アメリカからみるスポーツテックの最先端
▼ こんな方にオススメ
- スポーツテックやファンタジースポーツに興味がある方
- CVC担当、新規事業担当
- 世界における最新のスタートアップの取組み状況と未来を知りたい方
▼ 登壇者
並木 啓悟 氏:株式会社なんでもドラフト 共同創業取締役
2008年PwC Japanに入社。投資管理部門・不動産部門を経て、PwC Detroitにて自動車業界、PwCシリコンバレーにてテック領域全般に関わるコンサル業務に従事。Drive.AI(後にAppleにより買収)にてアドバイザーとして財務責任者を務めた後、Barclays Capitalテック投資銀行本部にてUberやPinterest、Pelotonなどの上場案件を担当。現在はシリコンバレーを拠点に、日本企業の事業開発をサポートするBizDev Dojo社(米国拠点)、なんでもドラフト社(日本拠点)の経営を行う。慶應義塾大学卒、UC Berkeley Haas(MBA)卒。日米公認会計士。
- 01 Expert Pitchとは?
- なんでもドラフト 並木 啓悟 氏プロフィール
- アメリカで大人気スポーツ「ピックルボール」
- スポーツテックがニッチからメインストリームへ
- スポーツテックに特化したVCの誕生
- セレブも注目する市場
- アクセラレーターが熱い
- スポーツ選手のセカンドキャリア問題
- 小さなスタートアップはどんなVCと話せば良いか?
- ファンの体験向上:「ライブ」
- ファンの体験向上:「NFT」
- NFTバブル?
- ファンの体験向上:「スポーツベッティング」
- ファンの体験向上:「ファンタジースポーツ」
- 「なんでもドラフト」サービス紹介
- ギャンブル以外の楽しみ
- スポンサーシップとの親和性
- 最後に
小川:皆様、こんにちは。お待たせいたしました。本日はご参加いただきまして誠にありがとうございます。それでは12時になりましたので、01 Expert Pitch第16回を始めてまいります。「シリコンバレー発!世界のエキスパートが最新情報を日本語で解説!」ということで、本日は「アメリカからみるSportsTechの最先端」をお送りいたします。
さて、今回は株式会社なんでもドラフト 共同創業取締役 並木 啓悟さんをエキスパートとしてお迎えしております。並木さん、よろしくお願いいたします。
並木:よろしくお願いします。
小川:そして、本イベントの主催者であります、Tomorrow Access Founder & CEOの傍島さんです。本日もどうぞよろしくお願いいたします。
傍島:よろしくお願いします。
小川:そして、私、本日のナビゲーターを務めてまいります、フリーアナウンサーの小川 りかこと申します。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは早速ですが、傍島さん、この01 Expert Pitchのイベントの狙いなどを少しお話いただけますでしょうか。
01 Expert Pitchとは?
傍島:はい。あらためまして、Tomorrow Accessの傍島と申します。よろしくお願いいたします。Tomorrow Accessという会社は、シリコンバレーを拠点にしたマネージメントコンサルティング会社になります。主に日本とアメリカのクロスボーダーのビジネスをご支援させていただいているんですけれども、この01 Expert Pitchは今回16回目ということで、毎月1回、今回の並木さんのようなエキスパートに来ていただいて、テーマを決めていろいろなお話をしているのですが、狙いとしては3つあります。
まず1つ目は、日本とアメリカの情報格差の解消ということです。並木さんもたぶんいろいろな日本の会社の方から言われると思うのですけれども、「シリコンバレーの最新情報やグローバルの状況はどうなっているのかということを教えてください」という声をたくさんいただきます。そういったところで、アメリカで注目されているニュースの内容やトレンドを迅速にお届けして、日本とアメリカの情報格差を埋めたいというのが1つ目の狙いです。
2つ目は、正しい情報をお届けしたいということです。同じニュースでもアメリカで感じている温度感と日本に伝わっている温度感が違うなと感じることがたまにあるんですよね。そういったところをご登壇いただくエキスパートの方にきちんと解説していただいて、正しい情報を正確にお届けしたいというのが2つ目の狙いです。
3つ目は、日本語での解説ということです。英語でいろいろな情報をたくさん調べられる方も多いとは思いますが、なかなか大変ですので、今回のように日本語できちんと解説をして理解していただこうという、この3つの狙いでウェビナーを運営しております。
今日もSportsTechということで、非常に注目されているマーケットのことですので、私も大変期待してまいりました。並木さん、どうぞよろしくお願いいたします。
並木:こちらこそ、よろしくお願いします。
小川:よろしくお願いいたします。傍島さん、ありがとうございます。
そして、本日のウェビナーでは、皆様からのご質問を随時受け付けて進行を進めてまいります。参加者の皆様、ぜひ並木さんにご質問のある方は、Zoom画面の下にございますQ&Aボタンからご質問をお寄せください。随時、私のほうで拾ってまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは早速ですが、並木さん、まずは簡単に自己紹介からお願いしてもよろしいでしょうか。
なんでもドラフト 並木 啓悟 氏プロフィール
並木:はい。ありがとうございます。並木 啓悟です。シリコンバレーにおります。よろしくお願いします。今日のアジェンダですが、私の自己紹介、そして本題でもあるアメリカのスポーツ×テクノロジーのトレンドのご紹介、そして最後に弊社、なんでもドラフトのことについてご紹介させていただきたいなと思っております。
私はシリコンバレーが長くなっておりまして、アメリカがもう11年ほどになります。最初のキャリアは日本から始めておりまして、日本とアメリカ、両方の公認会計士の資格を使って、PwCというところで監査やコンサルティングをしておりました。後半6年ぐらいがアメリカになりますが、その間、UC Berkeleyという経営大学院のMBAを取りまして、そのネットワークを使ってDrive.aiというスタートアップ、これは自動運転のソフトウエア開発を人工知能の力を使って行っていくというところでしたが、ここのスタートアップに財務会計の責任者として参画させてもらって、最終的にはAppleにExitすることができました。そのままBARCLAYS CAPITALというシリコンバレーの投資銀行に行きまして、スライドの上のほうにあるような企業さんの上場支援や資金調達の支援、そして、企業買収の支援を担当しておりました。スポーツが大好きで、3年前になんでもドラフトというスポーツ領域で勝負する会社を起業して事業を行っております。
アメリカで大人気スポーツ「ピックルボール」
ところで、ちょっと見当がつかないとは思いますが、「今アメリカで一番盛り上がっているスポーツ何でしょう?」というのを皆さんに考えていただきたくて。今はバスケットボール、NBAが始まったり、アメフト、NFLが始まったりしていますけれども。傍島さんはたぶんご存じではないかなと思いますが。
傍島:はい、私は分かりました。小川さん、分かりますか。あ、画面に出てしまった…。(笑)
小川:もう本当に野球、ベースボールは見ていますけれども…。(笑)
傍島:この画面ですね、画面を見て。
小川:これはピックルボール?
