01 Expert Pitch #27

Globalizing Lifestyle Innovation Businesses


01 Expert Pitch #27

Globalizing Lifestyle Innovation Businesses


2023.9.26 TUE 12:00-13:00 JST
Namiko Kajiwara, Founder & CEO at Seasons of Life
日本と文化が異なる米国では、消費者行動の理解が重要です。 また、一括りで捉えることが難しい市場だからこそ、 文化的な背景や価値観の推移を押さえることが重要です。 今回のウェビナーでは、 日米両方の市場のBtoC事業で活躍されている梶原奈美子氏をお迎えして、グローバルで戦えるライフスタイル事業の作り方、 米国進出について解説していただきます。

▼ こんな方にオススメ

  • グローバルに活躍したいスタートアップ、日系企業の方
  • アメリカで事業展開を考えている方
  • 世界における最新の取組み状況と未来を知りたい方

▼ 登壇者
梶原 奈美子氏:Seasons of Life, Founder & CEO
兵庫県生まれ。2004年にユニリーバ入社、 2006年にキリンビールに転職。 2013年にスタンフォード大学MBA取得のため渡米。 2015年より日米VCのWiLでPartnerとしてイノベー ション支援を行った後、 2021年より日本のお菓子や工芸品をサブスクリプションや越境 ECで販売するBokksuに入社。VP of Productとして、 二つの新規事業を含む五つの事業を日米両チームを率いて統括した 。代表的なプロジェクトとして、2009年世界初、 アルコール0.00%「キリンフリー」上市。 WiL在籍時の米国進出支援プロジェクトとして「 Stonemill Matcha」「ANA Air Restaurant」等。2021年「Bokksu Market」、2023年「Hello Kitty Bokksu Subscription Box」上市。「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2010」受賞。 2019年Stanford大学d.schoolゲスト講師。


小川:皆様、こんにちは。お待たせいたしました。本日はご参加いただきまして、誠にありがとうございます。それでは、12時になりましたので、01 Expert Pitch第27回を始めてまいります。「シリコンバレー発!世界のエキスパートが最新情報を日本語で解説!」ということで、本日は『世界で戦えるライフスタイル・イノベーションの事業化』をお送りいたします。

さて、今回はSeasons of Life, Founder & CEO 梶原 奈美子さんをエキスパートとしてお迎えしております。梶原さん、本日はどうぞよろしくお願いいたします。

梶原:よろしくお願いいたします。

小川:そして、本イベントの主催者であるTomorrow Access, Founder & CEO 傍島さん、よろしくお願いいたします。

傍島:よろしくお願いいたします。

小川:そして、私は本日のナビゲーターを務めてまいります、フリーアナウンサーの小川りかこと申します。どうぞよろしくお願いいたします。

それでは早速ですが傍島さん、この01 Expert Pitchの狙いなどを少しお話いただけますでしょうか。

01 Expert Pitchとは?

傍島:はい。あらためまして、Tomorrow Accessの傍島と申します。よろしくお願いいたします。Tomorrow Accessという会社は、シリコンバレーを拠点にしたコンサルティング会社です。この01 Expert Pitchはもう2年経つということで、今回は梶原さんをお迎えして、非常に楽しみにしてきました。

ウェビナーの狙いは3つあります。まず1つ目は日本とアメリカの情報格差の解消ということです。おそらく梶原さんもたくさんの日本の企業の方やスタートアップの方から、「アメリカは今どうなっていますか」「シリコンバレーはどうなっていますか」「ニューヨークはどうなっていますか」というお話をよく聞くと思います。そういったところに対して迅速に情報をお届けして、日本とアメリカの情報格差を埋めたいというのが1つ目の狙いです。

2つ目は正しい情報をお届けしたいということです。同じニュースでも、アメリカで見ているニュースに対する温度感と、日本語でメディアなどを通じて届いたニュースの温度感で、たまに違うなと感じることがあります。そういったときに、今回もご登壇いただいている梶原さんのように、エキスパートの方にきちんと解説をしていただいて、このニュースはこのように見るのですよといったところをお伝えしたいというのが2つ目の狙いです。

3つ目は日本語の解説ということです。アメリカの英語の情報を皆さんがご自身で取ることももちろんできますが、なかなか大変ですので、きちんと日本語でお届けしたいと、この3つの狙いでウェビナーを進めております。

今日は、梶原さんはニューヨークからということで、今は夜中で非常に申し訳なかったのですが、快く出ていただけるということで非常に楽しみにしてまいりました。よろしくお願いいたします。

梶原:よろしくお願いします。

小川:本日のイベントでは、皆様からのご質問を随時受け付けて進行を進めてまいります。参加者の皆様、ぜひ梶原さんにご質問のある方は、Zoom画面の下にございますQ&Aボタンから質問をお寄せください。随時、私のほうでご紹介してまいりますので、よろしくお願いいたします。

それでは梶原さん、お待たせいたしました。ぜひスライドを使って、簡単に自己紹介から始めていただけますでしょうか。

梶原:よろしくお願いします。

小川:お願いします。

梶原 奈美子氏プロフィール

梶原:梶原 奈美子と申します。私は、最近までBokksuという越境ECの会社におりまして、アメリカ自体は全体で10年になります。キャリア全体は20年になりますので、日本で10年、そしてアメリカで10年という、日米半々のキャリアになっております。

日本にいたときは、ユニリーバやキリンでブランドマーケティングや商品開発をしておりました。日本にいたときに一番大きな仕事だったのは、世界初アルコール0.00%のキリンフリーの開発です。こういった食品にもイノベーションがあるのだと、これをもっと世界レベルでやってみたいなという思いがありまして、2013年にスタンフォード大学のMBAで渡米したのが私のアメリカ生活のきっかけでした。在学中にBlue Bottle Coffeeの日本進出も手伝い、卒業後はWiLという会社で、おそらくここにいらっしゃる方はご存じの方も多いと思いますが、日本とアメリカの架け橋となるベンチャー・キャピタル・ファンドのWiLで、食品や化粧品といったライフスタイル系のイノベーションを担当しながら、日本の大企業さんの企業変革やイノベーション支援をしていました。個別で案件もありましたが、それは次のスライドで紹介したいと思います。

個人的には、ユニリーバに入ったときから、これから日本は外に出ていかなければいけなくなるだろう、西洋のものを日本に入れていくという時代はおそらくもう終わったと、私は思っていました。今はどんどんデジタルなどを入れていかないといけないので、また別な方向から入れていかなければいけないなと、人生長くいないと分からないこともたくさんありますが。(笑)ライフスタイルで言いますと、これからはアジアや日本の素晴らしいものが外に出ていく時代だと思って、そこでキリンに転職して、ずっとその一貫した思いで今までやってきています。この6月にBokksuを退社しまして、これからは本当に自分がやりたかったことを、いろいろな方と、自分自身の軸でやっていきたいなという思いで、このSeasons of Lifeを設立いたしました。

