01 Expert Pitch #22

How can Japanese companies make their mark in Silicon Valley?


01 Expert Pitch #22

How can Japanese companies make their mark in Silicon Valley?


2023.4.25 TUE 12:00-13:00 JST
Risa Ishii, Director of Japanese Partnerships, Plug and Play Tech Center
2023年度が始まり、多くの日系企業が新たにシリコンバレーに駐在員を派遣したり、出張するようになってきました。シリコンバレーは世界各国から優秀な人材や最先端のテクノロジーが集まり、競争が激しい巨大なビジネスエコシステムになっています。そんな環境下で日系企業が成功するためには、数多くの困難を克服する必要があります。 今回の無料ウェビナーでは、世界最大級のアクセラレーター/VCであるPlug and Play Tech Centerにて、各国の企業・スタートアップ・投資家などと交流がある Director of Japanese Partnerships 石井 莉咲氏をお迎えして、日本とシリコンバレーの文化やビジネスの違い、日系企業が活躍するためのベストプラクティスなどについて、日本語で解説していただきます。

▼ こんな方にオススメ

  • シリコンバレー進出を考えている
  • シリコンバレーでどのように活動すべきか悩んでいる
  • 世界における最新の取組み状況と未来を知りたい方

▼ 登壇者
石井 莉咲氏 Plug and Play Tech Center, Director of Japanese Partnerships
早稲田大学政治経済学部卒業後、みずほ銀行本店入行。2018年よりシリコンバレーを本社におくPlug and Play Tech Centerにて、日系大手企業と海外スタートアップとの連携支援や、イノベーションマインド育成ワークショップなどを行う。40カ国以上をバックパックした経験から、特に日本の技術格差や教育格差を問題視しており、経産省の若手と立ち上げた一般社団法人ELPIS NEXTを通じた政策提言活動や、スタンフォード大学他での講演、海外留学生や国内地方高校生へのメンタリングも行っている。

小川:それでは、12時になりましたので、01 Expert Pitch第22回を始めてまいります。「シリコンバレー発!世界のエキスパートが最新情報を日本語で解説!」ということで、本日は『日系企業がシリコンバレーで活躍するためには?』をお送りいたします。

さて、今回はPlug and Play Tech Center, Director of Japanese Partnershipsの石井 莉咲さんをエキスパートとしてお迎えしております。石井さん、本日はどうぞよろしくお願いいたします。

石井:よろしくお願いいたします。

小川:石井さんは今、ニューヨークにいらっしゃるのですよね?

石井:そうです。今日だけです。明日はまたサンフランシスコに戻ります。

小川:そうなのですね。お時間が遅いと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。

石井:お願いいたします。

小川:そして、本イベントの主催者であるTomorrow Access, Founder & CEOの傍島さん、本日もどうぞよろしくお願いいたします。

傍島:よろしくお願いします。

小川:そして、私は本日ナビゲーターを務めてまいります、フリーアナウンサーの小川りかこと申します。どうぞよろしくお願いいたします。

それでは早速ですが、傍島さん、この01 Expert Pitchの狙いなどを少しお話いただけますでしょうか。

01 Expert Pitchとは?

傍島:はい。あらためまして、Tomorrow Accessの傍島と申します。よろしくお願いいたします。Tomorrow Accessという会社はシリコンバレーを拠点にしたコンサルティング会社になります。この01 Expert pitchは今回で22回目ということで、こちらの画面にある3つの狙いでウェビナーを運営しております。1点目は日本とアメリカの情報格差の解消、2点目は正しい情報をお届けしたい、3点目は日本語での解説ということです。おそらく石井さんも、日本の企業の方からよく「シリコンバレーはどうなっていますか」「アメリカはどうなっていますか」という声をたくさんいただくと思いますが、そういった声にお応えして、きちんと日本語で正しい情報をお伝えして、日本とアメリカの情報格差を解消したいという、この3つの狙いでウェビナーを運営しております。

今日は、シリコンバレーで日系企業がどう活躍できるかということで、弊社では『シリコンバレー駐在ガイドブック』というものもWebサイトで掲載をしていることをご紹介します。この4月から新たに駐在する方もたくさんいらっしゃると思いますが、こういった方たちの生活面、例えば赴任前から赴任直後に至るところ、どういったことを生活する上でしなければいけないか、住宅を探したり、自動車を探したり、あとはビジネス編ということでいろいろな仕事の仕方、情報収集のやり方であったり、人脈開拓であったり、情報発信も非常に大事です。また、イベントもたくさんありますので、そういったカレンダーの情報も掲載して、駐在の方をサポートしております。ちょうど今日、今度は日本からシリコンバレーに出張でいらっしゃる方向けの『シリコンバレー出張ガイドブック』というものも発売を開始いたしました。こちらはウェビナーの最後のほうでご案内差し上げますので、また今回ご登録いただいた方には割引のクーポンの情報も最後にお伝えしたいと思いますので、ぜひ最後までご覧いただければと思います。よろしくお願いいたします。

小川:傍島さん、ありがとうございます。本日のイベントでは、皆様からのご質問を随時受け付けて進行を進めてまいります。ご参加の皆様、ぜひ石井さんにご質問のある方は、Zoom画面の下にあるQ&Aのボタンからご質問をお寄せください。随時、私のほうで拾ってまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

それでは石井さん、まずは簡単に自己紹介からお願いしてもよろしいでしょうか。

石井 莉咲氏プロフィール

石井:あらためまして、ご紹介に預かりましたPlug and PlayでDirector of Japanese Partnershipsを務めております、石井 莉咲と申します。本日はお忙しい中お時間いただき、ありがとうございます。