並木:はい。これはピックルボールと言って、テニスの3分の1ぐらいのコートを使って行います。テニスや卓球に非常に似ているのですが、これが非常に今、盛り上がっています。どれぐらい盛り上がっているかと言うと、今、アメリカだけで500万人ぐらいプレイヤーがいます。この盛り上がりは人の人数だけではなくて、メジャーリーグピックルボールというプロのリーグも去年発足しております。そこのチームを有名なレブロン・ジェームスというNBAの選手や、アメフトのトム・ブレイディといったスーパースターがオーナーに最近なったことでも有名です。
これは僕もプレーしたことがありますが、ポイントは、コロナ禍においてやはり運動不足を解消するのに屋外でちょうどよかったということと、僕はこれがポイントだなと思っているのが、玄人も素人もラリーが続くところです。なぜかと言うと、これは僕の個人的な感想ですが、プラスチック製の球にたくさん穴があいていて、強く打ってもすぐ失速するので、相手のコートに入ってくれるのです。僕はテニスは全然しないので、テニスが上手い人としたときに全然ラリーが続かないのです。
小川:絶対だめです。
並木:そうですよね。ところが、ピックルボールはコートも狭いし、2対2でやるし、ボールの質も特殊ですので、かなり実力差があったとしてもラリーが続きます。勝敗はなかなか素人が玄人に勝つことは難しいのですが…。アメリカでいろいろなテニスコートが今ピックルボールに変わっていて、「ピックルボールのコートが足りない」という運動が起きるぐらい、とても流行っています。日本でまだまだのスポーツではありますが、皆さん、ピックルボールというのがアメリカで今流行っていますので、注目してみてください。
小川:面白い!
スポーツテックがニッチからメインストリームへ
並木:ここから本題に入ってまいりたいと思います。スポーツ×テクノロジー、SportsTechと呼びますが、このトレンドについて今日はお話したいと思っております。
まず、「ニッチからメインストリームへ」ということですが、これは何を指標に言っているかというと、世界的に見てスタートアップに対するベンチャー投資がどのぐらい入っているかというところからの考察になります。過去数年間はだいたい3~5Billionぐらい、今の日本円に換算すると4,000億~6,000億円ぐらいのところを推移していましたが、直近2年で一気に増えていて3倍ぐらいになっています。
ベンチャー領域でこれを紐解いていくと、ベンチャー領域の構成要素になるものは事業運営側、なんでもドラフトのようなスタートアップと、それを支援していく支援側があります。こちらのスタートアップが絶対的に増えているかと言うと、増えているかもしれませんがそこまででもありません。一方、支援側から来るお金が非常に増えています。この支援側というのは、皆さんもおそらく想像がつくのがまず投資家と、もう1つがアクセラレーターと言ってスタートアップを成長させていくようなプログラムの存在が大きいのではないかと捉えています。
それが具体的にどのように成長しているかというところをいろいろ、事例を交えて紹介させてください。サポート側で投資家とアクセラレーターがあるとお伝えしましたが、2022年特に顕著だったのはアクセラレータープログラムがいろいろな所で立ち上げられたことです。例えば、アディダスがスタートアップと一緒になって何かをつくっていくInnovation Labというのをつくりましたし、イギリスのプレミアリーグで有名なアーセナルも似たようなInnovation Labをつくりました。また、ゴルフのPGAやスペインサッカーのLaLiga、こういったところも同じような取り組みをしています。2022年はスポーツ特化のアクセラレーターが結構顕著だったのではないかと思います。
傍島:すごかったですね。
並木:彼らが狙っているのは、一言で言うとオープンイノベーションだと思っています。オープンイノベーションでよくある失敗で言うと、要はスタートアップばかりにオープンにさせて、自分たちはオープンにしないというところはなかなかうまくいかない気がしています。
傍島:確かに。
並木:成功のカギは、スタートアップだけではなくて、要は大企業あるいは運営側もしっかりと自分たちをオープンにしていくことだと思いますので、その辺りは今後アクセラレーターに入る、あるいは応募するといったときに、どの程度運営側がオープンにしてくれるかというところを見るといいと思っています。あるいは、今日は大企業の方が多く参加していると思いますので、自分たちで取り組んでみようと思われている方は、いかに自分たちのリソースをオープンにできるかというところかなと思います。
アクセラレーターの顕著な台頭というところがありましたが、ここからはもう少し大きな視点で市場を見ていきたいと思っています。支援する側は2つあると言いましたが、その1つが投資家です。左側はいわゆるザ・トップVCというところですが、彼らはいろいろなSportsTechのスタートアップに大きな金額を投資しています。この投資家、トップVCの特徴は、スポーツに特化しているのではなくて、さまざまな業界に対して投資をしていく総合型のVCを運営している点です。彼らは大きなキャッシュを持っていますので、彼らの投資があることによって市場が底上げされているというところはあると思います。
スポーツテックに特化したVCの誕生
一方で、SportsTechに完全に特化しているVCというのも結構な数ありまして、このようなかたちになっています。ただ、前半お見せしたところとは違って、チケットサイズ、投資の金額は前者のVCよりは少ないです。ここで顕著なのはPlayVSやGREEN PARKでして、これはeスポーツの有名なスタートアップですので、そういったところの台頭も見られるなというところです。
こちら、SAPはドイツの企業のシステム会社で、ここは自分たちのコーポレートVCを持っていました。このコーポレートVCは別にスポーツ特化のVCではありませんでしたが、スポーツ領域をやりたいという思惑もあったと思います。スポーツ特化のVCをVCがつくるということで、面白い取り組みだなと思っています。
一番左側のSAPPHIRE SPORTというVCは、完全にスポーツ特化になります。その下にあります、SAPPHIRE SPORTのファンドにお金を入れている外部投資家も基本的にはスポーツ団体になっています。やはりアメリカや世界で非常に多いのが、要はこういうスポーツ団体、リーグやチームがスタートアップに対してしっかりと投資をして、彼らのサービスやプロダクトを自分たちが使うことによって自分たちのコンテンツであるNBAやメジャーリーグそのものを面白くし、それによってリターンの回収をしていくという、自分たちで投資してマッチポンプのようなかたちで行う、いわゆる戦略的シナジーを目指しているようなところがあります。
傍島:このSAPの事例はやはり面白いですね。ベンチャーキャピタルでいろいろな投資をしているにもかかわらず、スポーツだけに特化していく流れというのは結構面白いなと思って私も見ていました。やはりお金が余っている部分も一部あるとは思いますけれども、スポーツに特化してやっていくというのは面白いですね。また、ここに書かれていますけれども、いろいろな人脈、スポーツ選手もそうですし、セレブリティ、芸能人といったいろいろな人たちがスポーツやスタートアップ業界に結構入ってきていますので、ここの流れはすごく面白いなと思って見ていました。
セレブも注目する市場
並木:おっしゃる通りです。今はベンチャーキャピタルの話をしていますが、アメリカを見てみると、いわゆるセレブ、成功したスポーツ選手自身が自分のファンドをつくる、投資をするということは非常に多くあります。有名なところで言うとレブロン・ジェームスもたくさん出資していますし、NBA選手のケビン・デュラントはシリコンバレーにあるゴールデン・ステート・ウォリアーズというチームに2年間在籍していたときに、やはりいろいろなスタートアップが彼に話を持ってくるのですごく興味を持って自分のファンドを立ち上げていますし、セリーナ・ウィリアムズも自分のファンドを持っています。かなり積極的に選手個人が投資しており、セレブ×テクノロジー出資というところは非常に熱くなっています。
傍島:そうですよね。本田圭佑さんも世界中のセレブを集めて取り組まれていますね。すごいですよね。
並木:そうですね。ウィル・スミスと一緒にDreamers Fundをなさっていますね。
小川:すごい!