これが過去のプロジェクトです。Blue Bottle Coffeeの日本展開、ここも中に入っておこないました。直近ではこういうサードウェーブのような、どういうところがお客様にヒットしているのか、どこが日米リンクしているのか、といったことも手掛けました。

Stonemill Matchaというのは、サントリーさんと一緒におこなったプロジェクトです。私のモット―は、別にアメリカに日本をつくりたいわけではなく、アメリカの人が日本的なものを日常的にもっとデイリーで楽しんでもらうものをつくりたいと思っています。その思いでこのJapanese-Californian Matcha CaféをつくったのがStonemill Matchaになります。中に入ると、日本の人はおそらく懐かしくて新しい感じがすごくすると思います。日本らしさとカリフォルニアらしさを両方併せ持っていますので、カリフォルニアの人が来るとほっとするけれどもまた新しいというような、そこの間を狙ったブランディングという感じです。

Air Restaurantは、日本のシェフの方がこちらに出てくるときに、おいしさの感覚がやはり結構違います。例えばキュウリですと、日本人はキュウリの皮のところが好きですが、アメリカ人はキュウリの中のキュウリ臭い味が好きなのです。

傍島:(笑)

梶原:そういうことはご存じない方が多いと思いますが、そういうことをPop-upで知ってもらうというコンセプトでおこなったのがAir Restaurantというグローバルのシェフコラボレーションになります。

Bokksuでは、越境ECから、サブスクリプションから、日本でOEMをしてこちらに持ってくるということもしました。アジア食全体も扱っておりましたので、アジアに関する食品のほぼすべての形態のビジネスを手掛けたという感じになっております。

傍島:すごいですよね。大手企業をはじめとして、誰もが知っている会社の商品ですね。加えて、コーヒーやスタートアップなど多彩ですよね。しかも、日本とアメリカです。これはすごいと思います。先ほどのStonemill Matchaの話も面白いですね。同じものですが、日本のものをローカライズしたり、アメリカのものを和にもして、両方に通じるというのは私はすごく分かります。今日はこのあとそういったお話があるのですごく楽しみです。

巨大市場アメリカ

梶原:今日はシリコンバレー系の話など、そういうのを知りたい人もいると思いますが、私はシリコンバレーに8年いて、ニューヨークは丸2年になりますので、街の違いなど、もしそういうのもご質問があれば、西と東の違いについてもお話できるかなと思います。

では早速、本題に入っていきたいと思います。アメリカは、皆様もどれぐらい大きいかというのはよくご存じだと思いますが、例えば日本のイオンの年間売上はUSドルで言うと83Billionぐらいです。

傍島:いくらですか。(笑)

梶原:(笑)Billion。

小川:分からないです。(笑)

傍島:1ドル…。

梶原:これはもう、1ドルは今、これは…。

傍島:1ドル100円だとして8兆円。1ドル150円ですので、イオンさんの売上は12~13兆円ですね。Billionと言われてもよく分からないですね。(笑)

小川:はい。(笑)

梶原:そう。Walmartにいくと、これがもう4倍ありますよね。Targetすら同じぐらい、もう少し上です。Costcoに入るとすごくいいですよ。ですから、アメリカに来るときに、もちろんDtoCで入るのが一番簡単ですので、DtoC、オンラインで入る人というのも多いのですけれども、今、実はアメリカのDtoCの会社はオンラインの限界をすぐに超えてしまいますので、とにかくこのリテールに入ろうということで戦略を組まれている会社さんがすごく多いです。もちろんEコマース自体もすごく大きな金額なのは言うまでもありませんが。とにかくアメリカというのは、例えば1つリテールが決まるとものすごい金額になると、コンテナが出るというような莫大な市場になっています。

日本とは違うところが、セミナーの説明にもありましたが、とにかくひとくくりにできないというのがアメリカのすごく面白いところです。エリアも大きく分けると都市エリアと真ん中に分かれます。でも、その都市エリアも東と西でやはり少し違います。それから、大きなところで言うと人種ですよね。どの人種を狙っていくのか。人種で切りたくないという場合ももちろんありますが、人種の構成自体も変わっているという認識が結構日本人には欠けていることがあります。特に街ベース、デモグラベース、世代別で見ると、若い人たちになればなるほどより多様な人種構成になっていますので、そういうことも頭の中に入っていると、よりいろいろなマーケティングプランやブランディングがしやすくなるかなと思います。世代で言うと、やはり日本よりも若い人が多いです。日本でこういう消費財の仕事をしていると、どうしても今は45歳以上ぐらいになんとなく頭がセットされています。そこがマスゾーンですので、そこにつくるということをしがちですが、アメリカは若い人がいますので、その若い人をどうやって取り込んでいくかというのが、常にこういった消費財メーカーのライフスタイルブランドの大事なところになります。

いつも質問を受けるのは、「どこから何をしたらいいのですか」ということです。それももちろんすごく大事で、最終的にはそこにたどり着くのですが、そこばかりにとらわれていると、「白人ウケするものをつくろう」「ニューヨークウケするものをつくろう」という感じになっていき、どんどん細分化されて、それは大きくなるのかという疑問がおそらく生まれてくるのです。そうなったときの考え方のヒントを今日お話できたらなと思っています。

傍島:面白いですね。日本では人種のところがほぼ100%、90何%が日本人と1つしかないわけですからね。

小川:確かに。

傍島:デモグラのところも真ん中が太った、40~50歳のところが太った絵ですしね。

小川:全然違いますよね。

傍島:全然違いますね。

最も失敗するタイプの発言

梶原:全然違いますね。本当に世代の上と下で全然白人の比率が違います。そこも結構面白いところだと思いますね。ですから、下の世代に行けば行くほどダイバーシティの意識が強いです。ダイバーシティの意識が強いとどういう消費行動になるかと言いますと、例えば化粧品の場合は、有色人種の人たちがより自分らしいものを求める行動を自然としやすくなったり、そういうものをより求めていったり、そういう行動に変わっていきます。そういうところにも着目しておいたほうがいいというのはあるかなと思います。

そんなアメリカですが、私がお客様とお話するときに「これか!」という、いつものパターンがあります。日本はものすごく素晴らしいです。アメリカに10年住んで本当に思います。日本というのは本当に生活して素晴らしい国です。それで、「日本の素晴らしさでアメリカを変えたい」とみんな思うのです。私も実はこっそり思っています。思っていたのですが、これをすると駄目ですよというのを今日伝えたいです。