経歴としては書いてある通りではありますが、私自身は日米半々ぐらいでして、いわゆる帰国子女で父親の駐在でアメリカのオハイオ州で中・高を過ごしました。非常にシリコンバレーとはまた全然違った、トランプ支持者満載というようなところでしたので、カリフォルニア、シリコンバレーに定職してからと言いますか、移ってから丸5年になりますが、非常に自分の今まで知っていたアメリカと違うことに驚きつつ、何がシリコンバレーを世界一のイノベーションの都市にするのかということも、ほかの地域に住んだからこそ分かるような気はしていますし、日本も地方出身ではありますので、そういった意味で日本の地方と東京とアメリカの地方とシリコンバレーというところでいろいろと勉強しつつという、そんな経歴になっています。

傍島:確かに。シリコンバレーはちょっとアメリカかと言われると、少し特殊な街ですからね、ほかの街とは全然違いますよね。

石井:そう思っております。

小川:アメリカは広いですからね、地域のよってさまざまな特色があるかと思うのですけれども…。それでは、石井さん、本日の流れから説明をお願いいたします。

石井:本日の流れですけれども、まずはシリコンバレーについて、ご存じの方もいらっしゃると思いますので恐縮ではありますが、簡単に私のほうからご紹介させていただければと思っております。その次にジャパニーズカルチャー、主にビジネス面においての日本文化、企業文化というところで、一瞬ですけれども私も前職はメガバンクにおりました経験もありまして、お客様もいろいろ100社以上の日系企業様とお付き合いさせていただく中で感じているところや、わりと業界問わず共通認識があったりします。そこと、現地というのはシリコンバレーということですけれども、文化やマインドセットの違いについてぜひ深堀っていければなと思いつつ、その中で何をもって成功と言うかは個々人の違いであるかもしれないですけれども、一般的にシリコンバレーにて今回のタイトルである「活躍」されているような企業さんの事例を2つほどご紹介できればと思っておりますし、お時間があればほかの事例も口頭ベースにてコメントできればなと思っています。最後に、僭越ながら個人的にいわゆる成功するための秘訣と言いますか、ポジティブなコメントとして終わらせていただければと思っております。

小川:ありがとうございます。それでは早速お願いいたします。

世界一のエコシステム:シリコンバレー

石井:まず、世界一のエコシステムシリコンバレーというところですけれども、言わずもがな、どのような指標をとってもおそらくシリコンバレーという場所は、主にサンフランシスコからサンノゼ辺りを指しますが、こういった半導体を中心に発達したネットバブルを経験したエリア一帯です。数字はここに記載してある通りですが、世界でも本当に有数の高収入を誇る地域になっておりまして、それに伴って、特にサンフランシスコ市内の家賃は決して安くありません。(1ベッドルームの価格は$3,595〜$4,505。月額 約52〜65万円)

小川:高いです!

傍島:やばいですよね。

小川:「安くない」ではなくて、「高い」です。(笑)

石井:確かに。(笑)一方で、「光があれば影もある」ではないですが、最近、ホームレス問題やいろいろな問題が実際に深刻になりつつあって、今後どうなっていくのかというのはありつつ、やはりまだまだ圧倒的なイノベーションが生まれる地域にはなっているかなというところです。それがなぜそういった要素、そういった場所になっているかと言うと、人ですね。まず、基本的に4割ぐらいは私のようなアメリカ生まれではない人たち、いわゆる移民の人が来ます。ですから、そういった、いろいろな文化が交わるような風土というか、事実としていろいろな文化が交わるような土地柄になっておりますし、安くはないのでそういったやはり経済的な意味で循環されるようないろいろなビジネスモデルや生存をかけた戦い、コミットメントが見受けられます。逆に、そこで生き残れなかった人というのは、やはり残れなかったり、いろいろな問題はあるのですけれども。そういった潤沢な資金や文化マインドセットであったり、それを可能にする教育であったり、産学連携というのも非常に活発ですし、そういった過去の知見であったり、Exitした起業家の存在、ピーター・ティールなどを含めたそういった方々というのも非常に大きく関わっているということで挙げられます。また、大企業連携と書いてありますが、後ほどお伝えさせていただきますが、大企業の関わりや存在というのも実は非常に大きく関係しています。

傍島:人は多いですよね。ピュアなアメリカ人のほうが少ないんじゃないかみたいな感覚がありますよね。インド人だったり、イスラエルの人だったり、もちろん中国とかアジアの人も多いのですが、英語ももう本当にいろいろな英語がある感じですよね。

石井:そうですね。いろいろなアクセントで、オハイオのときとは少し異なり、完璧な英語がなかなか聞き取れない感じですよね。

大学のことについて少し触れさせていただければと思います。言わずもがな、有名なスタンフォード大学というところのパームスプリングス…、ではなくてパームドライブでしたっけ、ちょっと名前を忘れました。(笑)

小川:きれいですね。

石井:はい。非常にきれいです。有名ですね。そのほかにもバークレーやUCSFなど非常に有名な大学があります。有名な大学があるだけではなくて、アメリカではこういった産学の人材循環というのが活発です。ですから、大学と企業がお互いの問題意識、社会課題の認識、理解、あるいは連携ポイントは常に議論されています。また、ファンドを持っていたりと、いろいろな産学の連携が非常に歴史的にも活発ですよね。ジョン・ヘネシーは、MIPSのコンピュータの会社を設立したあとにスタンフォードの学長を務めましたが、そのあとAlphabetの会長もしていたり、そういったことがいろいろなところで起きています。かつ、教授も積極的に外部とネットワーキングをしたり、サバティカルを取ったり、活用したりということも挙げられます。かつ、スタンフォードではStartX、UCバークレーではSkydeckという大学内での卒業生や教授、起業家、投資家を交えたアクセラレータプログラムも制度としてありまして、非常にシリコンバレーの皆さんには有名で周知の事実だと思いますが、そういった例が挙げられます。

