子供たちはいかにして英語を習得したか

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アメリカに来た当時、娘はミドルスクール(中学校)の最終学年である8年生(8th grader)、息子はエレメンタリースクール(小学校)の4年生(4th grader)であった。こちらでは高校までが義務教育のため、日本とは異なり受験なしで高校まで進学できる。大学の場合は高校の成績次第である程度進学できる大学が決まってくるので、UC(University of California)の上位校や、スタンフォード大学のような有名私立校進学を目指す生徒は、日々の勉強に励んでGPA(Grade Point Average:成績の評価値)の数値をできるだけ高く保つことが大切とされている。

まだ小学生だった息子には特にこれといった英語教育はしなかった。日常の学校生活や、お友達との交流の中で自然に英語力が伸びていくだろうと思ったので、多少英語の習得に時間がかかっても焦らずにゆっくり見守りたいと考えていた。あれから7年。高校生となった息子の英語は発音や表現があまりにもネイティブっぽくて、何を言っているのか理解できないこともしばしばある。

娘の場合はたった1年で中学校を卒業して、勉強が本格化する高校生活が始まるとあって、さすがに何もしないのはまずいのではと思い、割と早い時期に週に1回2時間のペースで日本でいう個別指導塾のような場所へ通わせた。この塾は私がアダルトスクールのESL(外国人向けの英語クラス)に通っていた頃に知り合った中国人のYさんが紹介してくれた。

Yさんによると、この塾ではまず子供に英語のレベルチェックのテストをして、その結果に応じて子供に必要な英語教材を与え、講師と一緒に勉強していく。Yさんの息子のJくん(当時娘と同じ学年)は、まずは小学校1年生が習う単語から勉強を始めて、段階を追って小学2年、3年、、、というように現地の子どもたちが習う単語教材を順を追って勉強し、ついには自分の学年である8th grade用の教材に達し、英語力が飛躍的に伸びたとのことだった。

娘に必要なのもまずは単語力だと思ったので、早速娘を連れて塾長のNさん(チャイニーズアメリカン)に会いに行った。その場で簡単な説明を受けてから、受講の意思を告げた。レッスン料は48ドル/時間だが、1回の授業は2時間なので、実質は1回のレッスンにつき98ドルかかった。

こうして月に4回、毎週水曜日の夕方に娘を塾に送り届けることとなった。講師は基本的に固定制なのだが、講師が辞めたり、生徒との相性が悪い場合は変更された。結局娘はこの塾に約4年間お世話になった。先生は何度か入れ替わったが、最後にお世話になったM先生との相性がとてもよかった。

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お世話になったM先生と娘

M先生がワシントン州への引っ越しに伴い、塾を辞めることになった時、私からダメ元で塾長のNさんに「今後は塾に通うスタイルではなくて、SkypeやFaceTimeなどでM先生に教えてもらう形に変更できないか?」と聞いたところ、Nさんはハッとした表情で「あっ、できるかも。いいアイデアだね」と即答。こういう臨機応変なところがアメリカのいいところ。

娘も通学が不要となり、家からM先生に都合の良い時間に家庭教師をしてもらうことができるようになったので時間が有効活用できるようになったと喜んでいた。その頃には最初に始めた英単語の教材は1年ほどで終わり、大学受験に向けたエッセーの指導をしてもらうようになっていた。

英語習得に向けての娘の頑張りは凄かった。単語を勉強し始めてからは、わからない単語を全て大きめの紙に書き出して、上に英単語、下に日本語を書いたものを自分の部屋の壁一面に貼って覚える努力をしていた。覚えた単語の紙は壁から剥がされ、また新しい単語が貼られた。英語の本や教科書を読むときはできるだけ音読。毎晩のように娘の部屋から音読をする声が聞こえてきた。努力の甲斐あって、高校入学時にはESLの授業を受ける必要はなくなっていた。

通っていた個別指導塾は娘の事例をきっかけに、本格的にオンラインレッスンを開始した。その後世界中を襲ったパンデミック。たまたまではあるが、早めにオンラインの体制を整えるきっかけとなった提案をした私って結構いい働きをしたのではないかと自画自賛している。

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当時小学校4年生だった息子が授業で将来の自分宛てに書いた手紙。英語が書けなかったので、先生に日本語で書いていいと言われたらしい。

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