S-1 ジャーナル
週刊 S-1 ジャーナル|米国 IPO × S-1 の定点観測

Anthropic が S-1 を出しました。上場後は、一般の議案の議決権の50.1%を1株が持ちます

2026年10月26日|株価は 10月23日 終値時点

対話型 AI「Claude」をつくる Anthropic が、10月26日、米国での上場に向けて目論見書(S-1)を SEC に提出しました。Nasdaq に「ANT」で上場する予定です。今週月曜の提出なので、下の「先週の提出物」には入っていません。

2026年1〜6月の売上は163億ドルで、前年同期の12億ドルの14倍です。4〜6月には、目論見書が載せる6四半期で初めて営業黒字になりました。一方、同じ半年の純損失は807億ドルあります。そのうち724億ドルは、会社の評価額が上がるほど膨らむ、転換社債などの評価損です。

上場すると、一般の議案での議決権の50.1%は、上場の直前に発行される Class F 株1株が持ちます。この株を持つのは、当初は創業者7人だけがメンバーの会社です。この会社に残る創業者の過半数が投じ方で合意できないときは、原則として、その議案で投じられた Class A の票と同じ割合で投じられます。取締役7人のうち4人は、これとは別に、会社に経済的な利害を持たない信託が選びます。

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Anthropic の S-1 を10の問いで読んだ記事

SpaceX の7〜9月期と Tesla

SpaceX が10月20日に発表した7〜9月期の決算で、上場の目論見書が赤字の事業として出していた AI の部門の営業損益が、4億3,100万ドルの黒字になりました。前の四半期は12億5,700万ドルの赤字でした。同じ週には、SpaceX と Tesla がそれぞれ特別委員会を作り、両社の統合も検討の対象にしたことが明らかになっています。

ひとことで言えば、赤字の部門を抱えて上場した会社が、2回目の決算でその部門を黒字にし、同じ週に、Musk 氏が経営するもう1つの会社との統合を検討していることを明らかにしました。どちらも、まだ途中の数字と途中の手続きです。

AI の部門が黒字に

会社はこの部門の呼び名を AI から Super Intelligence(SI)に改め、前に AI として報告していた部門と同じものだと注記しています。目論見書は、2025年のこの部門を、売上32億100万ドルに対して営業損失63億5,500万ドルの事業として出していました。

7〜9月期の SI の売上は75億6,000万ドルで、前の四半期の25億6,100万ドルから約3倍になりました。会社は伸びの主な理由に、新しいクラウドサービス契約の稼働、8月に買収した Cursor、企業と個人での Grok の利用の増加を挙げています。決算資料は、どの契約からいくら入ったかを書いていません。

黒字を前の四半期と並べるときは、中身の違いに気をつける必要があります。7〜9月期の4億3,100万ドルには、8月14日から加わった Cursor の売上が入る一方、Cursor の買収に伴う株式報酬12億1,700万ドルが費用として差し引かれており、前の四半期にはそのどちらも入っていません。1〜9月の累計では、SI の営業損益はまだ32億9,500万ドルの赤字です。SI の設備投資はこの四半期だけで164億4,400万ドルと、目論見書に載っていた2025年通年の127億2,700万ドルを上回りました。

四半期ごとの数字と、お金の出入りは、図を入れて答え合わせのページにまとめました。

SpaceX の7〜9月期の答え合わせ

Tesla との統合の検討

SpaceX は四半期報告書で、取締役会が Tesla との統合の可能性を検討する特別委員会を作ったと書いています。Tesla の側は、利害関係のない取締役でつくる特別委員会が、SpaceX との関係を深める方法を探っており、その方法には事業の統合も含まれるとしています。SpaceX は特別委員会がまだ結論を出していないと書き、両社とも、取引が実現する保証はないとしています。

統合するには、SpaceX の側では特別委員会と取締役会に加えて支配株主の承認が、Tesla の側では特別委員会が賛成を勧めることや、合意した場合には必要な株主の承認などが要ります。目論見書は、上場の直後に Musk 氏が議決権の約82.4%を持つと書き、Musk 氏の関係する会社との取引で利益がぶつかるおそれがあるとして、Tesla との協業にも触れていました。

Tesla は、xAI への約20億ドルの投資を通じて、3月に SpaceX の株を受け取っています。受け取った時点の持ち分は1%未満でした。統合するのかどうか、その形や条件、時期は、どちらの会社も書いていません。