まだまだ活況な市場であるシリコンバレー

石井:潤沢な資金というところですが、このデータは少しだけ古いかもしれませんが、シリコンバレーだけで2021年は$120Billion、2022年はその半分ぐらいでしたが、とはいえ、すごい規模です。ちなみに日本は昨年2022年は$4.4Billionの投資額ということで、それだけ見ても、これはシリコンバレーだけですので。

小川:全然違いますね。

石井:そうですね。悲しいぐらい違っているということで、単純なシリコンバレーと日本の比較だけでも15倍という数字が出ています。かつ、もっと面白いところが人口に対する1人当たりの額です。総額の投資額というのはもちろんあるのですが、それを人口で割ったときにニューヨークやマイアミなどの20倍にあたるということです。何が言いたいかと言うと、やはり人の数に対して圧倒的な資金力があるということが言えると思います。

傍島:この間、世界のミリオネアの人数のニュースを見ました。東京が確か2番目だったのですが、ビリオネアは圧倒的にシリコンバレーのほうが多いというニュースを見て、ビリオネアの桁が全然違うというのが面白いなと思って見ていましたね。全然数字が違うのですよね。

石井:本当におっしゃる通りです。果たしてそのビリオネアたちが、本当にシリコンバレーにずっといるのかどうかは怪しいところでもあると思いますが、ただ、少なくとも投資の際や事業拡大の際、総会などで定期的には絶対的にベースを置いている人が多く、コロナ以降はやはりいろいろな都市を回られてというのはビリオネアに限らずあると思います。また、アメリカはプライベートジェットがすごく活発です。スペースXに数年前に行ったときも、ちょうどイーロン・マスク氏がプライベートジェットで来まして、そんな出社の仕方は日本ではないだろうなと思ったりもしましたね。

傍島:そうですね。「いろいろな人がシリコンバレーから抜けている」なんていうニュースも出ていますが、土壌がすごく厚いので、まだまだ伸びているな、大きいなという感じはありますよね。

石井:そうですね。おっしゃる通りだと思います。この表でも、もう数字を見ていただけたかもしれないですが、基本的に言いたいことは「シリコンバレーが強いですよね」ということです。額としても、投資額や件数も、昨年より落ちたとはいえ、やはり引き続きシリコンバレーが圧倒的ということです。ユニコーンが全てではないと思いますが、2021年のデータで恐縮ですが、ユニコーンの数をベイエリア、ニューヨーク、ボストンで比較すると10:4:1となっており、先ほどのビリオネアの話ではないですが、圧倒的なプレイヤーはやはりベイエリアベースであるということが言えると思っています。

日系企業にもチャンスがあった

石井:本日の題名にもつながる部分かと思いますが、大企業とスタートアップの共存というところで、後ほど出てきますが、シリコンバレーにおいて大企業のイノベーションラボや投資をするCVC部門、そういったところが非常にベイエリアに拠点を持っているという背景があります。そこは大学と連携している場合もありますし、VCに入れたり、直接スタートアップに投資をしたり、あるいは情報収集やR&Dなど、いろいろな目的でいろいろな規模で活動されています。特にこのスライドに関しては、Googleを筆頭としたいろいろなプレイヤーが圧倒的な数を買収しているということで、1つ事例があります。BreezoMeterという会社で、私もここの社長と何回も会っています。と言ってももう5年前の話で、まだまだ彼らが全然小さかったころです。確かマウンテンビューかどこかの会社だと思いますが、環境系の大気の分析においてAIを使った分析ができるスタートアップでして、実際に何社か日系企業さんに紹介したこともありました。昨年、Googleが、額は公開されていませんが、最低でも$200Million以上で買収しました。しかも、251社目のスタートアップ買収です。

傍島:おおー!

石井:これは正直、なかなか日系企業さんにはできなかったことなのかなと少し惜しいような気もしました。価値があると思っていましたし、私もそういった場に実際に何度も立ち会っていたにもかかわらず、やはりそこまでの関係にはなっていないのですが、そういったことがバンバン起きるのがシリコンバレーです。

傍島:かすっているということですよね。

石井:そうですね。

傍島:本当に身近にこういう良い案件が目の前にたくさんあるので、かすっているのですが、なかなかつかみ取れないという感じですよね。

石井:そうですね。さらに、ここにも書いてありますが、ZoomやTwitterといった、もともとはスタートアップだったようなところも、例えばPayPalもそうですが、弊社の別の出資先であるHoneyを$4Billionで買いました等、そういう案件が実際われわれの出資先でも出ています。日本のメルカリやSmartNewsももちろん素晴らしいと思いますが、なかなかこういったことにはまだなっていないというところは今後の成長の余地を感じます。

小川:ありがとうございます。皆様ぜひ、Zoom画面の下にございますQ&Aボタンからご質問をお寄せください。私のほうで随時拾ってまいります。それでは、石井さん、引き続きお願いいたします。

投資で活躍している日系企業

石井:ありがとうございます。こちらは先ほどの話につながるのですが、多くの企業がシリコンバレーにイノベーション・アウトポスト、拠点を置いています。これは去年のデータですが、アメリカがもちろん圧倒的に多いのですが、日本も把握されているだけで68あります。JETROさんのデータによると、少なくともシリコンバレーに拠点を置く日本企業は1,000社を超えるという話もあり、相当な数があります。次いでチャイナ、フランスと書いてありますが、そういった場所として人は実際にいます。

一方で、CVCの投資ですよね、by Companyというので、去年のデータです。もちろんトップ2はアメリカの会社ではありますが、ここにUFJなどが入ってきます。トップ10のうち4社が日本企業というのは非常に個人的には興味深いです。これは私も結構思っていることですが、特にここは全部金融機関さんですが、本当に潤沢な資金というのは、実は日本という国、日本企業もすごく持っていると思っています。先ほどのBreezoMeterの例ではありませんが、そういった事例があったときにそういったプロセスや意思決定さえできれば、まだまだ十分可能性はあると思っていますし、むしろそういったことをどんどんしていってほしいと個人的には非常に強く感じているところです。

