Global Contents Business
▼ こんな方にオススメ
- グローバルなIPコンテンツ分野に興味がある方
- CVC担当、新規事業担当
- 世界における最新のスタートアップの取組み状況と未来を知りたい方
▼ エキスパート
岩崎 貴帆 氏:MajiConnection, Founder & CEO
NY生まれ、鹿児島育ち。父親が観光業を営む経営者であることから幼少期からビジネスを身近に感じながら育つ。国際基督教大学を卒業後、メディア企業に就職。営業局にて、テレビ番組の営業調整や企画・交渉の仕事をした後に、MBA取得のためハワイに渡米。ハワイ州観光局や、シリコンバレーのアクセラレーターのインターンを経験しながら、ハワイのビジネスシーンに多く関わり、ハワイならではの”島系”イノベーションに可能性を感じ、MajiConnectionを創立。ハワイのスタートアップを日本に紹介するIsland Innovation Demo Dayの発起人でもある。
- 01 Expert Pitchとは?
- MajiConnection 岩崎 貴帆氏プロフィール
- 韓国のアイドルBTSの凄さ
- 日本のコンテンツビジネスは圧倒的に強い
- 世界に広がる日本のアニメ
- 日本のクリエイター不足とその原因
- 世界のアニメ人気分布
- アニメが海外でウケる理由
- ポケモンはなぜ強いのか?
- ソニーの買収戦略
- 淘汰されていく海賊版
- 気になるスタートアップ
- 日本のコンテンツをもっと世界に広めるためには?
小川:皆様、こんにちは。お待たせいたしました。本日は、ご視聴いただきまして誠にありがとうございます。それでは12時になりましたので、01 Expert Pitch第12回を始めてまいります。
「シリコンバレー発!世界のエキスパートが最新情報を日本語で解説」ということで、本日は「世界に広がる日本のコンテンツビジネスとその未来」と題しまして、日本が誇るコンテンツビジネスの最新状況と日本の未来についてお送りしてまいります。
さて今回は、MajiConnection, Founder & CEOの岩崎 貴帆さんをエキスパートとしてお迎えしております。岩崎さん、ハワイからのご参加ですよね。よろしくお願いいたします。
岩崎:よろしくお願いします。
小川:どうですか。暑いですか、そちらはやはり。
岩崎:そうですね。ちょっと最近暑くなってきましたけれども、たぶん日本より暑くないのではないかと思っています。
小川:はい。もう日本は梅雨明けをあっという間にいたしまして。
岩崎:らしいですね。
小川:はい。もうかなり暑い日が続いております。どうぞよろしくお願いいたします。
岩崎:よろしくお願いします。
小川:そして、本イベントの主催者でありますTomorrow Access Founder & CEOの傍島さん、本日もどうぞよろしくお願いいたします。
傍島:よろしくお願いいたします。
小川:そして、前回から本イベントのナビゲーターを務めてまいります、フリーアナウンサーの小川りかこと申します。どうぞよろしくお願いいたします。
傍島:お願いします。
小川:それでは早速ですが、傍島さん、この01 Expert Pitchの狙いなどを少し教えていただけますでしょうか。
01 Expert Pitchとは?
傍島:あらためまして、Tomorrow Accessの傍島と申します。よろしくお願いします。Tomorrow Accessという会社はシリコンバレーにあるコンサルティング会社になります。主にアメリカの会社さんや日本の会社さんのクロスボーダーのビジネスのご支援をさせていただいております。
この01 Expert Pitchは昨年から始めていますが、狙いとしては3つあります。1つ目の狙いとしては、日本とアメリカの情報格差を解消したいということです。いろいろな日本の企業さんとお話をしている中で、やはりシリコンバレーや世界の状況を知りたいという声をたくさんいただきます。こういった情報を迅速にお届けしたいというのが1点目です。
2つ目は正しい情報をお届けしたいということです。いろいろなニュースが日本に届いていると思いますが、若干現地で感じている温度感と違うなと感じるときがあります。そういったときに今回ご登壇いただく岩崎さんのように、エキスパートの方にきちんと解説をしていただいて、正しい情報を正確にお届けしたいというのが2つ目の狙いです。
3つ目は日本語での解説ということで、英語の情報はもちろんたくさんありますが、なかなか大変ですので、今回のように日本語できちんと解説をしていただいて正しく理解していただこうという、3つの狙いがあります。
今回も日本のコンテンツビジネスが世界でどう戦っていくのかというお話をしていただくことになっていますので、非常に楽しみにしてまいりました。本日もよろしくお願いいたします。
小川:ありがとうございます。よろしくお願いいたします。本日のイベントでは、皆様からのご質問を随時受け付けております。参加者の皆様、ぜひ岩崎さんにご質問のある方は、Zoom画面の下にありますQ&Aボタンからぜひご質問をお寄せください。随時私のほうで拾ってまいりますので、よろしくお願いいたします。
MajiConnection 岩崎 貴帆氏プロフィール
それでは早速ですが、岩崎さん、簡単に自己紹介からお願いしてもよろしいでしょうか。
岩崎:はい。本日のスピーカーを務めさせていただきます、MajiConnectionの岩崎 貴帆と申します。よろしくお願いします。今回のテーマとしては「世界に広がる日本のコンテンツビジネスとその未来」ということですが、まずは少しだけ私の自己紹介をさせてください。1983年生まれ、今年で39歳、アラフォーでございます。(笑)