アクセラレーターが熱い
並木:ありがとうございます。少しここから毛色を変えて、投資家ではなくて、スポーツリーグ団体のアクセラレーターについて説明します。要はスタートアップに投資するというよりは、スタートアップをどう事業成長させていくのか。アクセラレーターと言いますが、要はスポーツ団体がアクセラレータープログラムをつくる例もアメリカは非常に多いです。例えばこれはメジャーリーグの有名なLAドジャースですけれども、そもそも大スターのマジック・ジョンソンというNBA選手がオーナーの1人だったりします。彼らが組んだこのTechstars、真ん中の辺りにあるロゴですけれども、こちらは非常に有名なアメリカを代表するアクセラレータープログラムで、この2社が組んでつくったSportsTech専門のアクセラレーターというのがあります。これが面白くて、出資もしますが、その代わりエクイティ、株を持って、投資するあるいはサポートするスタートアップのサービスをガンガンLAドジャースが使っていくと、スタートアップにとっては大変うれしいですよね、もちろん世界的なLAドジャースに、なんでもドラフトも使ってもらいたいとすごく思っていますので、出していかないとなと思っています。
似たような動きとしてNBA Launchpad があります。これは去年発足しまして、先ほどの例と同じで、NBAとしてスタートアップを集めて協業していくというものです。この動きはMLB(Major League Baseball)やNFL(National Football League)といった本当にメジャーなスポーツは、結構いろいろなところがアクセラレーターをしています。アメリカのアクセラレーターの良いところは、日本と比べてやはり事業シナジーを実現するように動いてくれるというのは見ていて思います。例えば、今年のメジャーリーグのオールスターに大谷選手も出ましたが、夏にありましたよね、あれはMLB、メジャーリーグのアクセラレータープログラムに入っていたスタートアップの3社のプロダクトが実際にオールスターで使われていて、そこでお披露目されて世の中に出ていきます。つまり、アクセラレーターでマッチングしているだけではなくて、実際に自分たちが持っている場を提供して、そこで選手たちに使ってもらって、ファンたちに使ってもらって、実装していくという、本当にそこの事業シナジーを実現するように動いてくれるというのはアクセラレーターのあるべき姿であると考えています。
傍島:この流れはありますよね。スタートアップへ投資するという流れももちろんありますが、自分がお客さんになってまず使ってあげるという流れは「ベンチャークライアントモデル」と最近呼ばれています。まず自分がお客さんになるモデルというのはすごくいいなと思って私も注目しています。
並木:おっしゃる通りですね。なんでもドラフトもザ・スタートアップですけれども、やはり使ってくれるとか、お金を払ってくれるとか、スタートアップからすると本当に涙が出るほどうれしい話ですし、もちろんそれに応えるために良いものをつくっていかなければいけないと思います。
スポーツ選手のセカンドキャリア問題
次は少し毛色が変わって、これは投資家でもなく、スポーツ団体でもありません。これは選手組合で、アメリカならではだと思いますが、NBAもNFLも選手組合が非常に活発に動いているというのが面白いなと思っています。アスリートはセカンドキャリアが問題になりますよね。引退してからどうしようと、仕事がなくなってしまった。あるいは、すごく稼ぐのですがお金使いも激しいので、引退したときにはもう何もないなど、このセカンドキャリアはよく問題になります。1つ新しい取り組みでこれはいいなと思うのが、選手側というのは、自分の肖像権を持っていますよね。その肖像権は、現役選手であれば、活躍している選手であればあるほど非常に価値が高いです。それを使ってインフルエンスマーケティングをしていきたい企業は多くありますので、ここをしっかりと組み合わせるというものです。選手側からすると、自分の肖像権を渡す代わりに会社の株を引き取ることができて、そこから分配金が出たりもするでしょうし、そして、将来的にはそこに就職するとか、そこが仮に上場すれば、非常に自分も利益を得ることができるでしょう。
ベンチャー側からすると、レブロン・ジェームスといった選手をマーケティングとして起用するのは非常にお金が掛かります。大谷翔平は確か30億円ぐらいになったので、彼のスポンサーになるためには去年の3倍ぐらいの約30億円を年間で支払わなければいけないというニュースがありました。でも、スタートアップはきっとそんなの払っていられませんよね。そのため、そうではなくて株でお願いしますというのは非常にWin-Winな関係になっているので、このアクセラレータープログラムは非常に面白いなと思っています。右下にあるKPCB(KLEINER PERKINS CAUFIELD BYERS)やHi(Harvard innovation lab)など非常に名のあるところが一緒に動いている点も魅力的だなと思います。これら以外にヨーロッパに目を向けても、サッカーのレアルマドリードやバルセロナといったところが同じような取り組みをしています。
そして、日本はどうなのかなと目を向けると、実は日本もいろいろとスポーツ団体との提携をゴールとしたアクセラレーターが増えています。こういったところがありますが、まだまだアクセラレーターというのがそこまでメインストリームに入ってきていないのが日本だとは思います。やはり運営母体がスタートアップをしてきたアクセラレーターというよりは、コンサルティング企業やスタートアップと大企業をつなぐオープンイノベーションに取り組まれている企業さんが運営されているところが特徴的だと思っています。
真ん中にあるのはスポーツ庁主催のプログラムでINNOVATION LEAGUEというものです。これは実は今年で数年目になりますが、ちょうど先週、採択企業が決まりまして、なんでもトラフトが採択されました。
傍島:おめでとうございます。すごい!