傍島:これは驚きですよね。日系企業がトップ10の中に4社入っているというのは。本当に私もこのデータを見て、日系企業頑張っているなと普通に思いました。先ほどのような大物を釣れているのかというところになると、まだまだ改善の余地があるのかなといったところですが、せっかく潤沢な資金もあることですし、たくさんの企業の方がシリコンバレーにいらっしゃいますので、この中から本当に1社2社でも成功事例が出たらいいなと思って今日のウェビナーを開催しています。

石井:本当にそうです。資料には載せていませんが、実は去年、去年というのはレポートが全部出ているのが2022年ですので、その前の2021年のデータになりますが、日本のCVCのファンディングが$2.3Billionあり、390ディールだったそうです。一昨年$2.3Billionだったものが去年2022年は$2.5Billion、つまり伸びているのです。要は、あれだけ不況で、先ほどのデータにあったようにシリコンバレーでも出資額が半額になっていたにもかかわらず、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の活動はむしろ増えていて、ディール数も100件以上増えているのです。別に多いから良いという話でもありませんが、何が言いたいかと言うと、経済の状況にかかわらず、そういった活動ができていること自体は非常に好印象だなと思っていて、むしろ、バリュエーションなど価格が落ち着いてきた今年来年あたりにこういった活動をどんどんダブルダウンと言いますか、もっともっと活発化させていったらいいのかなと個人的には思っています。

傍島:チャンスですよね、本当に。

小川:ありがとうございます。では、Q&Aが早速来ているようですので、このタイミングでよろしいですか。

石井:はい。

視聴者からの質問

小川:ありがとうございます。「日本企業が情報をつかみきれていないということなのでしょうか。それとも、おっしゃっていた意思決定のスピードなのでしょうか」というご質問ですが、いかがでしょうか、石井さん。

石井:理由はいろいろあると思います。情報がつかめていないということは正直あまりないと個人的には思います。そこに差は大きくはないと思っています。ただ、組織体制に差はあると思います。特に例えばここに挙がっているCVC4社は、どうしても社長が「行け」と言ったら行けるのかと言うと、なかなかそれだけでは決議がおりなかったりします。特に、例えば先ほどの案件で「$200Mで買収します」という場合、「そんな数年前にできた会社を買って本当に大丈夫なのか」といった既存のデューデリジェンスをするためのプロセスが、スタートアップという生き物、会社に基づいた意思決定のプロセスになっていないので、どこかで引っ掛かったりして、決定をスピーディに行うのは非常に難しく、そこがネックだと個人的には思っています。傍島さん、別のご意見はありますか。

傍島:そうですね。タイミングはもちろんありますし、必ずしも意思決定が遅いかと言うと、そうでもない気もします。先ほどもお話にあったように、本当にかすっているということです。数もたくさんある中で成功をつかむというのは難しく、シリコンバレーの中にいる現地の会社の人たちも一生懸命もちろん取り組んでいますので、日本企業だけに限ったことではないと思います。言いたいのは、本当にかすっていますので、あとは最後、このチャンスをどうつかむのかというところです。そこについては、おそらくこのあとのプレゼンでもあると思いますので、お話してもらいたいなと思っています。

小川:ありがとうございます。ご質問があと3問来ているのですが、このままご紹介してよろしいですか。

傍島:おそらくご質問いただいているところも、このあとのプレゼンにいくつか出てきますよね。進めてもらってもいいかもしれませんね。

小川:そうですね。分かりました。では、お願いいたします。

石井:すみません。質問が見えていないので、その辺はお願いします。先ほどスピーディにという話がありましたが、ここで言いたいことは、CVCは通常ベンチャーキャピタルよりももっと時間がかかると言われていたのですが、今はもう30日以内で投資の決定をできるような企業も増えてきています。そういう意味では従来のベンチャーキャピタルと変わらないスピード感で意思決定ができているかなというところです。これはご参考までですが、いろいろな企業がいろいろな目的でシリコンバレーに出ていますというところのマッピングでした。

このまま進んでしまって大丈夫ですか。

傍島:はい、お願いします。

小川:お願いいたします。

ジャパニーズカルチャーと現地文化 「一見さんお断り」

石井:ジャパニーズカルチャーと現地文化というところですが、シリコンバレーに最初にいらっしゃった方々は、シリコンバレーってすごくマジカルな土地で、何でも見つかって、ここに来ればユニコーンにも会えて、新しい事業がバンバン生み出せるのではないかという、情報はいくらでもネットに載っているわけですから、「少し話を聞きたい、会いたい」と打てば会えるのではないかと思われる方は少なくないと思います。あるいは昔は絶対にそうでした。でも、全然そんなことはなくて、実際に来ると「一見さんお断り」のような文化があります。

傍島:(笑)

石井:「何がしたいのですか」「What can I do for you?」とよく言われたりもしますが、基本的にgive & giveの話はあるのですが、takerだけの姿勢で来る、要はお勉強のような、日本人はすごくお勉強が大好きなのですが、お勉強する方はあまり好かれないです。最初は、もちろんフェーズはあるのですが、きちんと真摯に相手への尊重や信頼、紹介を踏みにじらないといったところはすごく重要かなと思います。

傍島:この絵は分かりやすいですね。私は京都出身ですので、すごく「あいたたた…」と思うような絵ですけれども。(笑)

石井:そうなのですか。(笑)

小川:すごい。さすがです。

傍島:確かにね、一見さんお断り。すごくフレンドリーなカリフォルニアの人が多いのですが、でも、やはり一見さんお断りの雰囲気はプンプンしていますよね。

小川:そうなのですね。

傍島:怖いですよ、本当に。(笑)

