なぜアメリカ人は転職を繰り返すのか?|日本人が知らないアメリカの常識
2026年9月12日

この記事の要点
- アメリカでは転職は珍しくなく、雇われて働く人の今の勤務先での勤続年数は中央値3.9年です(2024年1月)。
- 2021年に自分から辞めた人が挙げた理由は「給料が低かった」と「昇進の機会がなかった」が同率の63%で1位でした。
- 辞めて別の仕事に就いた人の56%は「前より給料が上がった」と答えています。
アメリカで雇われて働く人は、今の勤務先に何年いるのでしょうか。
米労働省の統計では、中央値で3.9年です(2024年1月時点)。日本は、厚生労働省の調査で平均12.7年(2025年6月時点)。アメリカは中央値、日本は平均で、調べている対象も同じではないので、この2つの数字は単純には比べられません。ただ、日本のほうが同じ勤務先に長くいる、という違いを見る参考にはなります。
アメリカでは、転職は珍しいことではありません。1957〜64年生まれのアメリカ人を若いころから追い続けた米労働省の調査では、18歳から58歳までに経験した仕事の数は平均12.9でした。この記事では、なぜそうなるのかを、統計から分かる範囲で、3つの切り口から見ていきます。
日本人が知らないアメリカの常識を、日本との違いから解説するシリーズです。これまでに解雇された翌日に何が起きるのか とPIP(業績改善計画) を取り上げました。今回は、辞めさせられる話ではなく、自分から辞める話です。
この記事では、次の3つを順に見ていきます。
- アメリカで雇われて働く人の勤続年数は中央値3.9年。18歳から58歳までに経験した仕事の数は平均12.9
- 2021年に辞めた人の理由の1位は「給料」と「昇進」。別の仕事に就いた人の56%は給料が上がった
- 辞める時期で差が出る、会社の積み立ての権利確定
アメリカで雇われて働く人の勤続年数は中央値3.9年。18歳から58歳までに経験した仕事の数は平均12.9
米労働省は2年に1回、雇われて働く人に「今の勤務先に何年いるか」を調べています。2024年1月の中央値は3.9年でした。中央値は、勤続年数を短い順に並べたときに、ちょうど真ん中にくる値です。2022年1月の4.1年から下がり、2002年以来の短さです。年齢別では、25〜34歳の中央値は2.7年、55〜64歳は9.6年でした。
1人の人が、18歳から58歳までにいくつの仕事を経験するかを追った調査もあります。米労働省が1957〜64年生まれのアメリカ人を若いころから追い続けた調査では、18歳から58歳までに経験した仕事の数は平均12.9でした(これは転職の回数そのものではなく、同じ雇用主のもとで途切れずに働いた期間を1つの「仕事」と数えた数です)。そのうち5.6は18〜24歳の間に経験したもので、年齢が上がるほど数は減っていきます。
日本はどうでしょうか。厚生労働省の賃金構造基本統計調査(2025年)では、フルタイムで働く一般労働者の平均勤続年数は12.7年、平均年齢は44.4歳です。アメリカの3.9年は中央値、日本の12.7年は平均で、調べている対象も同じではないので、そのまま並べることはできません。それでも、日本のほうが同じ勤務先に長くいる、という違いを見る参考にはなります。
2021年に辞めた人の理由の1位は「給料」と「昇進」。別の仕事に就いた人の56%は給料が上がった
2021年に自分から仕事を辞めたアメリカ人に、調査機関のピュー・リサーチ・センターが2022年2月に理由を聞いています。「給料が低かった」と「昇進の機会がなかった」が同率の63%で1位、「職場で尊重されていないと感じた」が57%でした(複数回答)。辞めたあと別の仕事に就いた人のうち、56%は「前より給料が上がった」と答えています。
これは2021年に自分から仕事を辞めた人を対象にした調査ですが、辞める理由の上位に給料と昇進が並び、辞めて別の仕事に就いた人の半分以上が「給料が上がった」と答えていることは、転職が珍しくない背景を見るうえで参考になります。
給料の水準そのものについては、年収1,500万円の回で、シリコンバレーの給与と家賃を比べています。
日本では、別の調査で次のような結果が出ています。厚生労働省の雇用動向調査(2025年)では、転職して新しい職場に入り、前職も雇われて働いていた人が前の会社を辞めた主な理由は、男性では「定年・契約期間の満了」16.1%が最も多く、「給料等収入が少なかった」は9.9%でした。女性は「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」12.9%が最も多く、「給料等収入が少なかった」は8.6%です(いずれも「その他の個人的理由」を除く)。
アメリカは2021年に自分の意思で辞めた人への複数回答、日本は転職して新しい職場に入り、前職も雇われて働いていた人に主な理由を1つ聞いた調査で、対象も回答方法も異なります。そのため、数字や順位を直接比べることはできません。
辞める時期で差が出る、会社の積み立ての権利確定
アメリカには、401(k)という、会社を通じて老後の資金を積み立てる仕組みがあります。自分の給料から積み立てた分は、いつ辞めても全額が自分のものです。ところが会社が上乗せしてくれた分は、プランによっては、勤め続けた年数に応じて段階的に自分のものになる仕組みになっています。これを権利確定(ベスティング)と呼びます。
米内国歳入庁が示す基準では、最も遅い場合で、一度に全部なら3年、段階的なら6年で全額が本人のものになります。
つまり、権利確定がまだ終わっていない時点で辞めると、会社が上乗せしてくれた分のうち、まだ確定していない部分は自分のものになりません。辞める時期によって、手元に残る額が変わる仕組みです。
| アメリカ | 日本 | |
|---|---|---|
| 同じ勤務先にいる長さ | 中央値3.9年(2024年1月・雇われて働く人) | 平均12.7年(2025年6月・一般労働者)。数え方と対象が違うため単純比較はできない |
| 辞めた理由の調査 | 2021年に自ら辞めた人(複数回答) | 2025年の転職入職者(主な理由を1つ回答・その他の個人的理由を除く) |
| 上位の理由 | 「給料が低かった」63% 「昇進の機会がなかった」63% | 男性:「定年・契約期間の満了」16.1% 女性:「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」12.9% |
| 18〜58歳で経験した仕事の数 | 1957〜64年生まれの世代で平均12.9 | — |
最後にまとめます。アメリカで雇われて働く人の勤続年数は、中央値で3.9年です。1957〜64年生まれの世代では、18歳から58歳までに経験した仕事の数が平均12.9でした。2021年に自分から辞めた人の調査では、給料と昇進の機会が理由の上位に並び、別の仕事に就いた人の半分以上が「給料が上がった」と答えています。そして401(k)では、プランによっては、会社が上乗せする分のうち手元に残る額が、辞める時期で変わります。
つまりアメリカでは、仕事や勤務先が変わることが、働く人生の中で珍しくない出来事として統計に表れています。良い悪いではなく、この前提の違いを知っておくと、アメリカの雇用や転職のニュースが読みやすくなります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言を提供するものではありません。個別の事案については、適切な資格を有する専門家にご相談ください。
情報源
米労働省労働統計局(BLS) – Employee Tenure Summary(2024年1月調査・2024年9月26日発表)
厚生労働省 – 令和7年賃金構造基本統計調査の概況(一般労働者の平均勤続年数・平均年齢)
ピュー・リサーチ・センター – 2021年に仕事を辞めた人の理由(2022年3月9日)
厚生労働省 – 令和7年雇用動向調査 結果の概況「3 転職入職者の状況」(2026年8月31日公表)
米内国歳入庁(IRS) – Retirement Topics – Vesting(権利確定)
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