小川:同じくでございます。(笑)
岩崎:よかったです! わざわざ言わなくてもいいかなと思いましたが、マイブームですのでお伝えさせていただきます。
小川:ありがとうございます。(笑)
岩崎:生まれはニューヨークですが、父親の都合により生後半年で帰国しましたので無念にも帰国子女ライフは叶わず、0歳から18歳まで鹿児島ですくすくと育ちました。ただ、人間不思議なもので、生まれたのがニューヨークというだけでアメリカにすごい強烈な憧れが小さい頃からありました。特にハリウッド映画が大好きで、周りの同級生がSMAPにキャーキャー騒いでいるときに、1人だけトム・クルーズのポスターを貼って、将来はアメリカ人と結婚する!という感じの変わり者でした。ここまで鹿児島にいて、アメリカの大学に入学したかったのですが、家族に反対されまして、当時一番アメリカっぽい大学が、国際基督教大学でした。ご存じですか。
小川:はい、もちろんでございます。
岩崎:最近、皇室の方等で名前が出てきていますが、国際基督教大学に入りまして、そこで初めていわゆる英語をかじったりしました。そのあと何度か渡米の機会をかなり試みましたがいろいろな事情で叶わず、大学卒業のときに当時エンターテインメント界ではトップだったフジテレビに入社して、いわゆるイケイケだったメディア業界で酸いも甘いも経験しました。
そして、2013年にどうしてもアメリカに行く夢を諦めきれず、MBA取得のためにハワイに留学しました。MBA卒業後はメインランドでエンタメ系などにフジテレビで営業をしていましたので、マーケティングや広告のエキスパートでした。そのため、それを生かして本土で何かしようかと思いましたが、ハワイは結構面白くて、いわゆるアメリカでありながら独得のエコシステムがありまして、在学中もハワイにある中小企業さんのコンサルをしたり、スタートアップの支援を行ううちに、大企業で大きな会社の歯車になるよりも自分で何かしたいという気持ちが生まれました。それで紆余曲折ありまして、2019年にこのMajiConnectionという会社を立ち上げて、スタートアップの支援をしております。
コンテンツという意味で言うと、いわゆる見た目だけで言うと、フジテレビというキャリアしかありませんが、個人的にコンテンツが好きでいろいろなプロジェクトに関わっていたり、私はすごくアニメが大好きで、そういうアメリカのコミュニティに属しています。そこで、今日は私の経験からの話というよりは、今あるデータやケーススタディ、それから記事ベースのリソースを使って、日本のコンテンツにおける未来的なことをお話できればと思っています。
小川:ありがとうございます。わくわくしてきましたけれども、ぜひぜひ、ではでは、スライドを使ってお願いいたします。
岩崎:できるだけ情報がたくさんになるように話していきたいと思います。
小川:ありがとうございます。
韓国のアイドルBTSの凄さ
岩崎:このBTSのニュースをご存じですか。
小川:すごい人気ですよね!
岩崎:そうなんです。実はこのニュース、BTSを知らない方もいらっしゃると思いますが、BTSは韓国のアイドルで、今、アメリカでもスーパーアイドルですごくヒットしています。コロナ禍で去年、一昨年ぐらいに、米国におけるアジア人差別が結構ひどいときがありました。その撲滅のためにBTSがホワイトハウスに招かれてバイデン大統領と話をするというニュースがものすごい話題になりました。
傍島:びっくりしましたよね。すごかったですよね。
岩崎:そうですね。アイドルが政治、ポリティカルゲームに入るというか、逆に言うと、アメリカ大統領も認める認知度や影響力という意味で言うと、韓国人で韓国語を話しているアイドルがアメリカのポリティカルゲームに影響力を与えるというのはすごいと思いました。彼らはそれ以前にも国連でパフォーマンスをしたり、グラミー賞にノミネートされたり、先日は休止宣言の話が出たんですけれども。
小川:そうですね。ざわつきました。
岩崎:そう。かなりざわついて、アメリカのPOPニュースでも非常に大きく取り上げられたり、実際に所属事務所の株が暴落したり、かなりの影響力を見せつけているアイドルです。スライドにあるように「BTSがやばい。」ということで、数字でどれだけヤバいかというのを。
小川:いい意味でやばいということですよね?(笑)
岩崎:はい。もちろんいい意味でやばいということです。(笑)一応、これは私が調べたものですが、まずはポストコロナで韓国の観光が明けたときに、BTS絡みで韓国を訪れる観光客が落とす観光の経済効果がおよそ100億ドル(約1兆円)です。
小川:すごい!
岩崎:ですよね。(笑)そして、韓国全体のGDPの貢献率が大韓航空会社より上、これは分かりますか。韓国で一番大きい航空会社よりもアイドルグループのほうがGDPの貢献率が上なんです。私が聞いたところによると、韓国のGDPの 4%ぐらいを占めているそうです。
傍島:4%!?
岩崎:そうそう。(笑)
小川:それは本当に「やばい」という感じですね!
岩崎:そうですね。普通の企業だったらIPOしていいぐらい、スタートアップだったらもうExitが終わっている感じですよね。BTSは先日、ラスベガスで4日間のコンサートをしたんですけれども、その経済効果がたった4日間で約165億円です。それから、ARMYはご存じですか。
傍島:知らないです。
小川:初めて聞きました。
岩崎:私の周りもARMYがすごく多くて。これはBTSが認めるコアファンで、ジャニーズのファンクラブのようなイメージです。正確な統計はないのですが、ARMYが世界中に4080万人いると言われています。
傍島:すごい!