石井:(笑)そうですね。そんな中ですので、ビジネスカルチャーの違いのところですが、日本では「取りあえず会ってみたらいいではないか」と、なんとなく面談をしたりしますよね、「飲み会をしてみてはどうか」とか。飲み会もちなみに嫌われています。基本的には了承されないと思います。また、決裁権がないからということで保留や後回しにするのも基本的には難しいです。「いつ分かるのか」というのもなかなか明確に出せない場合が多いので、スタートアップ側からのレピュテーションが悪くなってしまうというのはあります。

やはり日本企業の判断の軸となるところは、皆さんご視聴の方々もよくご存じだと思いますが、減点方式だったり、失敗のリスクを考えていかにそれを最小限にするかというような視点で物事を捉えることが多いのですが、基本的にスタートアップは失敗すると思わないと駄目です。新規事業は7割8割、下手したら9割つぶれる覚悟で取り組んだほうがいいので、それで言うと「やらない」という選択肢になるのは普通に考えれば分かります。ただ、そこをどうやってbetできるか。会社として「その失敗が9個8個失敗してもいいから、その1個2個に賭けてみる」というぐらいの姿勢がないとなかなか、例えば失敗失敗失敗…と来たときに「やはり駄目ではないか!何をしているのだ!」と言って終わってしまうということもあるかなと思います。

傍島:確かに。「取りあえず会ってくれ」というのがまずないですからね。「取りあえず」ということはないですものね。

石井:そうですね。「取りあえず」はないです。(笑)

傍島:「何のために会うのですか」と普通に聞かれますので、ここら辺は割とカルチャーの違いは確かにありますね。当たり前のようにこちらは言ってしまいますからね。

石井:そうですね。VCや外資系の場合は、右側に書いてある通り、基本的に例えばスタートアップが「まだ協業している企業がない」と言うと結構好まれたりします。欧米の企業は「では、やろうよ!」というような、「ファーストペンギン、一緒に最初の事例をつくろうよ」となったりします。日系企業さんは結構リスクを恐れるので、日本企業さんは「ほかに組んだことありますか。あるならぜひ話しましょう。ない場合はまた情報交換しましょう」という感じが結構多かったりします。

VCや外資系企業の場合は、やはり決裁権を持った人が、その場で「もう契約書とかいいよね」と言って取りあえずホワイトボードに「Yes、Yes」と書いて握手したのを写真に撮って、それでよしとするということも本当にあります。私も、オファーを例えばテキストメッセージでもらったりしたこともあります。「取りあえず文書あるいはボイスメッセージで落ちていればいいよね」というような、本当にそういうのがベンチャーディールでもあります。

ですから、やはりスピード感と、あとは失敗するリスクは当然あります。というのは、リスクがないようなところは逆にほかが手を付けていたり、十分気付いていたりするので、そんなところで戦ってもスタートアップのような成長はないわけですよね。そういったところが根本にあるのかなと思います。

質問にいきますか。

視聴者からの質問(2)

小川:ありがとうございます。すみません。では、ご質問を1つさせていただきます。「(結果的にですが)それだけの大きな投資先チャンスを前にしながら、チャンスに気付けなかったのでしょうか。それとも、チャンスと気付きながらも進められなかったのでしょうか」というご質問なのですが。

石井:意外とその状況や会社さん、極論を言いますと人によると思います。スタートアップミーティングに20名とか入られる会社さんもありますので一概には言えないですが、基本的にはおそらく一番最初に会っている方や駐在員の方、その部署の方、イノベーション部署の方がいらっしゃると思います。ただ、チャンスに気付けていないということはあまりないと思っています。最初はあるかもしれないですが、ある程度の数を見れば、同じようなことをしていても「ここは今まで見た中ですごくクオリティが高そうだな」と分かると思います。例えば「合う」場合は、この人はすごく合うというのは、コミュニケーションの仕方や見せ方、レスポンスの感じ方から分かると思います。これは別に何が正解かは一概に言えないのですが、同じようなことをしていても、どこの人と相性が合うか、信頼できるかというのはあるわけですよね。それで逆に「うちと合う」というのがあるはずなのです。

少し例えは悪いかもしれないですが、合コンやお付き合いする人を見極めるときではありませんが、スタートアップの世界でも、自分に合った人、合った会社というのがある程度あるのです。それを一緒に成功に持っていけるかというところで、先ほどの傍島さんのコメントにもありましたように、個人的にはもちろんビジネスモデルや人、経歴など「ここがずば抜けている」というのもあります。ただ、大企業のほうがあれだけの資金があって、チームがあって、リソースがあってというのであれば、正直スタートアップより全然リソースはあるので、そこに「一緒に取り組もうよ。一緒に成功をつくっていこうよ。なんなら知り合いのここも紹介するし、ここも紹介するし、一緒にこのスタートアップをユニコーンまで」と言って先ほどの規模まで上げることができれば、それはできると思っています。ただ、なかなかそこのコミットと言いますか、巻き込み力が弱いかなと思います。

傍島:確かに。いただいた質問は非常に良いご質問だと思いますが、難しい質問ですよね。できることとできないことをはっきり伝えて、「ごめん。これは俺はできないけれども、今こういうふうに相談するから」と、できることとできないことをわりとはっきりさせて、先方とどうやっていったらいいかといったところを現場で握る、そういったところはわりと大事かなという気がしますね。その場で「少し持ち帰って検討してまた戻ってくる」というようなことになってしまうと、もう逃げられてしまうという感じですかね。