それはなぜかと言いますと、これはいわゆるプロダクトドリブンの発想です。こう言うと、みんな「確かにそうですね」となります。アメリカ人はアメリカ人というひとくくりにはできませんが、アメリカに住んでいる人にはやはりその人なりのペースや、その人たちが今満足している生活というものがあるのです。どれだけ日本のものが素晴らしくても、やはりライフスタイル商品は寄り添わないと売れません。10歩先のものは売りにくくて、テクノロジーは10歩先のほうが売れると思いますが、ライフスタイル商品というのは先過ぎると売れないのです。いきなり「肉やめよう」と言われても難しいわけですよね。やはり自分のライフに関わることですから。ということで、とにかくよくある失敗パターンはそういう感じで「日本でアメリカを変える」というプロダクトドリブンのパターンは危険です。素晴らしい商品なのはもちろん大事なことです。でも、やはり最終消費者を見ることや、プロダクトマーケットフィット、ユーザーニーズをとにかく確認することはすごく大事なステップです。もう1つ注意点があります。これもおそらくテックプロダクトにもよくあると思いますが、展示会に行ってニーズを確かめるパターン、これはすごく危険です。あの人たちは生活者ではありませんので。

傍島:あるある。(笑)

梶原:あるあるですよね。展示会は特にやった感はありますし、いろいろそこでプロっぽい人がすごくたくさんフィードバックをくれると思います。それも間違いではないのですが、とにかく最終消費者を見ないとライフスタイルビジネスというのは基本的に間違うことが多いので、それも気を付けましょう。今、日本からも本当にいろいろなツールがありますので、すぐにお客様と話せます。

もう1つは、日本というのは、生活面で言いますとアメリカよりも結構進んでいることが多かったりもするのです。もちろん遅れていることもありますが、文化的には進んでいて、文化は1000年2000年という単位で進んでいます。アメリカの人はシンプルな生活をしています。ですから、高度な商品をすぐ投入してしまうというところもありまして、やはり生活の変化というのはすごくゆっくりですので、市場投入にいいタイミングなのか、そういう環境分析は非常に重要かなと思います。

最後は、見落としがちな組織運営の部分です。ライフスタイルビジネス、例えばユニリーバやP&Gを見ていただけたら分かると思いますが、最終的には現地の人を従業員としてどれだけ取り込めるかというのはすごく重要です。やはりその人たちの感覚を取り込んでいかなければいけないからです。日本人だけで、日本流のビジネスで、特に給与や昇進をその周りで固めてしまうと、中で現地の人が昇進できない、給料はアメリカの給料より悪いとなってしまいます。そうなると、やはり定着しないわけです。もちろん現地でどれぐらい大きくしたいかにもよりますが、現地でとにかく大きくしたいというタイプの会社さんは、最初から組織設計、コンペンセーション設計もしっかりされたほうがいいと思います。Organizationというのはそういう部分ですが、今日はユーザーのところにフォーカスしたお話をこれからしようと思います。

傍島:これはよく分かります。私もよく相談を受けます。今、コンサルティングをやっていますから、「アメリカに行きたいのですが」と言って、先ほどの1枚前のスライドにあったような、「日本のいいものをアメリカになんとかしたいのです」という、意気込みはもちろんすごく分かるのですが、まさにこういう発言はよくあります。先ほどプロダクトドリブンという話が出ましたが、2~3回前のウェビナーでも、ロサンゼルスの三木アリッサさんがおっしゃっていた話で、和菓子をアメリカに売っていくときに、和のいいところで売っていってもやはり駄目で、アメリカ人が喜びそうなものにかたちを変えないと駄目だよということをおっしゃった回がありました。お菓子のジュエリーか何かときに。

小川:はい、ジュエリーボックスのときです。

傍島:そういう話もありましたし。タイミングも、先ほどのお話はよく分かりました。シンプルに生きているなというのはあります。アメリカの人は、例えば日本のウォシュレットは使えないですよね。

梶原:そうですよね。

傍島:ボタンが多過ぎて「これは何だろう?」というのは、よくある話ですよね。よかれと思っていろいろなものがついていても、使えない人が多いですしね。組織の話も本当によくあって、アメリカに行きたいのなら、アメリカの人が採用しないと、なかなか日本人のコミュニティで日本人がアメリカの人を採用するのは難易度が高いです。給与の体制もそうですし、やはりローカルの人にきちんと頼ってやっていくというのはすごく大事なことです。本当によくあるお話ですので、私はすごく肌感があります。

小川:なるほど。さて、ウェビナーでは皆様からのQ&Aを募集しております。皆様ぜひ下のQ&Aボタンからご質問をお寄せください。それでは引き続き、梶原さん、お願いいたします。

ユーザーの生活の課題を解決する

梶原:では、一番大事なユーザーの生活の課題を解決するという、これは私のすごく得意なところですが、それを少しお話したいと思います。本当にいろいろなユーザーがいて、「どうしたらいいのですか」「どこに取っ掛かりをつくればいいのですか」と聞かれます。日本の場合はデモグラですぐ切って、そこにあてて商品をつくるという開発体系で、ほとんどの会社ではそういう開発をされているところが多いと思います。ですから、それがすごく複雑になると、どうしたらいいのか分からなくなるというのが結構あると思います。でも、やはりヒントがあります。海外向けの商品開発やローカライゼーションは、当たり前ですが、アメリカの消費者の課題を解決する、アメリアの流通形態に合った商品にしないといけません。商品を開発するときに少し抜けがちなのが、ユーザーに向けてもちろん商品をつくるのはすごく大事ですが、先ほどお話したように、例えば最終的にリテールに出していきたいというときは、「Walmartの納品形態は何ですか」「Whole Foodsの納品形態は何ですか」「OKな素材は何ですか」というようなところまでインクルードして開発しておかないと、「賞味期限がすごく足りなかった」「カートのサイズを間違えた」など、そういうことがあってつくり直しになることがあります。私もサイズをつくり直したことがあります。

傍島:ありますね。

梶原:あと、このエリアだとこの価格レンジに入っていないと採用にもならないということもあります。

傍島:そうですね。あります。

梶原:基本の「き」ですが、どうしても抜けがちです。お客様を見てつくろうと思うのですが、お客様を見てつくったあとに、その形態をもう一度、流通を見て、EコマースはEコマースで、フォーマットや買いやすさ、値段などもありますので、とにかく流通に合わせたアジャストメントをするというのがすごく大事なことですよというのがこのスライドの話です。

小川:いろいろ下調べがやはり必要なのですね。

梶原:そうですね。これは自分で調べるとすごく面倒くさかったり、大変だったりしますので。

小川:確かに。

大きな流れを捉えること

梶原:しかも、別に全部にアダプトする必要はないのです。別に最初から海外に行かなければいけないわけでもないですし、最初からWhole FoodsやCostcoに行かなければいけないわけでもないので、最初から完璧を目指さなくていいというのもアメリカのマーケットのいいところです。ですから、もうすでに知っている人を上手に活用して、「私の商品は、もしリテールに行くのだったら、どの順番で何を狙ったらいいですか」という質問をして、「おそらくこの順番ですよ」と言われて自分で納得したら、「では、これぐらいまでのことを考えておこうかな」という感じで、最初からすべて10年後に爆売れする商品を今つくるということを考えなくても大丈夫です。