岩崎:もちろんファンクラブですので年会費があるんです。
小川:なるほど!
岩崎:国によっていろいろ違いますが、日本は6,200円、アメリカはレベルがありまして25ドル~30ドルぐらいです。ちょっと計算したくないですが…、したくないというか、できないというか。(笑)
傍島:(笑)
岩崎:4080万人×この数字ですので。
傍島:5,000円としても年間2,000億円ぐらいということですか。
岩崎:そうなんですよ。
傍島:すごいな!
日本のコンテンツビジネスは圧倒的に強い
岩崎:このサブスクリプション的なビジネスは、アイドルなのにスタートアップのようなビジネスモデルをしています。BTSがよく日本のメディアで語られるときに、「BTSがすごいのに日本は何をしているんだ」という論争がよく起きるんですね。
傍島:最近多いですね。
岩崎:そうなんですよ。というのも、アイドルの歴史としては日本のほうが長いというか。例えばジャニーズや安室奈美恵さんは全盛期のときは台湾や韓国でも超有名だったりして、例えばBoAといった韓国のアイドルが日本で売れるために日本語を勉強していたと思います。そういう感じで日本のほうが圧倒的に勝っていたのが、いつの間にか追い抜かれた感じというか。BTSに追随してBLACKPINK、それからSugarも最近出てきて、女性グループですけれども。
小川:女性グループですね。
岩崎:女性グループです。彼らも先日、LA、カリフォルニアでコンサートをしてチケットが爆速で売れたと聞きました。そこには韓国が1997年に通貨危機で経済的に困難なときにいろいろ財政を変えていって、エンタメ文化の国際化に国として投資もして盛り上げてきたという、わりと長い歴史を費やしてきた面はありますが、それでもどうしても日本の人がBTSのすごさを見ると、「なぜ日本にはこういうコンテンツがないんだ」と嘆かれることが結構あるんですね。ただ、実はそうでもなくて、コンテンツの輸出量としては日本のほうが圧倒的なんです。
傍島:2つのグラフの縦軸は、金額が同じですもんね。
岩崎:そうです。これはコロナ前ですので、多少数字に変化はあると思いますが。
傍島:でも、全然違いますもんね。絵で見て全然違うのが分かりますよね。左側(韓国)は数字的には日本の1/3~1/4ぐらいですもんね。
岩崎:そうなんです。これは実は『推しエコノミー』という本を書かれているエンタメ社会学者の中山淳雄さんが、テレビ東京のYouTubeの番組に出られたときに出していた表示ですが、実はBTSが数字的にすごいと言っても、日本のほうがトータルではかなり勝っています。かつ、これを支えているのは、見ていただくと分かると思いますが、ほぼアニメとゲームなんですね。
ゲームは何となく想像がつきますよね。ニンテンドーや、ソニー、プレステ5などコンソールの会社もありますので分かります。アニメはおそらく皆さんピンと来ないと思いますが、どうですか。アニメがいかに流行っているかというのは、アニメのすごさというのは日本人が感じていたりするのか、そういう意味で言うとどうですか。
傍島:どうですかね。日本ではイメージあります? 小川さん、アニメがこんなに世界に広がっているという印象はありますか。
小川:そうですね。私はあまりアニメには詳しくないんですけれども、やはり『鬼滅の刃』はコロナ禍ですごく流行りましたし、そういったイベントがメッセ系のところであるとやはり人が大勢集まるというのを拝見していると、お好きな方はすごく盛り上がっていらっしゃると思います。
傍島:日本ではそうですよね。それがアメリカだのヨーロッパだのアフリカだの、いろいろなところで日本のアニメが見られているというイメージはありますか。
小川:でも、私が子どもの頃に見ていた『ドラゴンボール』が翻訳されて世界中の本屋さんにあるというのを何かで見たりして、「わー、すごいな」というのはあります。ただ、そんなに普段は触れていないので分からないんですけれども…。岩崎さん、いかがでしょうか。
岩崎:はい。今日は良い機会ですので、私が大好きなアニメが世界にどれぐらい影響力を今出しているかというのを数字と記事で紹介させていただきたいと思います。
小川:お願いします。
世界に広がる日本のアニメ
岩崎:「Japanese ANIME」ということですけれども、最初に紹介する記事は、アニメがいかに人気で、かつ、日本が他国をいかに圧倒しているかというのを数字で表した記事ですね。この記事のリソース元はParrot Analyticという会社で、私も初めて知りましたが、これは比較的最近できた会社です。エンタメ系のデータを集めて、テレビで言うと視聴率的な感じですかね、そういうことをしているデータアナリティックスの会社です。DreamWorks Animation LLCやソニー、MGMなどの主要メディアを顧客に持つ信用のあるリソースです。
この記事が何を言っているかと言うと、「最も視聴者に需要のあるTVショー」ですので全体です、アニメ部門の1位ではなくて、全体のテレビショーとして『進撃の巨人』が1位です。
傍島:全部で?
岩崎:そうです。
傍島:すごい!