並木:ありがとうございます。これはスポーツ庁と電通とSPORTS TECH TOKYOの3社が一緒に行っているプログラムで、日本においてスポーツのイノベーションを推進していくというものです。今回は全日本柔道連盟さんと日本アイスホッケー連盟さん、この2団体がここに入っており、自分たちのコンテンツを使って一緒に協業しましょうというもので、2社ずつ合計4社採択されました。われわれは柔道連盟さんとご一緒させていただくことになるので、これからいろいろ動いていきたいなと思っているところです。
傍島:素晴らしいです。
並木:はい。なんでもドラフト、こちらがサービスに取り組むことになっていますので、よろしくお願いいたします。
小さなスタートアップはどんなVCと話せば良いか?
小川:そして、Q&Aが届いております。並木さん、ここでご質問してもよろしいでしょうか。
並木:はい。よろしくお願いします。
小川:ありがとうございます。それでは私のほうからご紹介いたします。「マイナースポーツ(モーグル向け)の練習サポートアプリのスタートアップをしております。まだ3人の小さな会社ですが、どんなVCと会話すべきでしょうか(国内でも国外でも)。資金面でのサポートは現状不要ですが、アドバイス等伺いたいと思っています。お勧めVCがあれば教えてください」ということです。いかがでしょうか。
並木:ありがとうございます。資金面が不要ということですので、資金提供というところを除いてお話します。もしかしたら3名で取り組まれていて、まだ資金が必要ではないということは、アイデアベースだったり、まだプロトタイプを開発するところだったり、製品化がまだ進んでいないところなのかなと推測します。それまでであれば、VCさんというよりは起業家、成功されている起業家あるいは失敗されている起業家でもいいと思いますが、すでに起業されている方のネットワーク、そういったところに入っていくと、いろいろな情報アドバイスを入手できます。また、それだけではなくて、やはり助けてくれる、自分がビジョンを語っていると、気付いたらサポーターが増えているということはあると思います。本当にスタートアップもそうで、本質的なことをがむしゃらにしっかりやっていればファンがついてくれるので、そういったコミュニティにしっかり入っていって自分の意見を言う、聞くだけではなくて自分の意見を言うというところが大切だと思います。そういうことをすると、そこからまた投資家を紹介してくれたり、協業先を紹介してくれたりあると思いますので、そういったコミュニティにまず入っていくというところが必要かなと思います。
またモーグルですので、モーグルでどこを攻められるのか分かりませんが、将来攻めたいモーグル協会やスキー連盟といったところにコネクションをつくるなど、壁打ちをするようなアプローチというのも将来的には必要ではないかと思います。ただ、これが難しいのが、個人に対しては最初からいろいろ行っていいと思いますが、競技団体、要はtoBとなると、最初のタッチポイントでいいねと言ってもらわないといけません。最初のタッチポイントで次につながる何かを見せなければいけません。「ざっくばらんにディスカッションしましょう」というのはあまり通じない世界だと思いますので、toBと話すときはある程度の何かを持って、提案できるような具体、次の具体は何なのかというのを意識されるといいと思っています。
小川:ありがとうございました。そのほか、ぜひ皆様ご質問をお待ちしております。よろしくお願いいたします。それでは引き続き、並木さん、お願いいたします。
ファンの体験向上:「ライブ」
並木:はい。SportsTechトレンドの最後のトピックです。何が一番盛り上がっているか。スポーツというのは、する「Do」と見る「Watch」が大きく分けてあると思います。Watchの中でもファンの体験向上をどのようにしていくのかという、ここが一番盛り上がっていると思います。大きく分けて3つ、ライブストリームと、NFTと、スポーツベッティング&ファンタジースポーツというところを今日がお話したいと思います。
1つ目が、リアルイベントの価値はライブにあるというのは大前提で、これはもう議論の余地はないと思っています。例えばテレビ視聴率を見てみても、日本トップ30のうち29が生放送、アメリカトップ50のうち全部が生放送、そのうち9割5分ぐらいがスポーツ番組です。要は、スポーツイベント×ライブというのはもう大前提ですので、いろいろな人が狙っているというのがライブストリーミング市場だと思います。AppleがアメリカのサッカーリーグMLSと2023年から独占的に配信していくということを先日リリースしました。NFLもディズニープラスと似ているNFLプラスというストリーミングサービスを開始しました。また、アメリカにF1が来ましたが、NetflixはF1を狙っていたりします。実はインドではクリケットが非常に熱いのですが、ディズニーが今まで持っていた配信権、ストリーミング権をほかのところに取られてしまうなど、ストリーミング争いがものすごく流行っているというのが世界的なライブストリーミングで言えることなのかなと思っています。日本にもDAZNやアベマなどいろいろいると思いますが、非常に熾烈な争いが今後も繰り広げられていくと思います。
ファンの体験向上:「NFT」
2つ目が、NFTです。NFTは2022年のバズワードでもあるのではないでしょうか。そもそもこれは何なのかという話については、レポートのような感じでまとめましたので、後ほどアンケートにご記入いただいてレポートを読んでいただければと思います。NFTというのは、要はデジタルアセットの流通市場ができて、それが流通されてという、一番左下の例は、ジャック・ドーシーというTwitterの創業者の最初のツイートがオークションにかけられて3億円で売られたというものです。
小川:すごいですね。
並木:すごいですね。左から2番目の例は、Beepleの作品で、コラージュと言うのでしたっけ、写真をたくさん集めたものです。これは確かノースカロライナの片田舎にいらっしゃる方がこれをNFT化して約75億円で売れたとか。すごいですよね。
小川:すごい!