小川:ありがとうございます。それでは、石井さん、引き続きお願いいたします。

石井:はい。これですね。これも似たような話ですが…。そうですね、先ほどの話ですね。

傍島:同じですね。

重要となるのは「個人・ヒト」

石井:日本のビジネスのマインドで来ると、やはりシリコンバレーではいろいろと疑問に思われることがあるというようなことかと思います。よくこれは実際に弊社もオープンイノベーションをうたっていますが、あくまでこれは仮定であって、基本的にはスタートアップと関わる、あるいはシリコンバレーで何か新しいことをするというのはリスクが絶対的につきまとうわけで、そのリスクに対する捉え方や、本当に変わらなければいけないのかといった、リスクをどこに置くかですよね、変わることをリスクと置くのか、変わらないことをリスクと置くのか、そこがおそらく一番決定的に違うと思っています。だからこその細かいことはいろいろあるのですが、いろいろなところが嚙み合わなくなってきます。ですから、何がしたいのか、どこを変えたくてどこを変えたくないのか。逆に日本企業さんはすごく良いものを持っているところもたくさんあると本当に思っています。ですから、守るべきところは守り、一方でコアではない、あるいは改革してもいいよなと思うところはどんどん積極的に改革をしていくことは結構大事かなと思っています。それを会社が実現するためには、結局は個々人の強い意思や、これはもちろん役員さんや法務、リスク管理の方もそうですが、結局は現場の人を含めていろいろな方々が少し自分の日々の業務以上の関心やコミットをしてみる、あるいは少し違うことをしてみるというのをしていく必要があるかなと思います。それこそがオープンイノベーションを可能にするマインドセットチェンジのところかなと思ったりしています。

傍島:確かに。人は重要ですよね。会社というより人が重要な気がしますよね。熱量と言いますか、やはりシリコンバレーにいる人たちも人間ですからね。英語ができなくても、目の前で本当にやりたいという姿勢を示すと聞いてくれますし、なんとなく、会社というよりは本当に目の前にいる人を見られているなという気がしますよね。

石井:本当におっしゃる通りだと思います。少しだけこのスライドとは関係ない話をしますが、やはりスタートアップを評価するときには紙で見がちですし、それはもちろんそうなのですが、結局でもどうなるか分かりません。それこそコロナのような状況があったり、サプライチェーンに届かなかったり、いろいろな困難がありますよね。その中で、そのファウンダーたち、この人たちなら、このチームなら、ずっと続けていってくれるなとか、あるいはこれは大企業さんも同じで、この人たちがそんな状況下でも諦めずに進み続けたとか、そういったところが結果として成功を収めるようなことになってくるだけの話です。ですから、諦めない姿勢で不況の状況や悪い状況下の中でもポジティブに捉えて、オプティミスティック(楽観的)に前進していくという姿勢が一番大事なのかなというのは、個人的に周りを見たり、いろいろな人と話したりする中で思っていることですね。

傍島:“「ヒト」が変われば「会社」も変わる“とさらっと書いてありますが、やはり人、個人のところから結構変わっているなというのは、おそらく日本にいるときよりも、こちらに来てからのほうが感じますかね。人で動かしていって会社が変わってくるという、この言葉はすごく分かりますね。

石井:そうですね。昨日たまたまニューヨークで、ケネディスクールに行っていた財務省の人がいるのですが、正直、同世代がどんどん省庁や政府から抜けている中で、彼は「絶対に給料とかいかにブラックだからという理由では辞めない」と言っていました。なぜかというと、普通は環境のせいにしたり、このカルチャーでは無理だと会社や組織のせいにしがちなのですが、そこは自分は違うと信じたいし、違うようにしたいと言っていました。自分が変われば結局周りの態度や対応も少しずつかもしれないけれども変わっていくと思うし、それで変わらないだろうと思われている組織を動かすことができれば、もっともっと大きいことができる、それはすごく素晴らしいなと思っている、という余談でした。

小川:ありがとうございます。

石井:では、シリコンバレーの人はどうなの?というところで、1つ「個人」があると思います。ここになんとなく熟語でまとめているのですが、好きな仕事をしているという方がすごく多くて、「パッションがないと、むしろほとんどがつらいので」と皆さん言っているのですが、継続できません。ですから、それを支える情熱ですよね。これは駐在員の方々もぜひ持ってほしいなと思いますが、マイノリティであっても「絶対にこれを成し遂げる」という思いは何よりも強いかなと思います。社内外の人を動かしますし。ですから、そういったポジティブな職場環境と言いますか、みんな同じような方向を向いて、「チャレンジが多いだろうけれども、一緒にやっていこうぜ」というところはシリコンバレーらしいかなというところがあります。あとは結果主義と書いてありますが、プロセスももちろん大事ですが、結果が非常に重視されますね。特に、例えばエンジニアや営業もそうかもしれませんが、「これをやって」というゴールがあって、それをどう達成するかは、別に個々人のどういうふうに行動しようか、どういうふうに売ろうが関係なくて、それが成功すればいいわけです。むしろ期待されているのは、性格や強み、スキルが違う個々人の中でいかにうまくクリエイティブに想像力を持ちながらその結果を達成していくかというところで、そこがやはり個の成長を助長するような仕組みかなと思います。

2つ目、ビジネス場面においてですが、やはり先ほどからお伝えしている通り、時間の使い方、スピード感、それを可能にする決裁権、決断力というところです。やはり人の成長には「いかに決断をしてきたか」といった話がありますが、スタートアップは本当に正解がまったくない中で、取りあえず決断しなければいけないですよね。いつファンドレイズする、いくらにする、どういう人を入れる・入れないなど決断の嵐で、全部が全部そんなに正しい選択ができるわけないと思います。でも、失敗したら失敗したで次にピボットしていく、では次は変更するという決断をする、もしくは切るという決断をする、あるいは受けるという決断をする、その繰り返しが結局はそういった成長カーブをつくっていくのだと思いますが、そういったカードは往々にしてあるかなと思っています。ですから、責任がきちんと分けられていますし、満場一致という概念もないですし、自分の時間、相手の時間も非常に尊重しています。基本的に面談は本当に5分のミーティングも結構ありますし、長くても30分で、必要であれば延長します。そういう感じが結構日本と違うかなと思いますね。あとは不必要な人を入れないというのもそうです。