岩崎:demand(需要)ですので、見られているかと言うとちょっと分かりませんが、要するに「一番見たいと思わせる」というのが『進撃の巨人』が1位です。
ここの記事がいろいろアニメ全体の需要と供給に関して話していて面白かったのが、世界でのアニメコンテンツ需要が占めるシェアが去年4.2%から7.2になっていると。つまり、どういうことかと言うと、エンタテイメントにはいろいろなジャンルがありますよね、SF、コメディ、ホラーなど。そのジャンルの全体の需要を100%だとすると、アニメが占める割合が7.2%ということです。7.2%と言うとそんなに大したことないと思うかもしれませんが、cartoonとは別なんです。キッズ向けのcartoonは別のカテゴリーで、アニメというジャパニーズスタイルのカテゴリー、大人向けというか、全年齢対象向けのアニメというカテゴリーを1つ確立させていて、その需要が7.2%ですので、かなり大きい数字ということになるんですね。
傍島:確かに。
岩崎:また、2021年の非英語コンテンツの世界視聴の需要は英語コンテンツの需要の2倍、これはどういうことかと言うと、ちょっと分かりにくいのですが、今まではやはりハリウッドがメインでしたので、英語で制作されるもののコンテンツ需要が多かったのですが、わりとそれ以外の、KドラマやK-popも入ってくると思いますが、英語を話していないコンテンツ事業が、英語のコンテンツの2倍になっている。要するにハリウッド離れが起きていて、わりとコンテンツに関する趣味趣向が多様化していることがこの数字から分かります。
小川:確かに最近、韓国ドラマのほうが見るようになっているかもしれないです。(笑)
岩崎:そうなんですよ。アメリカ人も、最近もうほとんどアメリカのドラマの話はなくて、友達と会うと最近見たKドラマの話になりますね。
小川:そうなんですね。
岩崎:最近見たKドラマか、最近見たアニメの話にしかならなくて。アメリカの映画はやはりビッグネームが出てくると、例えばNetflixで『Stranger Things』という大ヒット作品が最近出たり、マーベル系ですね、スーパーヒーロー系が出ると、見たという話がチラッと出ますけれども。みんなKドラマかアニメの話しかしないので、そういう需要の多様化が出てきていると思います。
日本語コンテンツに関しては83%の増加ですので需要が183%、ほぼ1.9倍です。意外に韓国語コンテンツは37%増ですので137%です。つまり、日本語のコンテンツの需要のほうが高いということがここで分かります。もちろん、この日本語のコンテンツの需要のほとんど、90%がアニメになります。
傍島:なるほど。
岩崎:こういう感じで、いかにアニメのすごさというか、今の市場の需要という意味で言うと、これが結構面白い記事だったなと思います。
傍島:数字で見せてもらえると非常に分かりやすいですね。感覚的には「韓国すごい」と語られますが、確かに日本の数字はすごいですね。
岩崎:やはりどうしても身近に自分が楽しんでいるもの、私も友達の話を聞いてすごさは感じるのですが、実際、私も今回リサーチしてみて、数字で実績が出ているというのはすごいことだなと思いました。
もう1つ紹介します。これはハリウッドレポートの記事ですけれども、先ほども名前が出た『鬼滅の刃』はアメリカでもかなりヒットしていますし、世界的にかなりヒットしています。国内のことになりますが、この記事が紹介していたのは、コロナ禍でアメリカの映画の収入が80%減ったんですね。やはりロックダウンになると映画にも行きませんので。一方、日本では45%減、半分ぐらいでとどまったと。その理由が『鬼滅の刃 無限列車』のヒットのおかげで日本の映画界はもったということが書いてありました。また、Japanese ANIMEで映画の興行収入で一番売れたのが『鬼滅の刃』で、ダントツ1位の514Mドルです。514Mドルってどれぐらいですか。
傍島:今、日本円ですと約650億円ですね。
岩崎:そうですね。650億円ぐらいです。うち日本が多くて365Mドルで、アメリカでも48Mドルというところです。これは比較のもので2位が『千と千尋の神隠し』なんです。『千と千尋の神隠し』っていつ日本で映画が放映されたか分かりますか。
小川:かなり前ですよね。
岩崎:そう。2001年なんですよね。
傍島:20年前。(笑)
小川:そんなに?
岩崎:そう。かつ、ジブリの作品は、特に中国で宣伝しなくても売れまくるコンテンツでかなり人気なんです。かつ、『千と千尋の神隠し』が世界中で放映されたときはまだYouTubeがなかったんですね。今のようにNetflixもありませんでしたから、結構、映画全体がわりといい感じのときに出たこの数字を2年で抜くということを成し遂げたんですよね。そう考えると、この短期間でいかにアニメが熱狂的なファンをつくっているかということが分かると思います。
傍島:確かに。
日本のクリエイター不足とその原因
岩崎:また、先ほどアニメの世界需要という話をしましたが、コロナの間にやはり需要がすごく伸びていて、2年間で118%増=218%ですので、アニメを見たい人の人口が2倍以上世界で増えていることになります。