傍島:すごいですね。これは衝撃ですよね。
並木:アートから広がっているのがNFTです。でも、皆さん気を付けてくださいね。NFTには所有権がありません。民法上では所有権というのは有物体、リアルのものに生じると言われていますので、仮にアートであってもデジタルである限りNFTには所有権が生じません。要は共通のルールがないわけです。所有権がありませんので、民法にも縛られません。ルールがないところにはトラブルが生じたりもするということだと思いますので、気を付けないといけないのがこのNFTです。ただ、このNFTが世界中で盛り上がったのが2022年、Web3だと思います。
例外なく、スポーツ業界も非常に盛り上がりました。OpenSeaというのはNFTのマーケットプレイスで、FanCrazeはインドのクリケットの選手をNFT化するものです。OpenSeaの企業価値が$13Bと書いてありますが、この「B」というのはBillionのことで日本円で言うと約1,000億円ですので、例に挙げたOpenSeaやFanCrazeといった企業はもう1兆円を優に超える大企業になっています。
スポーツ業界におけるNFTにはいくつか種類があります。カード型はそもそものカードがデジタル化されるもの、あるいは優勝の記念品がデジタル化される優勝記念品型、そして、デジタルがデジタル化されるデジタル型があります。一番右の写真にあるように、このレブロン・ジェームスの10秒のハイライトというYouTubeにあったものがデジタル化されて、それが数千万円で売買されるというのがNFTです。非常に盛り上がったので金額もすごいことになりましたけれども、今お話したレブロン・ジェームスの10秒のハイライトはNBA Top Shotというところで売買され、確か4,000万円ぐらいのNFTがあったと思います。それがTop Shotだったりします。それから、Sorareというのはフランスの企業ですけれども、これは後ほどお話するファンタジースポーツにも絡んできますが、彼らは選手のデジタルカードをNFT化して、そのNFT化とファンタジースポーツを掛け合わせるというビジネスモデルをしています。世界中の多くのサッカーリーグをかなり牛耳って事業を展開している企業になります。
ここからは事例が多いので簡潔にとどめておきたいなと思いますけれども、NFTはスポーツリーグも狙っています。メジャーリーグやユーロリーグも狙っていますし、チームも狙っています。これだけではありませんが、Golden State WarriorsやLAドジャースなどいろいろなところがNFTをしています。また、日本のプロ野球でも最近始まっていて、阪神の、ちょっと度忘れしてしまいましたが、ある選手がものすごく売れていたなというのがあります。
NFTバブル?
傍島:異常に盛り上がりましたよね。もうびっくりするぐらい盛り上がりましたが、小川さんはそんな肌感、日本であります? すごい盛り上がっていたのですけれども。
小川:ないです。すみません…。(笑)
傍島:ですよね。(笑)
小川:全然違いますね。
並木:そうですか。日本ではあまり盛り上がっていないのですね。なるほど、面白い。
傍島:特に一般の方と言ったら失礼かもしれませんが、こういうNFTが分からない方には全然たぶん届いていないと思います。でも、すごいお金が動いていました。
小川:すごいですよね。額の大きさにびっくりしました。
傍島:そうなんですよ。
並木:はい。僕は少しバブルだったのではないかなと思っているほうの人間です。視聴者の方々もNFTやWeb3に関してはいろいろな意見があるのではないかと思いますので、並木一個人の意見として聞いていただきたいのですが、先ほどお話しましたOpenSeaというNFTマーケットプレイスは、取引量が全盛期からなんと1%まで落ちてしまいました。
傍島:完全にバブルではないですか。(笑)
並木:このNFTやWeb3で根幹となる技術はブロックチェーンと言われますが、ブロックチェーンに投資するVCは、右側のグラフであるように右肩下がりに下がっているという状況です。NFTマーケットとしてかなり立ち回ったと言われたOpenSeaの取引量が99%下落して、ユーザー数が1/3まで減っているということで、今年の1月、まだ盛り上がっていたときに$13Billion(約1.8兆円)の事業価値をつけましたが、次に資金調達するときはもしかしたら企業価値が下がってしまうのではないかとも思われます。要は、ここまで完全にバブルだったのかなと。
アンドリーセン・ホロウィッツというシリコンバレーのトップVCがいて、ここは複数のファンドを合計して約9,000億円のCrypto、暗号資産専用のファンドを持っています。ここはもうファンドに9,000億円集まっていますので、それを投資しなければいけませんよね。LP投資家との約束があって「この9,000億円を10年間で運用しなさい」と言われていますので、9,000億円を投資しなければいけないわけです。つまり、どこかに投資しなければいけないということで、どんどんバリュエーションも上がっていったという背景があるのではないかと思います。
ここからは個人的な意見ですが、Web3は分散型だよねとか、みんなでやっていくよねといった、誰か1人が決めるのではなくて、みんなでやっていこうよという、centralizedではなくてdecentralized、集合的にやっていくという、良い側面も持つ一方で、取引的には非常に高くて遅いし少ないという問題もありました。ただ、ものすごく盛り上がりましたよね。NFTが盛り上がった背景には、コロナ禍で株価がだだ下がりになったことやウクライナの戦争など、今までは株に流れていた投機マネーが行き先を失ってしまって、その結果、NFTに流れていったのではないかなと僕は思っています。そして、NFTが大変盛り上がって利ザヤで儲けた人もたくさんいますが、必ずしも本質的な価値なのかと言われると、「NFTの本質的なユースケースを教えてください」と言われて、答えられる方はそこまで多くないかもしれなくて、まだまだ世の中にNFTの本質的なユースケースは出てきていないと思っています。そういったところに投機的にお金が回ってバブルになったのではないかと思っています。
傍島:ある意味、良かったかなと個人的には思いますよね。このような仮想通貨で儲かるのではないかとすごく盛り上がったのですけれども、本質的にこのブロックチェーンやWeb3で使われている技術はもっと良い使われ方がたぶんできるので、ある意味金儲けでうわーっと盛り上がるというところから1回スーッと冷えて、これから本当の意味で良いユースケースが出てきたらいいなと個人的には思います。
並木:おっしゃる通りだと思います。NFTは盛り上がっているので話さないわけにはいかないなと思ってお話しました。
小川:ありがとうございます。
ファンの体験向上:「スポーツベッティング」
並木:最後に、日本でも最近スポーツベッティングというのが話題になり始めていると思っています。政府もいろいろ議論していますし、解禁に向けたロビー活動も行われていますので、最後に、スポーツベッティングとファンタジースポーツというところでお話したいと思います。