すごくいろいろなことが起きます。デモグラがたくさんありますし、都市も違いますし、流通によっても言うことが全然違いますので、取っ掛かりがとにかく難しいなと思う人が多いです。「どうしたらいいのですか」と少しロストしてしまいます。基本的に、海外に展開する、アメリカに来るということは、「アメリカの市場において、皆さんの商品というのはイノベーションにならなければいけない」という意識を持たなければいけません。日本だとわりと普通に売っているメインストリームの商品であっても、アメリカに来て新しい商品で入るということは、それはもうイノベーションとして入るしかないのです。「これをいきなりメインストリームにします」と言っても、メインストリームにはならないので、イノベーションのやり方が実は海外展開にも使えますよということです。少し分かりにくいでしょうか。要は、どれだけ日本でレジェンドな商品だったとしても、アメリカにこれがなければあなたは新参者ですので、ニューカマーとしてイノベーションとしての成功方程式にあてはめていって、アジャストメントもするし、売り方も考えていきますよということです。ということは、何がすごく大事なのかと言いますと、大きな意識の流れを捉えるということがすごく大事です。キリンフリーにしても、例えばBokksuにしても、大きな意識の流れを捉えています。この10年で、例えばノンアルコールは世界的な流れになりましたよね。Bokksuも、今は確か8年目ぐらいですけれども、やはりアジアフード、アジアのものが人気になってきているという、ファウンダー本人はどちらかと言うと自分の趣味でやっていますが、大きな流れの中でよりダイバーシティになってきているというところの流れを捉えているわけです。

そういうのがいくつかあります。例えば業界の流れです。これは日本でも同じだと思いますが、その業界でどのようなイノベーションが必要とされているか、流通の観点など、伸びているマーケットにもっと商品を出したいのに、このコーナーにもっと商品を置きたいのにありませんというのがありますよね。それから、チャレンジャーブランドとアメリカでは呼んでいますが、新しくて既存のものからマーケットシェアを獲るようなチャレンジャーブランド、そういうのが必要とされているエリアがアメリカには必ずあります。アメリカは何でも新しくしよう、良くしようという意識がありますので、どの流通さんも、そしてお客様自体も、とにかく改善の意識が強いので、こういう流れ、業界の流れをまず知るというのはすごく大事です。

価値観の流れ、世代・デモグラの流れを捉える

梶原:次に大事なのは、消費者の価値観の変遷です。日本も、ゆっくりですが、昔に比べると変わったことはありますよね。例えば運動も、今は筋トレがすごく大事と言われています。私が若いときはメタボという言葉が初めて出てきたとき、要は健康志向が始まったぐらいのときでした。それが健康志向の始まりで、アルコール忌避が始まって、ノンアルコールが生まれてといった流れになっていくわけです。そのお客様の価値観の変遷のようなものがアメリカでもあります。例えば、簡単に言いますと健康志向のようなものですが、既存の商品で満たされていないような、機能的ニーズももちろんですが、心理的なニーズ、私をこうしてほしい、化粧品などでよくあるものですね、そういうものは何なのかというのを少し考えてみます。

それから、これが実は日本にいると感じにくいのですが、世代デモグラの流れです。先ほど言った人種構成の変動や、より若い人が来ることによる変化があります。もう今、こちらでは、Gen Z、Gen Z、Gen Zよりも若い人、そういう話ばかりですけれども、その機会点をみんな探しているから、そういう話がメディアでも行われるわけです。

この大きな意識の流れさえ捉えていれば、これが大きな意識になるまでには、小さいイノベーションや小さい変化というのがすごくたくさんあって、それがうねりになって大きくなっていくのですが、この小さいうねりでビジネスをしようとすると、これが終わったら終わります。日本でいつも食べているティラミスのような感じですよね。ティラミスは一瞬で終わるかもしれませんが、海外スイーツとなると、もしかしたらずっと大きな流れかもしれないというようなことです。その大きな意識の流れといったものがアメリカにもありますので、そういうのに合わせてイノベーションのように海外展開をしていくことで、皆さんがティラミスになることを避けましょうと、そういう話です。

傍島:このスライドいいですよね。私も最近勉強したと言いますか、知り合いに教えてもらったのですが、先ほどの人種のグラフがありましたよね、白人が6割ぐらいだったかな、あとはほかの人種というのがありました。あれはやはり今の流れでいくと白人がどんどん減っていくらしいですね。ですから、アメリカは政治の流れまでそこがあるようで、トランプさんとバイデンさんのところで、「白人が減っていくから、白人の人は困るだろう、生きにくくなるだろう、だから、こうなのだ」という、すごく大きな流れがあったりするらしくて、この人たちはそんなことを考えているのかと思いながら、最近そういう話を聞いたことがあります。日本は人口が減っていくと言われていますので、その中で赤ちゃん向けの商品をやるのはどんな意義を持って何をもってやるのかといったところがね、分かり切っているところかもしれませんが、特にアメリカに来る場合は、すごく大きな流れを取っていくというのはすごく大事ですよね。

梶原:そうだと思います。こういうのは長く住んでいる人、私がシリコンバレーに来たときに、10年いて入り口ですと、15年かけてようやく地元という感じのことを言われました。でも、それは10年いて、そうかなと思いました。

傍島:そうですよね。分からないですよね、やはり10年単位ぐらいで見ないとね。1シーズンは分かりますが、10年ぐらいの流れで見ないと分からないですよね。

食品業界の事例

梶原:はい。ということで、今日は食品業界の事例を使って大きな流れというのは何があるのかというお話をしようかなと思います。この10年で起きたことをまず話したいと思います。私が来たのが2013年ぐらいですが、そのときに何があったかと言いますと、私が来たときは、実はタクシーを電話で呼んでいたのです。信じられないと思いますが、2013年は電話で呼んでいました。それで、なかなか来なくて、電話をすると「今出ました」というような、出前のそばのような感じですよね。それの3カ月後ぐらいにビジネススクールが始まって、「Uberというアプリがあるらしい。これは最初ただで乗れて(フリーのものがすごく多かったので)、しかもタクシーより安くて、どこにいるか分かって正確だ」と、1回使って、もう二度とタクシーは使わないと、これはもう本当にタクシーはつぶれると思いました。そしたら、本当につぶれました。(笑)サンフランシスコに限ってですが。ニューヨークは全然まだ走っていますが、サンフランシスコはつぶれました。

おそらく2010年ぐらいというのは、コンシューマーのライフスタイルがどんどん変わったと思います。Airbnbなど、シリコンバレーにもそういうイノベーションがすごくたくさん起こりました。食品のほうも結構オーガニックの波がすごく出てきた時期でして、人工肉、代替プロテインと呼ばれるものも、私がキャンパスに来たときに食品オタクの人だけが知っているイノベーションとして存在していましたので、それぐらいからようやく始まりました。今は代替肉は終わったと言われていますので、ちょうど10年ぐらいですよね。すごく盛り上がって「ビル・ゲイツ!」などと言われていましたが、やはりみんな人工肉食べなかったねというのが実はありました。(笑)