今までアニメの需要に関してかなり明るいニュースをお伝えしてきましたが、実は少し暗いニュースもあって、需要がノリに乗っている中で供給が間に合っていないという話があります。その原因がアニメクリエイター不足です。クリエイター不足に関連して起こっているのは、こんなに儲かっているのに日本人のアニメクリエイターの方々になかなかお金が落ちてこない、かつ、アニメをつくる会社は過酷な労働環境なんです。すごく丁寧に描かなければいけない、かつ、技術も要る、なのに低賃金なんです。
傍島:それは意外ですね。
岩崎:そうなんです。かなり辞めてしまう方が多い。このハリウッドレポートでは具体的に給料の話についても書いてあって、本当にそれだけしかもらっていないの?というような値段が書いてあって。
傍島:なるほどな。
岩崎:また、この記事によると、日本のアニメクリエイターが全体で5,000人ぐらいしかいないらしいです。アメリカで有名なピクサーという会社がありますよね。あそこは1社で1,200人ぐらいいるんです。
傍島:なるほど。
岩崎:もちろんこれは、クリエイターが1,200人なのか、社員全体でどうなのかは書いていませんが、日本vsピクサーでほぼ1/5ということを考えると、もう少しクリエイターを育てるための努力もしなければいけないと思います。どう思われますか。
傍島:確かに日本はお金儲けをするのが下手というか、やはりクリエイターさん、モノを創り出した人にお金を回す仕掛けができていないんだなという感覚がありますよね。どうしても、そこが報われない。日本は「汗水垂らして働いてなんぼ」というような世界がわりと美徳だったりするところがありますよね。
岩崎:そうですね。
傍島:そこはやはりお金儲けが下手なんだろうなというのはあるでしょうね。
岩崎:そうですね。しかも、斜陽産業だったりしたら仕方がないかなと思いますけれども、せっかくノリに乗っている業界ですので、ちょっと変えたいなという気持ちはありますよね。
補足ですが、先ほどの需要と供給という意味での数字についてもう少し説明すると、先ほどジャンル別で見ると7.2%に上がっていると言いましたが、これは去年のデータで、いろいろなジャンルの中でアニメは需要があるコンテンツとして現在3位です。1位がCrime Drama、刑事ドラマです。2位がSitcom、コメディです。そして、3位がアニメ、これは先ほども言いましたがキッズ向けとは別です。4位がSF、5位がキッズ向けです。アニメは世界需要の3番目で、しかも、SFよりも上なんだと、これはすごいなと私は思います。
傍島:確かに。
岩崎:スターウォーズを見たい人よりアニメを見たい人のほうが多いんだなと、そう考えるとすごいなと思います。また、需要と供給という意味で言うと、もう1つ面白かった数字が、先ほど話しました「需要があるのに対して供給が足りていない」という、そこの差が33%あるそうです。要するにアニメを見たい人と供給量に33%の開きがあるという意味で言うと、先ほど話した通り、アニメクリエイターにたくさんインセンティブを渡すなど労働環境をもう少し改善して、もっとたくさんいいアニメをつくってもらうと、世界市場に33%のまだ余白があるという意味に捉えられると思います。
傍島:まだまだ伸びるということですよね。
岩崎:そうですね。伸びしろがあります。
傍島:出し手が増えれば。
世界のアニメ人気分布
岩崎:はい。そういう感じです。堅い話が続いたので、もう少し面白い話をしたいと思います。これはイギリスのDiamond Lobbyというオタク記事をつくっているプラットフォームが発表していたもので、世界のアニメ人気分布なんですね。
傍島:面白いですよね!
岩崎:世界で一番売れているアニメは何だと思います?
傍島:黄色…、『ポケモン』ですか。
岩崎:その通りです。『ポケモン』です! ただ、北米と南米でも場所によっても結構違いがあります。
傍島:そうですよね。南米からアフリカ系は赤がすごく多いですね。赤は何ですか、これは『NARUTO』?
岩崎:赤は『NARUTO』なんですね。
傍島:ほー!
小川:そんなに差があるんですね。
傍島:このピンクみたいなのはロシアか。
岩崎:これはロシアなんですよ。これは不思議ですが、『ONE PANCH MAN』というアニメです。『ONE PANCH MAN』はとても面白くて、もともと素人の漫画家の人がWebで描き始めた漫画だったんですね。ストーリー的には、普通、主人公というのは成長していきますよね。弱いのがどんどん強くなったりしますが、この主人公はとにかく強過ぎて、すべての敵をワンパンチで倒してしまうんですよ。
傍島:(笑)
岩崎:そういう設定が面白いアニメ、もともとは漫画ですが、そのWeb漫画をジャンプの人が見つけて、ストーリーはとても良いけれども、絵が下手だと。だから、絵が上手な漫画家をくっつけて『ONE PANCH MAN』というのをジャンプ系の雑誌で連載するようにして、そしたらすごいヒットになり、アニメ化もして、なぜかロシアでものすごく流行るという。(笑)
傍島:すごく分かりやすいですよね。視覚的に色で表現していて。『ポケモン』は世界中で大ヒットかと思っていましたが、赤いところが多い地域があったり、『ONE PANCH MAN』の地域もあり、すごく分かりやすいですよね。『ONE PIECE』もアフリカ北部のほうで。(笑)