「そもそもスポーツベッティングって何なの?」と、「ギャンブル?スポーツ?何ですか」というところですが、取りあえず市場が大きいです。合法違法関係なしで言うと、350兆円ぐらい世界中であると言われています。イギリスのブックメーカーが有名ですけれども、イギリスをはじめヨーロッパでは昔から行われています。何を皆さん目的にしているかと言うと、もちろんお金を稼ぐというところもありますが、やはり誰かと一緒に行うという目的のほうが圧倒的に多いです。要は友達やファン同士で「一緒にこの試合で賭けようぜ」と言って、そこでドラマが生まれて、コミュニケーションが生まれます。「お前の選んだ組、やばかったね」「今こうなっているよ」というように、そこでコミュニケーションが生まれるというのが純粋な動機付けとしてあると、僕は感じています。ヨーロッパで盛り上がっているのは知られていますし、アメリカは数年前から州ごとに解禁が始まっていて、今はもう20弱ぐらいの州で解禁が始まっています。
傍島:20州ですか。
並木:そうですね。
傍島:そんなに多いのですね。知らなかったです。
並木:多いですね。特に東海岸で多いのですが、実は年内にカリフォルニア州が解禁されるのではないかということで今動いています。世界の国別GDPで言うと、カリフォルニア州は、先日ドイツを抜いて4番目になりました。
傍島:州なのに?(笑)
並木:だから、そこの市場がスポーツギャンブルに振れるととんでもないことになるなというのはあります。
日本は、スポーツ庁が発表していますが、2025年までにはもしかしたら解禁するかもと、そんな噂もあります。野球やサッカーでスポーツ賭博が解禁されるという流れがあったりしますが、これはまだ分からないです。いつなるかは分かりませんが、そんな状況です。それから、もう1つ大きいところで言うと、ブラジルです。実はブラジルはまだまだスポーツベッティングは合法化されていなくて、今後大きな可能性を秘めていると言われています。これも皆さん、後ほどレポートで見ていただければと思いますが、売上高で言うと、スポーツベッティングのブックメーカーの上位5社はInternational Game Technology、GVC Holdings、bet365、Scientific Game Corporation、Flutter Entertainmentで、基本的にはヨーロッパの企業になっています。
ファンの体験向上:「ファンタジースポーツ」
並木:スポーツベッティングの傘下にあると言うか、ファンタジースポーツというのがありまして、これは皆さんご存じでしょうか。ファンタジースポーツというのは、ここに書いてある通り、アメリカでも市場が非常に大きくなっていて、このDRAFT KINGSは上場しています。上場しているということは、もう完全にベッティングではありません。ベッティングの場合は上場できませんので、まったく問題ないものです。これはどんなものかと言うと、要は「自分が監督だったとしたら、今日の試合、今日のプロ野球、明日のサッカーJリーグで誰が活躍すると思いますか」というのを予想して自分でチームをつくります。昔、ゲームで『サカつく』というのがありましたが、あのような感じで自分で架空のチームをつくります。チームをつくる際に、例えば10人選びましたと、その10人はエンジェルスから大谷を取ってもいいし、ニューヨークからアーロン・ジャッジを取ってもいいし、リーグをまたいで自分だけのオールスターチームをつくることができます。それがリアルの試合と完全に連動していて、試合が始まると自分のアプリ内でどんどん得点が溜まっていきます。そして、結果がランキングで表示されて「あなたは数万人中何位でした」と出てきます。これは圧倒的なファンの参加型コンテンツだと思っています。要は自分のチームを持つことができますので、今まではスポーツは受け身的に消費するものだったと思いますが、これを自分事化することによって圧倒的な当事者意識と熱狂が生まれて、完全に自分事化されるという特徴があります。これは勝てないのですよね。分かっているのに勝てなくて、選手の調子や対戦相手の情報など、そういったデータを見ないとなかなか勝てなくて、運では間違いなく勝てません。ですから、アメリカではデータ分析のゲームのような解釈を凡例でされていて、合法になっています。
上場企業もあります。左側にあるDRAFT KINGSは2020年コロナ禍において上場して、一時期時価総額が3兆円までいった企業です。また、右側にあるFANDUELはイギリスのFlutter Groupという企業の傘下に入りましたが、非常にここも盛り上がっています。アメリカでは、デイリーファンタジースポーツの分野ではここが2強になっています。主な投資家を見ていただくと分かる通り、メディア系の企業とスポーツ系の企業・団体に投資されています。
先ほど言ったように、自分たちのスポーツ団体や事業会社、メディア企業が投資して、シナジーを得てそれで大きくしていく。彼らのコンテンツをどんどん使ってもらって投資を回収していくというやり方ですので、なんでもドラフトもこういうかたちで進めていきたいなと考えております。ちょうどいい流れになりましたが、なんでもドラフトはここの領域で勝負している日本初のスタートアップになっております。
傍島:並木さん、ちょっと待ってもらってもいいですか。
並木:はい。
傍島:1つ1つ確認していったほうがいいと思います。小川さん、今、ファンタジースポーツのイメージはありますか。自分でチームをつくってという話ですが。
小川:いいえ。でも、すごく楽しそうだなと思います。これは日本からでも使えるというか、参加することはできるのでしょうか。
並木:非常に良い質問です。一切できませんね。
小川:やはり。(笑)
並木:ホームページにすら行けないですね。ブロックされてしまいます。
小川:なるほど。やはりそうなのですね。ではもう日本からは楽しめないということですね。
並木:はい。アメリカに降り立ったらできますけれども。
小川:分かりました。いつか行けたときに、ぜひチャレンジしたいです。
傍島:いえ、このあと説明がありますよ。だからこそなんでもドラフトがあるわけですよね?(笑)
並木:その通りです! ありがとうございます、傍島さん。
傍島:でもね、なかなかファンタジースポーツって、言葉を聞いたことある人はいるかもしれませんが、実際に触ったことがある人は少ないでしょうし、イメージが湧かない人も結構いるだろうと思いました。先ほどの話で、架空のチームも混ぜられますよね?
小川:すごいですよね。
傍島:ピッチャーなどいろいろなチームを混ぜて、実際の生のデータに紐付いているというのがものすごく面白いと思います。アメリカでは映画もありましたよね、スポーツはデータで勝負するというような。
小川:ありましたね。
傍島:ブラッド・ピットだったかな、映画がありましたよね。
小川:はい、出ていましたね。『マネー・ホール』でしたか、ありましたよね。
傍島:そうですね。だから、大好きですよね。
小川:そして、ご質問もいただいているようですが、今お聞きしてもよろしいでしょうか。
並木:大丈夫です。
小川:ありがとうございます。では、「番組を早送りする状況が顕著です。日本の若者がサッカーでさえゲーム時間が長いと思うようです。ゲーム時間の短縮をどう考えればよいでしょうか。視聴スタイルの変化」ということですが、どうでしょう?
