠にありがとうございました。
傍島:ありがとうございました。
内山:ありがとうございました。
小川:ご視聴いただいた皆様もありがとうございました。また次回もぜひご参加ください。それでは、さようなら。
以上