岩崎:そうなんです。アフリカは『ONE PIECE』が人気らしくて、ヨーロッパはかなり細かく分かれていて、フランスとイタリアが『ONE PIECE』で、イギリスとスペイン、東欧が『NARUTO』、突然ですが、エストニアは『YU-GI-OH!』になるんです。そして、リトアニアだけ『進撃の巨人』です。
傍島:これだけ分かれると難しいですよね。マーケティングも全世界で1本というわけにはいかないですよね。それぞれの地域に合わせていかないといけないですね。
岩崎:そうなんです。ここで私がこの分布図をお見せして言いたかったのは、まず1つは、アニメ一択と言っても結構趣味が分かれるということです。それはきっとバックグラウンドが違ったりすると好きなものが違ったりしますし、例えば『ONE PANCH MAN』といったコンセプトがロシアの人に引っ掛かった何かの理由がおそらくあるでしょうし、『NARUTO』がアフリカで引っ掛かった何かの理由がある。そういう趣味の多様化という意味で言うと、好きなものの多様化が進んでいるということが1つあります。
私が何より驚いたのが、こういうデータがつくれるぐらい世界中の人がアニメを見ているんだと思ったんです。この人たちがこの前に行っていたプロジェクトが「世界中でどのゲームが流行っているか」ということを分析していて、確かにゲーム人口は多いので、何となくそのデータが存在することは分かっていましたが、アニメもこうしてデータが取れるぐらい世界中に見られていることがここから分かってくると思います。
小川:お時間があっとういう間に30分過ぎておりますが、皆様ぜひご質問などありましたらQ&Aのところからぜひご質問いただければと思います。そして、岩崎さん、なぜ日本のアニメがこんなにも海外にウケているのでしょうか。
アニメが海外でウケる理由
岩崎:まず1つは、漫画やアニメ文化というのが長く日本でつくられてきて、伝統と歴史があって、かつ、名作が出やすいエコシステムが出来上がっていることがまず1つだと思います。スタートアップに例えると、新人の漫画家、いわゆる新しい起業家が出たときに、普通だったらベンチャーキャピタルが育てますよね。でも、そこで編集会社が新しい新人の漫画家を見極めて育てます。そして、必要に応じて人気漫画家のアシスタントとして修業させます。かつ、漫画賞などにガンガン出させて、いわゆるスタートアップのPitchですね、伝説の漫画家や審査員が審査してフィードバックして、どんどんクリエイティビティを上げていきます。それで、いざ連載開始、ビジネスがローンチすると、作家がCEO、編集者がCOOというところで、CEOはストーリー作成やキャラクターデベロップメントに集中できるんですね。COOである編集者がその周りを見て、例えば投票を取って読者の反応を見てインプットしたり、ある意味漫画家の健康管理をしたり、アシスタントを準備したり、環境を整えるというエコシステムが出来上がっています。ほとんどの日本のヒットアニメが漫画から来ていますので、面白い作品やコンテンツをつくれるという意味があると私は思います。
傍島:チームだと?
岩崎:はい。
傍島:なるほど、チームか。
岩崎:もう1つはキャラクターデベロップメントの話です。漫画は1人の人が描いているので、原作者がいると2人で描いていたりしますが、構想に深みが出るというか。例えば『ONE PIECE』は作者の方が最初に描き始めたときから最終回を決めていたという、こういう深みがあります。ただ、例えばディズニーの場合は向日性を問われますし、いろいろな人が脚本を描くので、キャラクターデベロップメントはやはり1人がうんうん考えたほうがやはり深みが出ると思います。
もう1つが、バラエティが豊富です。歴史ものがあったり、ファンタジーがあったり、最近では異世界ものと言って、現実世界で死んでしまったりして、現実世界の人がパラレルワールドに行って、そこで現実世界での知識や記憶がありながらファンタジーで生きるという異世界というのが流行っていて。アメリカ人も「Isekai」と言うんですよ。
傍島:言うんですか。
岩崎:はい。「Isekai」でみんな理解しています。やはりいろいろなジャンルがあるというのは、日本ならではの特技です。
傍島:意外ですね。
岩崎:そうなんです。
傍島:単一民族なのにそういうバラエティがあるというか、アメリカなどはいろいろな人種がいるのでいろいろなストーリーがありそうな気がしますけれども。日本のアニメのほうがバラエティがあるということですよね。
岩崎:おそらく日本以外の人たちは漫画にしようという発想にならないのではないでしょうか。
傍島:なるほど。
岩崎:最後に、厨二病的発想と書きましたが、大人が到底真剣に考えたら浮かばないような設定が日本人はすごく得意だなというのが私の印象です。例えば『エヴァンゲリオン』は、エヴァというロボットに乗るのに14歳しか乗れないとか、『NARUTO』は主人公に呪いがかかっていて、呪いのきつねと一緒に成長するとか、「それは何なの?」という設定がアメリカ人や外国人にはウケるようで、そこが日本の強みなのかなと思います。
傍島:なるほど。
小川:そもそも『ポケモン』はなぜそんなに人気があるのですか、どのようにうまくいっているのでしょうか。
ポケモンはなぜ強いのか?