傍島:ありましたね、いろいろ。(笑)

梶原:ビーガンも減りました。ビーガンも、2017年2018年ぐらいに「ビーガン、もう次世代はこれだ」とものすごく言われていましたが、「あれ?ビーガンの人すごく減ったね」「やはりビーガンは無理だ」と、今はそういう感じになっています。その代わりに出てきたのが、例えばヘルスケアです。これは結構ネスレが頑張って投資していますよね。それから、Gen Z系ですね。Gen Z系は結構今はどんどん、もっといろいろなクレイジーなものが出てきています。あとはサステナ観点ですよね。海藻などいろいろなイノベーションが出てきています。こういう感じでいういろいろな波があったかなと思います。やはりコロナ前・コロナ中・コロナ後という感じで3つぐらい、10年あったかなと思っています。

アメリカの食は進化している

梶原:超初心者の話で言いますと、アメリカの食は進化しているのです。でも、本当にこれを言うと「えっ?」と言う人もいますので、一応スライドを入れました。大きな流れ、これはもう変わらないです。みんな、アメリカは左のような食品をイメージしてきます。真ん中のエリアは左のイメージです。でも、都市部に行くと右のイメージです。日本よりも正直トレーサビリティもある食品を使っていたり、健康的なメニュー、例えばピザでもブロッコリーのピザがあったりして、本当に健康、オーガニックなものになっています。アメリカ人は、こうなると全部すごくこうなりますので、レストランがどんどん進化し続けています。その中でいろいろなイノベーションが生まれているという感じですね。

傍島:確かにありますね。おいしいですよね、また。

梶原:そうなのです。

傍島:うまくおいしくなっているのですよ、健康的でおいしいですよね。

梶原:そうです。

小川:それなら食べますよね。健康的でおいしいのだったらいいですよね。

傍島:はい。びっくりしますけれども。もちろんおいしくないものもたくさんありますよ。(笑)たくさんありますが、進化しているというのはすごく分かりますね。この絵を見て、パッと見て分かりますね。

「安いものは悪かろう」のアメリカ感覚

梶原:先ほど傍島さんがいいポイントをつかれて、日本のようにすべてのものがいいわけではないのです。ですから、もう1つよくある失敗パターンとしては、日本には良くて安いものがすごくたくさんあります、アメリカにはそんなものがないので、良くて安いものというのを提供しようと言って、例えばそういうものやそういうサービスをつくろうとする人がいるのです。それは、なぜかアメリカではうまくいかないのです。これだけアメリカはいろいろな収入層の人がいて、もちろんお金がない人もいいものを使いたいと思っているはずなのに、アメリカの人が刷り込まれているものとして、「安いものは悪かろう、それ以外ない」と。資本主義の国ですので、いいものにはお金を出します。それがいいものだと思っているのです。ですから、どれだけいいものを安く提供しても、お客様は安かったら悪かろうと思うのです。

傍島:確かに。

梶原:ですから、日本ほど爆発力が出なくて、どんなにいいレストラン、アフォーダブルなレストランだったとしても、いいと思われる基準に達するプライシングをしないと弾かれてしまいます。ですから、「いいものをつくりたい人はお金をチャージしてください」ということを私は必ずいつも言っています。

傍島:なるほどね。安くてうまいものは100%アメリカにはないのです。

小川:残念ですね。

傍島:はい。確かに、お金を払っておいしいものを食べようというマインドセットだと今言われて初めて納得しました。どうしてないのだろうと僕はずっと思っていたのですが。(笑)

梶原:(笑)そうなのです。

傍島:なるほどね。確かに、マインドセットというのはその通りかもしれないですね。安かったら絶対おいしくないと思ってしまいますから。(笑)だから、日本に行ったら感動しますけれども。

梶原:そうなのです。日本で感動するのは、日本だから感動しているのであって。でも、ちなみにこのコンサル業界の食品のコンサルをアメリカで15年している先輩とこの間キャッチアップしたのですが、「そういえば、奈美子にも言ったと思うけれども、日本の食品業界というのはどうなっているのかな。僕は頭の中で計算したのだけど、日高屋のラーメン390円は成り立っていないのではないか」と。「例えばね、残業未払い問題というのが日本にはあるよ」と言うと、「やはりそういうのがあるのか」と。アメリカではあり得ませんので、すべてが価格に反映されていますからね。

小川:なるほど。ちょうど今、ご質問が来ておりまして、「具体的に、健康的なピザ1枚はどのくらいのプライスなのですか」という、私も気になりますが、いかがでしょうか。

梶原:25ドルぐらいしますよね。

小川:もう一度お願いします。

梶原:25ドルぐらいすると思います。日本円だと3,000円~4,000円ぐらいではないでしょうか。

小川:やはりそうですよね。

傍島:そうですね。

小川:ピザ1枚でそれはやはり少し高いのかなと思ってしまいます。

傍島:超冷たい小さい三角のサンドイッチが10ドルぐらいする感覚ですので、今見えているようなおいしそうなピザですと、30ドルぐらい本当に普通にします。25ドル、30ドルですね、3倍ぐらいの感覚でしょうか。

梶原:そうですね。今は物価がね、物価と円安が掛け算になっていますから。

傍島:円安が。

小川:そうなのですよね。

梶原:家食が増えるという。この話をすると本当に長いので、次にいきます。

小川:はい。(笑)

不健康な食は社会問題

梶原:次は不健康な食は社会問題です。これは、日本と1点違うところは、大企業がアタックされがちというところがあります。一番左にSuper Size MeやFOOD.incを出したのですが、日本は大企業がいろいろな広告を出してスポンサーもしています。ジャニーズ問題で皆さんも感じていると思いますが、いろいろな広告を出しているとそこに配慮するという文化がありますので、アメリカはどれだけマクドナルドが巨大だったとしても、Super Size Meのような、「マクドナルドを食べ続けるとすごく不健康です」という映画が出てしまうわけです。でも、そんなものは日本では出ないわけですよね。どれだけ日清のラーメンを食べ続けたら体に悪かったかもしれない。日清がお客様かもしれないので、あまり大きな声では言えないですが…。でも、そういうのは絶対出ないわけですよね。でも、アメリカは言論が自由ですので、一時期こういうのがすごく流行って、特に人工肉やサステナが流行った時期に、胸肉がドーンとした大きい鶏、「こんな鶏をあなたは食べていていいのですか」というような。基本的に大企業否定文化というのがありますので、実は食品業界にたくさんチャレンジャーブランドがある、スタートアップがあるというのはそういう流れをくんでいます。お客様からの不信が大企業にあるので、スタートアップのものを買いたい、スモールブランドを買いたい、エコシステムをもっと昔のようにしなくてはというので、実はスモールブランドに興味があります。ですから、私がBokksuにいたときも、実はスモールブランド、日本のスモールブランドを買いたいのですというお客様が非常に多かったです。ですから、私は今回この仕事を始めて、もっとスモールブランドの人たちと仕事をしたいと思っています。日本にある、おいしくて、地方ですごく頑張っていて、日本ではすごく体力があるが、日本で急に内需が減ってきて危機感を感じている、海外に行きたい、そういうお客様と私はすごく仕事がしたいなと思っています。そういう人たちのほうが、大企業がアメリカに出てくるよりも、もしかしたらいいお客様が獲れるかもしれない、そういうチャンスがアメリカにはあると思います。