SpaceX の S-1 を10の問いで読んだ記事

Freenome が肺がんの血液検査を発売

10月20日、血液でがんを調べる検査を開発する米国の Freenome が、肺がんの血液検査 SimpleScreen Lung の発売を発表しました。

8月の目論見書は、肺がんの検査を、検査室が自ら開発して実施する検査(LDT)として、2026年下期に出す予定だと書いていました。FDA の承認を得た大腸がんの血液検査 SimpleScreen CRC は、米国で独占して売るのは Abbott だとしたうえで、大腸がんの検査を肺がんの検査と一緒に自社で売り出し、ほかのがんの検査と組み合わせて注文されるときの大腸がんの検査の権利は自社に残す、その例の最初に肺を挙げていました。

発表文によると、SimpleScreen Lung は LDT として発売され、大腸がんについては平均的なリスクで、血液での大腸がん検診の対象にもなる人には、医師が同じ注文に SimpleScreen CRC を足せます。単独で頼む大腸がんの検査の米国での販売権は、Abbott が独占しているとも書いています。肺の検査が FDA の審査や承認を受けていないことも、発表文に書かれています。足して頼まれた大腸がんの検査をどの会社が売るのか、肺の検査の値段や保険の扱いは書いていません。

Freenome の S-1 を10の問いで読んだ記事

スコアボードの動き

私たちのスコアボードの「直近の上場」11社は、それぞれの上場初日の終値で1,000ドルずつ買っていたら、10月23日の終値で合計9,908ドルです。Freenome だけは、SPAC 合併が完了した日の終値で数えています。1週間前の10月16日の終値では、9,394ドルでした。それぞれの上場日に同じ額を S&P500 に入れていたら、10月23日の終値で1万1,602ドルです。

SpaceX もこの11社のひとつです。この表が言うのは、いくらになったかだけです。どの部門が黒字に変わったかは、表には出てきません。

先週公開した記事

10月22日に、英国の Nscale(エヌスケール)の S-1 を10の問いで読んだ記事を公開しました。

AI の計算に使う GPU を並べたデータセンターを建て、その計算能力を長期の契約で貸す会社です。9月18日に、ニューヨーク証券取引所への上場に向けて S-1 を出しました。8月末時点で顧客と結んだ契約の総額は1,034億ドルで、相手には Microsoft と Anthropic の名前があります。

一方で、2025年の年間売上は3,300万ドルでした。2026年1〜6月の売上は1億4,100万ドル、同じ半年の純損失は10億2,000万ドルです。8月25日に結んだ Anthropic との契約について、目論見書は、履行に必要な資金の調達に拘束力のある確約はまだ得ていないと書いています。

Nscale の S-1 を10の問いで読んだ記事

先週の提出物

10月19日から23日に、私たちが追っている会社が出した主な書類です。SpaceX と Tesla の決算と四半期報告書、上で書いた Freenome の発表は、ここでは省きます。

SpaceX

10月22日・S-8:8月に買収した Cursor の社員が持っていたストックオプションなどを引き継ぎ、その分の A種株を登録しました。社員や元社員などにすでに渡った株を、その人たちが売り出すための目論見書も付けています。

Meta

10月21日・8-K:7〜9月期の決算の発表と同じ届け出で、議決権のない C種株を新たに設け、定款の変更が効力を持つことを条件に、A種株と B種株1株につき C種株1株を配ると決めたことを書いています。株主の書面での同意は10月20日に得ており、定款の変更は2027年1月19日に効力を持つ予定です。Zuckerberg 氏が受け取る C種株の8割は、原則として、売るときに、A種株か B種株を売るか、B種株を A種株に替えることが条件になると、会社と結んだ契約が定めています。

Tesla

10月19日・DEF 14A:12月3日に開く年次株主総会の招集の書類です。

値決め・上場

私たちが追っている会社では、ありませんでした。届け出を出して値決めがまだの Bamboo、SB Energy、Oura、Syntiant、CoVolt Power、DayOne Data Centers、The Wella Company、Nscale は、この週に書類を出していません。前号で記事にしないと書いた OPay は、10月23日の F-1 の改訂版で、仮条件を米国預託株式1単位あたり19ドルから21ドルとしました。

新しく出た S-1/F-1

新しく出た S-1 は11件、F-1 は4件で、記事の候補として取り上げたものはありません。SPAC、上場済みの会社の届け出、小型の案件は、はじめから外しています。臨床段階の医薬品の会社2社は、日本の読者に名前が知られていないため見送りました。

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