スキルセットというところで、シリコンバレーでは実は平均勤続年数が1.5年~2年ぐらいですが、すごく入れ替わりが早いです。ですから、スタートアップ、大企業問わず、転職は結構当たり前です。評価や実績も自分のロールでどれだけ出せたかですし、実際にそれをパフォームした場合は同僚や元上司も次の会社のリファラルを書いていくような、そういういろいろなところで循環していきます。ですから、経験すればするほどきちんと評価されます。それは社内に限らず評価されるというのはだいぶ違うなと思いますし、だからこそどんどん上を目指して人々は転職してきている、スキルを磨いていく、上げていくというような文化があるかなと思います。

傍島:確かに。

石井:進んでしまって大丈夫ですか。

傍島:はい、お願いします。

小川:お願いします。

大手企業における様々なイノベーションチームの枠組み

石井:では、日本企業と成功事例ということで、大前提としていろいろあります。いろいろありますが、今回ご紹介させていただく2件は一応ご了承をいただいていてパブリックな事例ですので、いいかなと思っています。

その前にイノベーションチームの枠組みです。これはいろいろなかたちがありますが、これは目的をどこに置くかによって結構変わります。例えば事業部に置く、真ん中の事例のような部門別の場合、基本的に事業部の本業というのがあるので、その本業を例えば効率化する、DXする、コストを下げるといった本業に紐付くかたちでの何かしらのイノベーションを見ていますので、ある種短期的というか、すごく分かりやすいですし、身になりやすい、額として出やすいです。一方で長期的なイノベーションや本業の次を考えなければいけないとなると、必ずしも直接的にそれが達成可能かと言いますと、難しかったりするのかなと思っています。イノベーション部を外に置いている場合は、結構そこと関係なくと言いますか、あまり事業部や事業の影響をそこまで受けずに「好きなことをしていいよ」と、直接社長にレポートするといった体制を取っていたりします。ハイブリッドというのは両方で、やはり両方大事ですよね。短期的にももちろん大事ですし、一方でやはり別枠で置くような例えばR&Dの部署もそうですよね。10年後の事業をつくるために研究するわけですので、一緒にスタートアップと進めたり協業したりというのはすごく向いているかなと思っています。京セラさんなんかはそういったことをしていて、そういったかたちが1つあります。

事例に行く前にまとめのような感じですが、まず、Executive Buy-Inというのがあって、基本的に先ほど話した通り失敗が前提ですので、上の方のサポートがないとなかなか難しいです。そのコミットメントが見せられる会社というのは非常に重要かなと思っています。また、先ほどからチラチラ出ていますが、このCross-BUというところで業務間、事業部間の連携や窓口というのは非常に大事になります。このあとの事例もそういったキーポイントがあっての成功事例というところです。ですから、結構タスクフォースが社内にあったり、社内横断、組織横断したチームだったり、そういったニーズをきちんと拾ってまとめるような役割の人がいることが大事です。あとは予算のところですね。Localizeと書いてあるのは、シリコンバレーでということであるので、現地の権限で使える予算、これはアメリカ支社でもいいですし、シリコンバレー支部でもいいですし、スタートアップと連携する際にPOC費用等あるのですよね。Proof of Conceptと言いますが、まずは本当にスタートアップの言っていることが本当なのかという検証をしなければいけないのですが、そのための予算が事業部でそれぞれあったり、あるいはイノベーション部としてあったりということが大事ですよね。かつ、できれば「何をもって達成とするのか」ということもきちんと決められると非常にやりやすい、改善しやすいです。そして…。

傍島:Decision-makingですね、最後。

石井:意思決定のところですね。やはり、もちろんスピーディにというところは大事ですし、それを可能にする法務、経理、サプライの物流のところで、スタートアップの事例においては400ページのサプライヤーコントラクトではないものを用意する等、この辺りはホンダイノベーションさんは2ページの契約書を用意したりと、そういった工夫は必要かなと思っています。

傍島:先ほどの組織のところはすごく大事だなと思います。「どれが正解なの?」とよく聞かれるのですが、どれも正解なのですよね。おそらく会社の置かれている状況によって、どのタイプでいくのかというのは大事ですが、意外とどういう組織設計をしたらいいかを考えられていない方が逆に多いです。まずは「なんとかやってこい」という感じになるのですが、やはりどういうフォーメーションを取るかというのは置かれている会社によっておそらく違うと思いますので、ここの設計をきちんとおこなって、役員の方や上層部の方ともきちんと握って進めていくことが大事かなと思いました。これはすごく良いスライドで、下にもロゴがありますので、いろいろなところを研究するのもいいかなと思いました。

日系企業成功事例(MS&AD、Koito [小糸製作所])

石井:ありがとうございます。では、1つ目の事例です。MS&ADさんは何年もお付き合いさせていただいているのですが、彼らはJUPITER社という通信衛星のデータを含む多様なデータを抽出してAIで分析している、自然災害を予測できる天候系の分野のスタートアップです。近年、話題かつ事実としてあるように、気候変動に伴ったいろいろなリスクがもちろんあります。洪水や火災、風害というところで全世界を90メートル単位の精度で分析できるシステムです。これを用いて、インターリスク総研の会社が実際にサービス提供を行っています。このストーリーが非常に面白くて、実際にインタビューをさせていただいたりしていたのですが、最初はシリコンバレーに担当者の方がいらっしゃって、それこそ「すごく良い会社だ」という情報はありましたので、「ここだ」と思っていてアプローチしました。応答はなしです。応答なし、応答なし、応答なし…。全然来なくて、「つなげてほしい」といろいろなところにあたって、こちらの現地の人やパートナー経由で紹介してもらうということで、それにも数カ月時間がかかりました。「一見さんお断り」という、先ほどの信頼というところですよね。別に彼が何か悪いことをしたわけではまったくなく、そういったカルチャーがありました。それを実際に面談にこぎつけ、かつ、タイムラインは端折りますが、MS&AD Venturesさんとしても投資をおこなって関係性を築いた上で、実際にジュピター社の、断り続けていたにもかかわらず、社長を日本まで招き、誘致し、結果としてはベンチャーズチームを超えた日本の本社かつグループ会社のそういった気候変動を特に取り組んでいたところと協業したというところで、やはり先ほどの観点を押さえたような事例かなと思っています。