少し話が横に逸れましたが、不健康な食は社会問題ということで、こういうSweet Greenのようなネクストジェネレーションのチェーン店の大きい会社が出てきたり、しぼみましたけれども、こういう人工肉の会社が出てきたりしました。今また新たな兆しがあって、それはGen Zのライフスタイルが今話題になっていますが、それは何かと言いますと、お菓子です。Gen Zの人も健康に食べたいのです。でも、いわゆる今どきの子ですので、日本で言うところのウィダーインゼリーでご飯を済ませてしまうといったものです。お菓子でプロテインが入っているものを、「だって、私が一日に必要なプロテインは20gで、これにはプロテインが入っていますから、プロテインはこれで食べます」というような。ミレニアルズはちょっとナチュラル派に寄り過ぎました。それの逆張りで「なぜ人工的なものを食べると悪いのですか」というGen Zの波があります。ですから、社会問題という大きな流れはありますが、いろいろなことが起きていますよという話です。

傍島:こういうことはうちの娘に聞かないと分からないですね。(笑)確かにありますね。

求められているアジア人・アジア食品

梶原:もう1つが、これもチャンスのところですが、カルチャー・ダイバーシティ、サステナビリティは、先ほどの人種構成の話や、特に若い人はサステナへの意識がものすごく高いのでチャンスです。特に、先ほど業界の大きな流れのところでもお話したのですが、リテールの人たちが皆さんを探しています。リテールの人たちがアジア人ファウンダーの商品を入れたいと言って、すごく探しています。そういう人たちに投資したい人も実は結構います。そういう業界からのエフォートが今は先走っている状態です。でも、ないのです。やはりアジアの人たちのほうが、アジアの流通、アジアスーパーの流通に入りやすいです。でも、そこは結構なビジネスサイズが実はありますから、そこで結構最初は終わってしまって、メインストリームのWalmartなどは考えもしないのです。でも、今はそこの門戸が開きつつあって、そういう兆しが結構出ています。アジア的なもの、これは「Fly By Jing」という、結構日本語のVCで話している人もいますので、探したら出てきますが、昔ながらのチリオイルをナチュラルにして、おしゃれなパッケージにして、アイスなどにかけて売っているものです。アイスクリームにかけましょうと言って、ファウンダーの人も女性の人で、本当にエンパワーというような、こういうのはすごく人気があります。実は少し古いのですが、こういうのに興味がある、これは自分のことだな、こういうのに興味があるよという人は、この佐久間さんの『ヒップな生活革命』、これは10年~15年ぐらい前の話ですが、この大きな流れの根源の話をしています。これを読めば、今の流れを見たときに、この流れねというのが分かりますので、この本は結構おすすめです。

ライフスタイルビジネスでも重要になる「アーリーアダプター」

もう1つ、大きなイノベーションになるヒントです。「アーリーアダプターの人を探してください」というものです。これはイノベーションでやるときに、このイノベーション・アダプテーション・ライフサイクルというもので、これは先にどんどんトライしていく人ですね。イノベーターズ、自分も開発したりするような人は、何でもほかの人が開発しているものを試しますと。アーリーアダプターは、何でもみんなより先に試したい人ですよね。みんなが使っていなくても買ってくれる人です。このイノベーターとアーリーアダプターのこの15%ぐらいを獲る、まずここがゴールですよというのをテックスタートアップの人はすごく意識してやっていますが、海外進出のときもこれを意識してやってほしいです。みんな、いきなり「白人のマジョリティを獲りたい」といきなり中西部を考えるのですが、あの人たちは結構否定的です。ですから、別に中西部に行ってもいいのです。そこの中にもアーリーアダプターの人はいますので、そういう人でもいいのですが、とにかく自分の商品にとってのアーリーアダプター層、この最初の15%の人は誰ですかと。食品業界で言いますと、これは美容でも何でも何かパターンがあります。イノベーターズはやはり業界で言うとプロフェッショナルの人たちです。CIAなどの集団です。CIAというのはフード業界のCIAというのがあって、カリナリー・インスティテュート・オブ・アメリカと言いますが、ここに属していたり、ここにビロングしている人はみんなイノベーターの人たちです。アーリーアダプターというのは、Whole Foodsやローカルのオーガニックストアで買ったりするようなタイプの人たちですよね。この人たちは先進的な企業に共感するし、環境のことを調べていたり、「Bokksuは本当に大企業のものを取り扱っていないのですか」と問い合わせてくるような人たちです。食品に限ってですが、アメリカの人たちは食への意識が基本的にものすごく低いので、この後半の人はとにかく大変です。日本人はおいしいものを食べたいという欲求がかなり広くあるのでいいのですが、アメリカの人は「おいしいものを食べたい」という欲求自体が全体的にないので、この辺りも注意点かなと思います。今日は食品の話をしましたが、これをビューティーに置き換えることもできますし、ほかの、いわゆるシャンプーなどに置き換えてこれを考えてみることで、自分たちのイノベーションがどのようにアメリカの流れに乗っていったらいいかというのが少しヒントになるかなと思って、今日お話をしています。

傍島:なるほど。これは当てはまるのですね。よく言われるのは、「ニッチ過ぎるのではないか」と言う人がいますよね。「これはマニアック過ぎて駄目だよ」と言う人が多いと思いますが、それとはまた違うのですか。

梶原:広がりそうになるというのは、大きな流れに乗っているということです。

傍島:そこですよね。

梶原:大きな流れというのが上で、アーリーアダプター層の人たちを捉えるという、この2つのコンビネーションが大事です。

傍島:そこですよね。

梶原:大きな流れに乗っていなくてニッチな人を捉えてしまうと、広がらないので、大きな流れに乗っていないのでそのまま終わってしまうという感じだと思います。

傍島:そうですよね。先ほどの話がやはり通じるのですね。「大きな流れとしてこちらに行くよね」というところで早く手を出すような人、イノベーターやアーリーアダプターの層が大事ということで、ニッチとは違うというのはすごく今の話は分かりやすかったです。

アメリカは5-7年日本から先行している

梶原:そうですか、良かったです。大きな流れというのは、今日はすごくベーシックなところをお話しましたが、それぞれ本当にいろいろな大きな流れがあると思います。ですから、こういうウェビナーなどで継続的に情報を摂取されて、自分の中に大きな流れの感覚をつくるというのもすごく大事かなと思います。