岩崎:ナイスな質問をありがとうございます。『ポケモン』を次に持ってきましたのでタイミングよく説明させていただくと、『ポケモン』のすごいところは、日本ではゲームが来たあとにアニメが来たのですが、アメリカはアニメが来てゲームが来たんですね。アニメで『ポケモン』ファンになった人たちが次にゲームが来て、ゲームでまた盛り上がるわけです。そして、そのあとにカードゲーム、要するにトレーディングカードで盛り上がります。それで『ポケモン』大好きな人たちが、次はこの写真にあるようにトレーディングカードで遊ぶようになるという感じで、同じコンテンツでアウトプットをいろいろ変えて攻めてきたというのがまずあります。それで最終的に2016年にポケモンGOが発表されて、ちょうど小さい頃に『ポケモン』のアニメ、ゲーム、トレーディングカードで盛り上がった人たちが2016年にちょうど成人になっていてスマホを持っていて、「うわー、これ超懐かしい!」ということで広がるという。実は、ハーバードのビジネスケーススタディ、要するに成功したビジネスを紹介するケーススタディがあるのですが、そこでもポケモンGOのケーススタディがいくつもあります。
傍島:へえー! 計算して行ったんですかね。でも、きちんと計算しているんでしょうね。
岩崎:1つ跳ねた理由としては、AR自体は当時新しい技術ではありませんでしたが、人間が時間を費やしたいものの中に懐かしい、ノスタルジアという気持ちがあるらしくて、そのノスタルジアとARをうまく組み合わせたことによって、すごく消費者意識を盛り上げたという分析はありました。
傍島:なるほど、面白い! 私も昔、ARのビジネスをしていまして、これをどう合わせるかというのをよく議論していたんですね。結局はクーポン、カメラをかざすと何か出てくるような、お金で釣るという感じでしたが、ノスタルジアといったところまで計算されていたのですね。
岩崎:そうですね。だから、過去にものすごく流行ったものを現実世界に持ってくるというコンセプトが、ごめんなさい、言葉を選ばずに言うと「上がる」感じ、「ピカチュウ、ここにいる!」みたいな、そういうのをくすぐるのがニンテンドーはすごくうまかったというのが1つあります。
小川:なるほど。
岩崎:すみません。時間がないのですごい飛ばしていきます。
傍島:ありがとうございます。
ソニーの買収戦略
岩崎:いくつかほかにも載せましたが、『ポケモン』はすごく上手で、例えばトレーディングカードは最近ものすごく流行っていて、Steve Aokiという人が3億円でポケモンカードを売ったり(これは何枚もですけれども)。もうすぐポケモンGOとポケモンカードのクロスオーバーのプロジェクトをしたり、『ポケモン』はすごくうまくやってる感があります。
その逆を行くのがソニーです。ここに買収劇をいろいろ書きましたが、ニンテンドーは自分たちでつくり上げたコンテンツを上手に海外展開していっていますが、ソニーはどちらかと言うとアメリカ的な買収でどんどん事業を広げていっています。一番ハイライトを言うと、2021年8月にCrunchrollというアメリカで最大のアニメのストリーミングサービスを買収しています。
傍島:ありましたね。
岩崎:1.175Bドル(一ドル100円なら1,175億円)ですね。ゲームで言うとEpic Game(日本で言うとフォートナイト)に1.45Bドルを出資しています。このようにアニメ・ゲーム系、特にアニメのプラットフォームに関してガンガン買収して海外展開を固めていってるというのがソニーの印象です。
ただ、ソニーは、アニメに関して言うとCrunchroll買収が結構価格も大きかったので少し目立ったニュースにはなりましたが、実は1990年代ぐらいからかなり本格的に取り組んでいて、ANIPLEXというアニメのライツ関係の事業を立ち上げたり、2005年にはアニメスタジオを開いたりしています。この5年でストリーミングサービスを積極的に買っていて、フランスのアニメストリーミングサービスやオーストラリアのアニメ配信会社やストリーミングサービスも買収しています。Crunchrollの買収の前にアメリカの別のアニメ配信会社のアニメーションも買収しています。そのため、だいぶ前からアニメのコンテンツのバリューをよく分かっていて、かなりの額を投資している印象はあります。
淘汰されていく海賊版
小川:さて、ここでご質問をいただいております。ありがとうございます。「以前、海賊版が問題になっていましたが、最近聞かなくなりました。解決したのでしょうか。」というご質問です。岩崎さん、いかがでしょうか。
岩崎:ちょうどいい質問をありがとうございます。
小川:ありがとうございます。
岩崎:実は、このCrunchrollは2006年に立ち上がっているストリーミング会社で、もともとはアジア系のこういうコンテンツを配信する会社でした。2011年ぐらいにベンチャーキャピタルから投資されたときに、まだ海賊版を出していました。そのため、バンダイ等から訴えられたか何か言われたかして、そういう意味で言うと、Crunchrollは海賊版のイメージがありました。しかし、2011年か2012年ぐらいに「もう海賊版はしません。きちんとライセンス契約をします」と発表しました。やはり海賊版は、私もたまに宣伝を見ますけれども、ストリーミングが悪かったり、少し画角が変だったりするんですね。また、サブタイトルが自分の思ったサブタイトルが出なかったり、例えばスペイン語がないなど、そういうことがあります。Crunchrollがすごいのは、特に最近ソニーに買収されてから、日本で放送された次の日に出るんですよ。
傍島:えーっ!
小川:早いですね!
岩崎:そう。しかも、ライセンスをきちんと取っていますから、サブタイトルはきちんといろいろな種類があるし、テレビではきれいな映像で見れるんですね。そのため、視聴者にしてみると、よく分からない海賊版を探して大変になるよりは、Crunchrollは確か月のサブスクライブが11ドルですので「こちらで見たほうが良くない?」という視聴者意識が働きますし、それにNetflixもたくさんアニメがあるので、わりとリーガルなストリーミングサービスがきちんとライセンスを取ってアニメを放送してきたこともあり、海賊版が必要なくなったというのが私の意識です。
小川:なるほど。ありがとうございます。あっとういう間にお時間が近づいてきてしまいましたけれども、続いてお願いいたします。
気になるスタートアップ
岩崎:はい。では、いろいろなアニメの会社というか、スタートアップというか、ビジネスを紹介させていただきます。まずはNFTです。NFTというのは皆さんご存じですか。大丈夫ですよね。
傍島:大丈夫かな?(笑)
小川:すみません。私はあまり存じ上げないです。
岩崎:Non-Fungible Tokenと言って、いわゆるブロックチェーン上でデジタルアートをつくるといったもので、それを仮想通貨でやり取りする、簡単に言うとそういう感じです。ポケモンカードをデジタル上に載せるという感じですかね。
小川:なるほど。
岩崎:プロファイルピクチャーという、いわゆるプロファイルのアイコンのようなアートがNFT上で流行っているのですが、アニメにインスパイアされたものがものすごくたくさんあるんですね。代表的なもので言うとAzukiです。これは具体的にこれを使っているアニメはありませんが、アニメっぽいプロファイルアイコンをNFTでして、かなり値段も結構いいところまで上がっていますし、Lives of Asunaというのは、Sword Art OnlineというアニメのキャラクターのいろいろなバージョンをNFTで紹介しています。それから、Shonen Junk Officialというのは、一言間違えると著作権関係に引っ掛かりそうな名前ですが、少年なんとか風のアイコンをつくっているものです。これはNFTの価値としては大したことはありませんが、つくった人が先ほど話したCrunchrollのファウンダーなんです。
傍島:なるほどね!