また、スライドには落とせていませんが、彼らは非常に面白い取り組みもされていて、ガレージプログラムと呼んでいますが、先ほどのビジネスユニットから持ってくるというのが結果につながりやすいという話もあったと思いますが、それを実際に実施しています。ビジネスユニットの方が全世界のグループでの課題や仮説を持って実際に中長期の出張でシリコンバレーに来るのです。本当に最短でも数週間、基本は数カ月~1年弱に及んだりします。なおかつ、ここが非常に面白くて、先ほどの組織図にもありましたが、シリコンバレーには事業部からと別途イノベーションチームというのがあり、かつCVCチームがあったりするわけですよ。そこの3つの観点からその事業アイデアを評価する、かつスタートアップとの連携を促進するようなサポートをされているそうで、それは非常にユニークです。しかも、これを2017年から始めているというところで、個人的にはぜひご紹介させていただきたかった事例です。

傍島:目立っていますよね。非常にユニークな取り組みをされていますよね。

石井:そうですね。あとはやはり人がユニークというのもあると思います。皆さん、本当にユニークだなと思っています。

2つ目です。KoitoさんとCEPTON社という会社です。小糸製作所さんは、実は私は静岡出身なのですが、静岡に本社を置くところで、車のヘッドライトメーカーさんです。結構シェアでは本当に大きくシェアを獲る会社です。そんな会社が数年前にシリコンバレーに1人でやってきました。日本人の方で、スタートアップと会ったこともありません、英語も話せません。質問にもあったと思いますが、そういった方でした。ただ、バイリンガルの方を雇ったり、現地のUS支社から挙手性で人を採ってきたりして、小さい4人のチームをつくって、それぞれが英語ができる、日米できる、技術が分かる、そういったそれぞれの強みはありつつチームをつくりました。かつ、先ほどの一見さんというページの前にありましたが、「われわれはこんなにすごい会社です」というブランド力は全然シリコンバレーでは通用しませんので、「Koitoとはこういう会社です」というアングルではなくて、単純に彼らが見ていた「LiDAR(ライダー)」、センサーの会社を技術面から行うミートアップと言いますか、お勉強会のようなものを開いたのです。それは毎月第4水曜日と決めて、Plug and Playの1階のところで、ピザとビール、コストコで買うとすごく安いのですが、ああいうものを配りながら、「センサーフュージョンミートアップ」というのを開始して、最初は6名など、本当に10名以下でしたが、雨の日も冬の日も毎月必ず実施しました。それで結果的には数千人というところで、かつ切り口が技術ですので、スタートアップも大企業も、Waymoの人も来たり、NVIDIAの人も来たり、スタートアップのファウンダーが来たり、そんな中でCeptonという、これもベイエリアの会社ですが、LiDARの会社が比較的コストも安くかつ高性能のLiDARをつくるということで、そこと共同研究をするところから始まりました。実際に研究員、R&Dの方が行き来したりする中で、実際にシリーズCをリードするかたちでの大型投資をされました。これは金融系では例が多いと言う方はたくさんいると思いますが、製造系でここまで出せるというのは本当にすごいなと、先ほどの意思決定や経営陣のコミットメントにつながるかなと思います。今では物流を巻き込んで事業開発している感じです。

傍島:確かに。いい事例がありますよね。日本企業さんでもうまくシリコンバレーで取り組まれていらっしゃるところは本当に勉強になりますよね。

小川:ありがとうございます。石井さん、お時間があっという間に近付いてまいりまして、切りの良いところでぜひ最後のまとめをお願いできればうれしいです。

まとめ

石井:正直、スライドのままです。(笑)自社を理解することですね。特に強調したい点は、自社のリソースの明確化は意外とできない人が多いのですが、先ほどのように部門間連携、グループ間連携、あるいは役員さんとのリレーションシップ構築などいろいろなものがそれを可能にするために必要になってきますので、そういったことはぜひ日々の中で意識されて動かれるといいかなというところです。あとは基本的に今回のプレゼンで触れたところです。敢えて付け足すとすると、セルフブランディングです。人というのが今日一貫してキーワードだったと思いますが、「どこどこ会社です」ではないのです。やはり「誰々さん」なのです。ですから、「誰々さん」としてどこまでシリコンバレーでいろいろな人と話す中で、真摯に向き合ったり、時間を尊重したり、関係性を築けるか、それがゆくゆく会社のためにつながっていくのかなと思いますので、そういった点を意識して行動されるといいかなと思っています。

小川:興味深いお話をたくさんいただきまして、ありがとうございます。

(おまけ)「シリコンバレー出張ガイドブック2023」販売開始

傍島:チャット欄にPlug and Playさんのイベントの告知もリンクをお送りしましたので、ご覧いただければと思います。また、弊社から「シリコンバレー出張ガイドブック2023」を販売開始しました。すぐに使える出張サポートが満載で、業務効率を飛躍的に向上させることができます。是非ご覧ください。

小川:また、本日はたくさんの方からご質問をいただきましたが、お時間の都合上お答えできませんでした。別途お答えさせていただきたいと思います。

傍島:そうですね。

小川:皆様よろしくお願いいたします。

それでは、あっという間にお時間が近付いてまいりました。本日の01 Expert Pitchは以上を持ちまして終了とさせていただきます。石井さん、傍島さん、本日もどうもありがとうございました。

石井:ありがとうございました。

傍島:ありがとうございました。

小川:そして、最後までご視聴いただいた皆様もありがとうございました。またぜひ次回もご参加ください。それでは、さようなら。

以上


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