あともう1つ大事なのは、日本のライフスタイル系のイノベーションは、基本的にアメリカから5~7年ぐらい遅れています。

傍島:聞きたくないけれども、事実です…。(笑)

小川:そうなのですね。

梶原:(笑)例えば、昆虫食が日本で流行ったのも5年ぐらい遅かったです。アメリカで流行って終わったなみたいな。

小川:終わった…。(笑)

梶原:相談を受けると心が苦しいわけですよね。アメリカではもう終わりつつあります…みたいな、ですので、「自分たちで終わっていないかどうかを確認してからアメリカに行ってください」と。もう心苦しいではないですか。「アメリカではもう終わりました」とは言えませんので。(苦笑)

傍島:多いですよね。アメリカが終わってきたときに日本が盛り上がるのです。

小川:やはりそうなのですね。

梶原:仕方ないですよね。大きなウェーブをね、やはりアメリカなどの大きなマーケットのところで、今だと結構中国なども、ライフスタイルだと韓国も発信地ですので、そういう発信地のところをとにかく捉えておかないと、日本の流れで、日本で新しくて、「日本でうちは流行ったから来れる」と思うと、またそれは少し違ったりしますので、その辺は要注意かなと思います。

まとめ

梶原:今日はお時間が限られていますので、本当はすごくいろいろあると思います。おそらくこのウェビナーでいろいろな側面をご紹介されていると思いますが、今日お話したのは、少しだけチーム、プロダクトとブランド、マーケティングのところをお話しましたが、ディストリビューション、ロジスティクスはアメリカは本当に終わっていますので、ここもすごく大事です。大事と言いますか、ここは本当に現地のことを理解して組まないと大失敗します。セールスは本当に現地の人がすごく大事です。この辺、セールスは日本人の人が営業代行でしている人ですごく優秀な人がたくさんいますので、そういう人と一緒に進めるのがいいと思います。

ステップについては、今日私がお話した話、どのようにステップしたらいいのですかということですが、まず、こういったトレンドの理解です。私は10年過ごしてしまいましたが、トレンドについてはこういうウェビナーなどで過ごした人から聞くのがおそらく早いので、そういうのを勉強したら、お客さんと話してください。お客さんと話をしてペルソナを設定します。今どきはペルソナは1つではなくて、4つぐらいつくってください。そして、テスト販売をするというステップになっていきます。ユーザーと話すときに、もう今は結構自分で、日本からアメリカ時間で働けば話せます。ユーザーインタビューしたいときはドットコムといったツールもありますし、SurveyMonkeyも、これは定量ですね、使えます。あとはインフルエンサーですね。インフルエンサーの人たちは結構DMなどで、特にマイクルな人たちは、連絡してお金を払うと結構話してくれたりします。そういうオポチュニティを彼女たちは求めていますので、こういうリサーチを日本からすることもできます。別にここに挙げたようなコンサルの人を使ってもいいですし、とにかくユーザーリサーチをしてください。本当に皆さんリサーチをしないので、してください。コンサルや投資家の人たちは皆さんの時間を短縮するためにいますので、ぜひ活用されることをおすすめします。

進出しますよと言うと、日本の人はお金を出したいと思います。日本の人からお金をもらうのはすごく大事ですが、やはりアメリカに長く住んでいる人は現地のネットワークがあります。日本人もそうですが、例えばライフスタイル系ですと韓国の人はものすごくオリジナルなネットワークを持っていたりします。しかも、皆さんご存じの通り、Kカルチャーはすごく浸透していますので、彼らは結構先行ナレッジも持っていますので、こういう韓国系の投資家の人たちにリーチするというのもありだと思います。大企業の人も参加されていると思いますが、大企業の人たちは大学を活用することを強くおすすめします。少し高いなと思うかもしれないですがもう全然ペイします。本当に細々やるよりも、大学の産学連携のDスクールなどのプログラムにパーンとお金を入れるのがいいと思います。スタンフォード大学やMITでありますので。まずGen Zの学生とも話せますし、学校とつながりがありますから最新の状況やイノベーションが手に取るように分かります。学校と組んでいますのでエコシステムにサッと入れます。ということで、こういうプログラムはすごくおすすめしていましたし、今もしております。

私がやっているのは、こういうアドバイザリー、ネットワークの紹介やアクションプランニングA、B、Cといったものです。何をしたらいいのか分からないという人も結構多いので、そういうビギナーの人は大歓迎です。それから、先ほどお話したようなマーケットリサーチなどもずっといろいろなところでしてきましたので、できます。超得意なのはブランド開発やGo-To-Market戦略です。Go-To-Market戦略とは何かと言いますと、商品が素晴らしくても、お客さんがそれに乗る流れをつくってあげないと無理です。例えば、キリンフリーという商品があっても、販売の仕方によっては鳴かず飛ばずだった可能性があります。それはキリンフリーを開発した記事はオンラインで読んでもらうとして。新しければ新しいほど、どうやってお客さんがそれを生活に取り入れるかという工夫が大事です。そういうのはすごく得意でずっとしてきましたので、こういう相談があればぜひ行きたいと思います。先ほどと被りますが、いろいろなところで「うまくいった理由は何ですか」と聞かれることが多いのですが、私はとにかくAとBをつなぐというのがすごく得意です。いろいろな文化をその目線で理解するというのがすごく得意ですので、いろいろなお客さんのいろいろな気持ちをいろいろな殻を被って理解することができます。それが本当に得意技ですので、例えば商品開発も得意ですし、Go-To-Market戦略も大事ですし、こういう日米の仕事というのもすごく得意ですし、大企業とスタートアップの両方で働けるというのは要はそういうことです。いろいろな文化に適応できるスーパーパワーがなぜかありますので、こういう領域で何か必要ですよということがあれば、ぜひぜひご連絡ください。おそらくアンケートでも取っていただくと思いますが、そこからでもぜひご連絡をいただければと思っています。マンスリーでも、スポットでも、プロジェクトベースでも、今始まったばかりですので、すごく時間は空いています。(笑)すごくまだ時間は空いています。

小川:そんなことはないです。(笑)

梶原:連絡してください。ということで、質問も来ていますね。ありがとうございました。

小川:ありがとうございます。

傍島:ありがとうございます。これは本当に皆さんに今日聞いてほしかったので、すごくうれしいです。僕は梶原さんと日本にいらっしゃる方をつなぎたかったので、アメリカにいらっしゃる方も一部いらっしゃいますが、今日はいい時間になったと思います。ありがとうございます。

視聴者からの質問

小川:ありがとうございました。とても興味深いお話をいただきました。それでは、ご質問を頂戴しております。ありがとうございます。「ニューヨークで日本酒獺祭の醸造所が昨日開業し、日本からの会長が”日本のやり方でアメリカに広げる“とインタビューで答えていました。リカーストアでの試飲などの地道な活動が報道されていましたが、日本のやり方で日本酒がどこまで浸透されると考えられますか」というご質問です。いかがでしょうか。