岩崎:それでかなりNFT界では。
傍島:価値が出るということですね。
岩崎:はい。人気になったりしています。
傍島:なるほど。
岩崎:次が、これはアバターですが、ここはセレブリティにアバターをつくってあげる代理店をしたり、会社がアバターをつくるためのキットを提供したり、そういうことをして、すごい速さでユニコーンになったスタートアップです。そういう意味で言うと、アイコンをつくったり、自分のプロファイルとして使えるコンテンツはものすごく注目されていますし、やはり投資する側もものすごく注目しているというのがあります。
傍島:確かに。
日本のコンテンツをもっと世界に広めるためには?
小川:なるほど。岩崎さん、あっという間にお時間が近づいてまいりまして、もっともっとお話をお聞きしたいのですが、最後に日本のコンテンツをもっと世界に広めるためにはどうすればいいのかというお話をぜひお聞かせいただけますでしょうか。
岩崎:すみません。時間配分を間違えましたね。(笑)
小川:いえいえ。とんでもないです。引き込まれてしまいました。
岩崎:サクッといきます。クールジャパンをやめると書いたのですが、先ほど言った世界分布の話のように、やはり趣味の多様化、そこにできたファンコミュニティから熱が出てきているんですね。ですので、クールジャパンのように上から押し付けられるものに関して…。アニメで言うとですよ、クールジャパンはほかにもたくさん取り組んでいますので、クールジャパン自体をという意味で言っているのではなくて、コンテンツという意味で言うと、やはり1人1人のファンの熱に対して投資をしたり、リソースを割くことが大事で、上から「これを見ろ」と言うのは、ファン的には受け入れがたいというのがまず1つあると思います。また、制作は内向き・売るのは外向き、国内販売型から国際参加型へという意味で言うと、つくり方は今まで通りでいいと思うんですね。それがある意味クールジャパンというか、日本にしかできないことですので。ただ、どうやって売るか、誰に売るかということについては、もっと国際的な目線で、かつ、ファンがもっと参加できるかたちをつくっていかなければいけないと思います。
次に、IPはしっかりという意味で言うと、権利は持ちますが、先ほど言ったようにファンがいろいろ使ったり楽しんだりしてくる部分には規制をせずに緩くして、ファンの熱をもっと、先ほどの『ポケモン』のように、あおるような、油に火を注ぐように。
傍島:確かに。お金を儲けるために、それは大事ですよね。
岩崎:そうですね。かつ、データをきちんと取って、どういうコンテンツがどこで売れていて、どういうマーケティングが大事なのかというのを感覚ではなくて数字できちんと考える。先ほども言った通り、その還元されたものをクリエイターにもっと渡すことが大事ではないかと思っています。
今は、やはりプラットフォームは外国、アメリカのほうが圧倒的で、例えばYouTubeもそうです。そうすると、ほとんどのインセンティブがアメリカの会社に入ってしまうので、世界に通じるコンテンツのプラットフォームを日本から発信していくことが大事だと思います。
まとめ
小川:ありがとうございます。では岩崎さん、最後に一言だけ、まとめでお願いしてもよろしいでしょうか。
岩崎:はい。まずは長くなってごめんなさい。時間配分を間違えました。
小川:とんでもないです。ありがとうございます。
傍島:とんでもないです。
岩崎:ほかの情報は資料に入れたので、ぜひアンケートに答えていただいて、資料を見てもらえればと思います。一アニメファンとして言わせていただくと、私としては日本がつくったコンテンツでアメリカ人が儲けているのがちょっと悔しいなというのがありますので、ぜひ外国のトレンドに目を向けてもらって、クリエイター、コンテンツをつくった人たちにできるだけお金が入るように皆さんに考えていただけたらなと思います。
傍島:日本のコンテンツを世界に広めたいという思いがすごく強いですよね。岩崎さん、特に海外にわれわれ住んでいると、日本も頑張ってほしいなという思いが強いですよね。
岩崎:そうですね。やはり外国の方がすごく熱を持ってアニメの話しかしてこないというか。今度、日系アメリカ人を日本に10人ぐらい連れていく企画がありますが、それで日系アメリカ人の方に「日本の何が好き?」と聞くと、全員一番目に出てくるのがアニメなんですね。二番目が食文化なんですけれども。ですので、この熱をぜひ日本人の方に分かっていただきたいなと思います。
傍島:そうですよね。ありがとうございます。
小川:楽しみにしております。ありがとうございます。それではお時間になりましたので、本日の01 Expert Pitchは終了となります。岩崎さん、傍島さん、どうもありがとうございました。
岩崎:ありがとうございました。
傍島:ありがとうございました。
小川:ご視聴いただいた皆様もありがとうございました。また次回ぜひお会いいたしましょう。それでは、さようなら。
以上