並木:そうですね。僕はバスケット部だったのですが、結構、大学生インターンでバスケットをしていた後輩がいまして、先日、日本に帰ったときに高校のバスケット部の子たちと話をする機会がありました。その際、「NBAのバスケットの試合を通して見れるか」と10人ぐらいに聞いて、「見れる」と答えたは2人ぐらいしかいませんでした。だから、8人はもう見れないのですよね。
小川:まさに。
並木:僕が小さいときは全然見れたのですが、若い子はもう見れなくなって、「ハイライトだけでいいです」となっているのは間違いありません。試合時間の遅延化というのが問題になっているので、それでAIの審判を入れようとか、そうすることによって物議をかもすジャッジがなくなるよねというのはあります。しかし、その熱狂、要は「見れないよね」というのを「見れるようにする」のがまさにファンタジースポーツです。自分のチームがあると気になってしまいますよね。
小川:見てしまいます。
並木:気になって仕方なくて、見てしまいます。要は試合結果が10対0になったら野球は見ないですが、9回裏で。しかし、自分のチームの推しメンが9回裏にバッターとして立つ、大谷が立つとなったら最後まで見てしまいます。
小川:そうですね。気になってしまいます。
並木:気になってしまいますよね。ですから、ファンタジースポーツはやはりそこの突破口にもなり得るのではないかと思っています。
小川:なるほど。ありがとうございます。それでは、もう1つご質問をさせてください。「そもそも日本でスポーツスタートアップがあまり多く生まれていない気がします。VCもスポーツは儲からないと言い、スケールスピードが遅いため投資が進んでいない気がします。どのように思われますか」というご質問です。
並木:おっしゃる通り、日本のスポーツビジネスは、アメリカと比べても20~30年前はほぼ同じ規模の市場でしたが、そこから大きく差がついてしまったというのはあります。そこには放映権の金額が全然違うなどいろいろありますが、スポーツ業界において非常に難しいのは、みんなやはり変わらなければいけないというのは、日々われわれもスポーツチームさんと話していてひしひしと感じるところではありますが、変わるためのテクノロジーの導入にお金を払えないというところはあります。われわれ、なんでもドラフトでは、スタートアップとしてそういった企業に対してどうやってお金を還元できるのかというところも考えていかなければいけない課題だと思っています。
小川:ありがとうございます。
傍島:でも、日本とアメリカで若干のタイムラグというのは一般的にあると思います。特にアメリカのスポーツ球団はすごく営利団体だなと思うことが多いです。やはりお金を儲けて何とかしようというのがあって、お金を儲けること自体が、例えば子どもたちの環境が良くなったり、市場全体が広がる動きになっています。たぶん日本もあっとういう間にその流れが来るのではないかと個人的には楽観的に考えていたりします。特に今回並木さんが取り組まれていらっしゃるように、こういうものを日本に広めることによって、たぶん理解が進んでいろいろな市場が動くのではないかなと思います。
小川:ありがとうございました。それでは引き続き、並木さん、お願いいたします。
「なんでもドラフト」サービス紹介
並木:はい。最後に少し、僕の本業「なんでもドラフト」についてご紹介させてください。ファンタジースポーツとは言っていません。近未来を予想していくプラットフォームで、世界中のあらゆるものを予想して、いろいろな「好き」の入口をつくっていくようなサービスを提供していきます。具体的にはスポーツやエンタメのリアルイベントを「どうなるかな」と予想していく、そんなサービスを提供することでファンの熱狂を長くしたり深くしたりするというものです。
皆さんスポーツをイメージしていただきたいのですが、基本的にファンの熱狂というのはリアルイベントのときにものすごく上がって、あとは沈んでいるような状態です。けれども、なんでもドラフトは活躍する選手を予想したり、どうなっていくかを予想しなければいけませんので、試合前に選手のいろいろな情報に触れて試合前から熱狂が高まるという状態になります。自分の推しメンがいるので試合当日には熱狂がさらに深まりますし、試合後は自分がランキングでどうだった、友達と比較してどうだったということで試合の余韻が残って、熱狂が全体的に高くなっていく、そんなサービスです。
われわれはスポーツを3度楽しむ、あるいは3倍楽しむと言っています。本来は熱狂するところは試合中でしたが、それを試合前後にもさらに長くしていくというところです。要は試合前に活躍する選手を予想して、試合中は推しメンを応援して楽しんで、試合後はランキングになると。この流れは日本ならではだと思いますが、エンタメでもいけると考えています。面白い面白いで終わっていたお笑いが、例えばM1グランプリなどで数値化されることによって、面白いが数値になり、そこで予想の結果が反映されることになるので、誰が面白いかというのが数値で分かります。面白い芸人を選んで、試合中は自分の推しメンを応援して、試合後にどうなったかという、ここは特許を取っております。
現行のサービスはこのような感じになっております。なんでもドラフトという名前の由来はいろいろなコンテンツを予想してほしい、ドラフトしてほしいというものですので、左側にあるように、1つのプラットフォームにいろいろなコンテンツを乗せています。そこで自分の興味のあるものを選択して、あとは先ほどお伝えしたようなかたちで予想していきます。全て自分たちで面白くなるようなルールを考えて展開しております。
世の中にあふれるあらゆる結果は、例えば「西武が昨日4対2だったよね」と言われると、「ふーん」で終わってしまいます。でも、西武とソフトバンクの試合でどうなるかなと自分で予想していると、その4対2の試合のどこで得点が生まれて、どこで逆転があって、誰がヒットを打ってというのがすごく気になっていくということで、能動的にどんどんコンテンツを消費していただきたいなと。そうすることで毎日がどんどん楽しくなっていくのではないかなと思っています。圧倒的な当事者意識と結果に対する興味も上がりますし、何よりも接触時間が非常に増幅されます。われわれのサービスを使っていただくと、スポーツの視聴が3倍ぐらいに増幅されるというデータも出ています。そのため、メディア企業さんとも非常に相性がいいのではないかと考えています。
ギャンブル以外の楽しみ
そもそも、アメリカでファンタジースポーツがなぜこんなに行われているのか、「なぜみんなしているの?」という利用目的についての調査によると、トップ3がコミュニケーション、友達と共通の話題になるとか、要はそもそも予想することでスポーツ観戦が圧倒的に面白くなるとか、そういったところです。お金によるモチベーションというのが下位2割だと言われていて、8割の人の人が換金していないというデータもあります。そのため、換金の部分を取り除いて、要はギャンブルになり得るようなところを完全に排除して日本で展開するというのは期待が持てると考えており、われわれが取り組んでいることです。完全に非賭博のモデルで展開して、どのようにして展開していくのかというビジネスモデルも、TMIさんという非常にスポーツエンタメ業界に明るい顧問弁護士さんと一緒につくって、意見書も出していただいています。