梶原:これは結構、実は今、業界の人の間で非常に話題になっています。日本酒というのは日本では販路がすごく特殊でして、うちの蔵はこの人にしか卸しませんよというのが決まっていて、その通りに流れるのです。獺祭がそうだったかどうかは覚えていないのですが、結構複数の会社さんがそのやり方でアメリカでもやりたいとおっしゃっているらしいです。でも、日本酒は人気が高いので、ある程度アメリカ人もアジャストする可能性はありますよね。ものすごく人気があるので、それに乗っかってやりましょうかとなる可能性もあるのですが、これがなければもっと浸透するかもしれないのにもったいないなというのを現地の人はすごく思っています。気持ちはすごく分かりますが、特に流通は本当に流して、別にシステムを改善しなくても流れればいい、ゴールは本当は何なのですかと言うと、流れることだと思うので、もったいないなというのはすごく思いますね。もっとチャレンジがたくさんあるのです。お酒は例えばステート同士、州ごとのトランザクションが非常に難しくて、LAからニューヨークに持っていくのもすごく大変です。別のチャレンジがアメリカではあるので、そこにわざわざ新しいチャレンジをつくってどうするのだろうと個人的には思っています。

小川:ありがとうございます。続いてのご質問です。「大変勇気づけられるお話でした。アメリカの食は進化し続けているとのことですが、それは外食で言えることでしょうか。先日、アメリカのWalmartを見ましたが、陳列商品にあまり変化がないように感じて、これはWalmartだからかもしれませんが、市販用に関しての食の進化はいかがでしょうか」というご質問です。梶原さん、いかがでしょうか。

梶原:すごくいい質問をありがとうございます。やはり流通業界の中でWalmartはジャイアントですから、彼らは真ん中のお客さんを押さえているわけです。ですから、彼らが例えばアジア食を取りましょうとなるのは本当に最後の最後、もうラスボスのような感じですよね。一方で、Whole Foodsに行くと常にいろいろ入れ替わっていると思います。例えばプラントベースの売り場がいきなりできたり、アジア食で入っているブランドがどんどんモダンに入れ替わっていっているというのをおそらく住んでいる人は感じていると思います。ですから、流通、特にリテールのほうの変化は、そういう先進的なリテール、やはりそこでもイノベーションを起こしている人たちが、例えばそういうトレジョ(トレーダー・ジョーズ)です。そういう意味では、トレジョでアジア系の食品が今すごく売れているのです。今、トレジョでバズっているのはキンパです。キンパ知っていますか。とにかく食べないといけないのですが、欠品過ぎてどこでも手に入らなくて、健康食品のキンパがものすごくバズっています。ほかには、日本でOEMしているYuzu Hot Sauceというのがあるのですが、それもコンテナ1個ぐらい出ているらしいのです。信じられないと思って、誰がそんなYuzu Hot Sauceをかけているのか。しかも、トレジョです。

傍島:(手を挙げる)

小川:えっ、かけているのですか、傍島さん。おいしいのですね。

傍島:おいしいのですよ。(笑)

小川:まさか手が挙がるとは。(笑)

梶原:大分でつくっているらしいです。

小川:何にかけるのですか。

傍島:サーモンに、例えばマヨネーズをかけて、Yuzu Hot Sauceをかけたりしたらおいしいのですよ。

小川:おいしそう。

傍島:これがまたおいしいのです。(笑)

小川:柚子って何にかけてもつけても、おいしいですものね。

傍島:おいしいですよね。

小川:なるほど。ありがとうございます。すみません。お時間がだいぶ迫ってまいりましたが、ご質問のお時間はなさそうでしょうか。

傍島:はい。

小川:そうですね。それでは梶原さん、ありがとうございました。ご質問いただいた皆様もありがとうございます。

ではここで、傍島さんから「CESかんたんガイドブック」に関する告知をお願いします。なんと傍島さんが近畿日本ツーリストさんのウェビナーにご登壇されるのですよね。

(告知)ウェビナー登壇「はじめてのCES」

傍島:はい、ありがとうございます。CESですね、まだ9月終わりですが、来年年明けに大きいイベントがラスベガスであります。これを皆さんにいち早くお届けしたいということで最近お話をしているのですが、画面を共有しますね。

近畿日本ツーリスト様のウェビナーに登壇することになりました。2023年10月4日、来週の水曜日、「はじめてのCES」ということで…。コロナも明けて、昨年も非常にたくさんの日本の方がCESに参加されていましたが、家電の見本市のようなかたちで言われていますが、とにかく面白い、新しいものがたくさん展示されているイベントです。こちらに初めて行かれる方に向けて、CESはどうなっているのかといったところを解説したいと思います。10月4日12時からオンラインで、無料のウェビナーですので、ご興味のある方はぜひご覧いただければと思います。チャット欄にお申し込み欄を入れましたので、ご覧ください。

併せて、このラスベガスのツアーはもう本当に高くなります。実は私も先週ホテルと航空券の手配をしました。来年の1月のことですが。

小川:早い…。

傍島:今見ても非常に高くなっていますので、日本から行く方は、ぜひ早めにアクションされたほうがいいなと思います。今回の近畿日本ツーリストさんのツアーですけれども、入場の登録料が無料になったり、あとはTomorrow Accessから「かんたんガイドブック」というものを発売しておりまして、これがついていたり、お申込者限定で見どころなどを解説したウェビナーをおこないます。本当に大きいのは、日本からの発着で日本航空(JAL)さんの飛行機を使って、ラスベガスの一番いいところのホテルに非常に安価にお泊りができるということもあって、こういったスタートアップの情報やガイドブックもお付けして展開をしていきたいということで、ご覧のような値段になっております。非常にお得ですので、早く動くということがいいかなと思ってご紹介をさせていただきました。ありがとうございます。

小川:皆様ぜひチェックしてみてください。傍島さん、ありがとうございました。さあ、それではあっという間にお時間になりました。梶原さん、今日はいかがでしたか。

梶原:ありがとうございました。今、せっかくですのでタイプできる質問はタイプで答えさせてもらおうと思って書いていました。

傍島:ありがとうございます。

小川:ありがとうございます。助かります。

梶原:また、質問しにくかった方もいらっしゃると思いますので、アンケートなどで答えていただければなと思います。今日はどうもありがとうございました。

小川:どうもありがとうございました。さあ、それではお時間になりましたので、本日の01 Expert Pitchは終了とさせていただきます。梶原さん、傍島さん、どうもありがとうございました。

梶原:ありがとうございました。

傍島:ありがとうございました。

小川:そして、ご視聴いただいた皆様もありがとうございました。また次回、ぜひご参加ください。それでは、さようなら。

以上


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