僕たちが非賭博で行いたい理由は、スポーツ賭博が将来的に解禁されたとしても、日本人はどちらかと言うとネガティブな感情がかなりあると思っています。ですから、「明日から解禁になります」と言われても、多くの人は「よし、じゃあ、明日からスポーツギャンブルしよう」とか、「僕の趣味はスポーツギャンブルだと子どもに言えない」とか、そういうのは変わらないと思っています。そこはやはり法人や事業会社、そしてスポーツ団体も変わらないと思います。結局いかにクリーンに取り組んでいるかというところが日本では非常に価値になってきます。将来的にスケールさせるためにはそれがすごく重要です。そして、子どもたちにも楽しんでもらいたいと僕たちは思っていますので、完全にこのモデルで進めていきたいと考えています。この信念があるので、やはり非常に多くのスポーツ団体さんに共感していただいています。今だいたい50社を超えるスポーツチームさんと提携させていただいていて、なんでもドラフトを実際に使ってもらって、彼らのファンやサポーターコミュニティに熱狂を届けています。
少し細かくなりますが、なんでもドラフトの特徴はこういったところがあります。事例でもご紹介させていただきたいと思います。先ほどお伝えしたように、イノベーションリーグに採択されたり、日経トレンディが「将来来る」と予想している40の領域にファンタジースポーツが入ってきて、そのうちの2社になんでもドラフトが入ったり、元メジャーリーガーの上原浩治さんなど著名なスポーツプレイヤーにアンバサダーになっていただいたりしています。サービスローンチしたのは今年のゴールデンウイークですが、BリーグさんやXリーグさん、Jリーグのコンサドーレ札幌さんなど非常に多くのところと実際に取り組ませていただいております。
左下は実際にブースを出させてもらって、会場に行ってなんでもドラフトを楽しんでもらったときの様子です。ハンドボールを見にきてくれたお客様に楽しんでもらって、最終的にハンドボールのチームからなんでもドラフト優勝の人に対してはサイン入りグッズを贈呈しました。そうすると非常にファンが喜んでくれるところがありますので、それを完全にパッケージにしてお送りしているのがなんでもドラフトです。ユーザーもいろいろな方に楽しんでいただいて、ツイートでも盛り上がって、「ものすごくうれしいです」とか、「これを家宝にします」とか、「俺の予想はこれだ」というようなことを皆さんバイラルで行っていただいているというのがなんでもドラフトの今までの実績です。
1つユニークな特徴としては、われわれがユーザーに対して何をお返しするか、要はスポーツ観戦が楽しくなって、ランキングで上位に行きたいという、いわゆるソーシャルゲームのようなところももちろんありますが、スポーツチームさんと提携させてもらっているとき、あるいは事業会社さんと提携させてもらっているときは、そこから協賛で得たグッズをユーザーさんにお返ししています。例えば、コンサドーレ札幌さんの場合、スタメンになった選手全員のサイン入り色紙が毎回当たるようになっていたり、スポンサー企業さん、われわれのコミュニティにアクセスしたい方々や自分たちの露出を高めたい方々からグッズを提供していただいたりしています。また、「廃棄を熱狂に変える」というところで、われわれはSDGsの団体にも属しています。要は要らなくなったプロダクトがありますよね。使えなくなってしまったものや、売れないけれども使える、優勝しなかった巨人の優勝グッズをどうしようというような。そういった倉庫で眠っている売れない商品をなんでもドラフトに寄付いただきたく、今日ご参加いただいている方々には、ぜひそこをお力添えいただけるとうれしいなと考えております。「廃棄を熱狂に」というところで取り組んでおります。
スポンサーシップとの親和性
並木:結構、残り時間が少なくなってきてしまいましたが、駆け足でお話させていただきたいのが、スポンサーシップとの親和性というところです。なんでもドラフトを通じて自社のプロダクトをマーケティングして、自分たちのプロダクトをユーザーに伝えていくという、そんな取り組みをしております。例えば、外野にある広告に数千万掛けるよりも、あの場所はなかなか見られないと言われていますので、そこよりもなんでもドラフトのプラットフォームで直接ユーザーとタッチポイントが持てて、ユーザーの動向が見えるようになるのです。要はこの野球のドラフトで「最初にヒットを打つのは誰?」とか、「チームホームラン何本だと思う?」というところに、「今飲みたいビールは何?」とアサヒさんのビールを並べることで、「野球ユーザーがどんなビールを試合中に飲みたいのか」というデータが取れます。
これは実際の例です。サンリオさんが冠のゴルフのイベントが開催されました。サンリオさんの人気キャラクターがありますよね。なんでもドラフトで「どんなゴルファーが活躍すると思いますか」など質問を聞いていき、6つ目の質問に「好きなサンリオキャラクターは誰ですか」と聞いたら、サンリオさんが独自でやられているキャラクターランキングと大幅に違うランキング結果が出ました。要はゴルファーが好きなサンリオキャラクターはこれだと。ケロケロけろっぴが結構人気だったのですが、ケロケロけろっぴはゴルフグッズをまだ展開していないからしたほうがいいのではないかと、そういうデータが取れました。
小川:(笑)面白いですね。
並木:はい。ここもご興味のある方は協業のお話お待ちしております。最後になりますが、アポ依頼をどしどし受け付けております。なんでもドラフトとの協業だけでなく、SportsTechの領域全般お話できますし、スポーツ事業、スポンサーシップなど幅広い内容でお話させていただけると非常にうれしいです。必ずお力になれると思っておりますので、メールアドレス:keigo.namiki (at) nandora.netまで、ぜひお願いします。
最後に
並木:今日お話したようなことを700ページぐらいのレポートにしたりと、かなりリサーチャーも抱えて取り組んでいるのがわれわれでございます。新しいトレンドやモノを新しくつくる、そういったところの情報を共有しているようなサービスも展開しております。具体的には世界中のスタートアップの情報を集めて、それを情報としてお届けしたり、毎日毎日僕たちが興味のあったニュースに関して解説してYouTube配信したりといったこともしています。「シリコンバレーで何が起きているの?」「世界で何が起きているの?」「新しいテクノロジーは何なの?」といったところを独自でシリコンバレーからお伝えするという、事業開発・経営企画観点でもありますが、ここはスポーツだけでなく、非常に幅広いところでお力になれるところがあるのではないかなと思っております。今日の話で幅広くシリコンバレーの話を聞きたいという方は、ぜひこちらのほうもアンケートでお答えいただくか、あるいはこちらのメールアドレス:keigo.namiki (at) nandora.netまでご連絡いただけると非常に幸いでございます。
小川:ありがとうございました。あっという間ですが、お時間となってしまいました。本日の01 Expert Pitchは以上をもちまして終了となります。並木さん、傍島さん、本日は誠にありがとうございました。
傍島:ありがとうございました。
並木:どうもありがとうございました。
小川:そして、最後までご視聴いただいた皆様もありがとうございました。またぜひ次回ご参加いただけますと幸いです。それでは、さようなら。
以上