Bamboo Insurance Services
大手が逃げた住宅保険。
燃えにくい場所と商品を選ぶ
2026 年 8 月 28 日、Bamboo Insurance Services が SEC に S-1 を提出した。カリフォルニアの住宅向け損害保険を扱う会社だ。2025 年 1 月のロサンゼルスの山火事に見舞われ、その前から大手が引き受けを絞りつづけてきた市場である。目論見書が要約でも本文でも繰り返す数字が 1 つある。過去 5 事業年度の損害率が、業界より平均で 32 ポイント低かった、という数字だ。
その根拠として同じ書類に載っている棒グラフを、年ごとに開いたのが下の図だ。業界との差は、4 年ぶんが 20 ポイント未満にとどまる。2025 年だけが 110 ポイント開いている。5 年の単純平均をとると 32 になり、2025 年を外した 4 年の平均は 12 になる。
2025 年に何が起きたかは、はっきりしている。カリフォルニア大手 10 社の損害率が 175% に跳ね上がり、Bamboo は 65% で済んだ。山火事の年である。Bamboo の家も燃えたが、燃えた量が桁違いに少なかった。
なぜ燃えなかったのか。会社の説明は 2 つある。リスクの選別と、集積の管理だ。前者の物差しとして、カリフォルニアの契約のおよそ 98% が山火事リスク中程度以下に分類されると書かれている。創業者は手紙で、5 年平均の損害率とこの 98% を並べ、こう書く。これは運ではない、規律ある引受だ、と。
10 の問いで、事実だけを並べていく。
- 問 1そもそも、何の会社?
- 問 2何で勝負している?
- 問 3市場はどれだけ大きいか
- 問 4誰が使うか
- 問 5どう稼ぐか
- 問 6数字は健全か
- 問 7誰が動かすか
- 問 8誰が握るか
- 問 9何を恐れるか
- 問 10集めた金は何になるか
- おわりに10 の問いの先に
問 1・問 2 は無料。問 3 以降は $25(買い切り)でお読みいただけます。 $25 で全文アクセス →
問 1
そもそも、何の会社?
一次ソース/S-1 から読み解く
Prospectus Summary(p.1〜) と Business(p.113〜) から読み解く
一言でいうと、保険を売って、保険金はほとんど払わない会社だ。
Bamboo が扱うのは住宅向けの損害保険、日本でいう火災保険にあたる商品だ。見積りを出し、引き受けるかどうかを決め、保険料を集める。事故が起きれば保険金の査定もする。契約者から見れば、ふつうの保険会社と変わらない。
違うのは、証券に名前が載る会社が Bamboo ではないことだ。保険を発行するのは提携先の保険会社で、損失を最後に負うのもその会社と、その先の再保険会社である。Bamboo の収益の中心は手数料になる。
ただし、ゼロではない。目論見書の書き方は「売る契約について重大なバランスシート上の保険リスクは負わない」であって、負わない、ではない。自社でリスクを取る小さな器も持っている。そこは問 5 で開く。
この業態を目論見書は MGU と略す。managing general underwriter、引受代行業者のことだ。以下ではそう呼ぶ。保険の設計と引受と支払いの実務を代行し、リスクの大半は他人の帳簿に置いておく商売である。
規模はこうだ。2025 年に管理した保険料は 7.66 億ドル(約 1,149 億円)で、前年の 4.84 億ドル(約 726 億円)から 58% 増えた。2026 年 6 月までの 12 か月では 8.79 億ドル(約 1,319 億円)になる。
それを回している人数が、2026 年 6 月末で 290 人。オフィスはユタ州ミッドベールにあり、不動産は保有していない。ほとんどの職種は在宅で働ける、と書かれている。
カリフォルニアの家を引き受ける会社が、カリフォルニアに本社を置いていない。リスクを帳簿に載せない商売とは、そういう形をしている。
みんなが出ていく年に、入っていった
法人としての出発は 2017 年 11 月、アリゾナ州で設立された有限責任会社だった。営業を始めたのが 2018 年で、その年末に管理していた保険料はおよそ 200 万ドル(約 3 億円)にすぎない。
創業者の手紙は、その時期の選び方を偶然だとは書いていない。ほとんどの保険会社が市場から退出しつつあった 2018 年にカリフォルニアで立ち上げた、タイミングは意図的だった、と書く。
7 年後、同じ州での市場シェアは 4% になった。7.66 億ドルは、200 万ドルの 380 倍を超える。
保険を引き受ける会社ではなく、引き受け方を売る会社だ。
問 2
何で勝負している?
一次ソース/S-1 から読み解く
Business(Our Competitive Moats、p.114〜) と Business(Our Data-Driven Underwriting、p.122〜) から読み解く
勝負している場所は 3 つある。数字と、資本の出し手と、選別だ。
目論見書が挙げる強みは 6 つある。引受の卓越性、多様な資本の出し手、広い販売網、経費効率、継続率の高い顧客基盤、経験ある経営陣。順に読むと、最初の 1 つに全部がぶら下がっていることが分かる。
引受が良ければ、資本の出し手が集まる。資本があれば代理店に断らずに済む。断らなければ件数が増え、データが増えて引受がまた良くなる。目論見書はこれをフライホイールと呼ぶ。回転の起点は、損害率という 1 つの数字だ。
起点にある 1 つの数字
会社が繰り返すのは、この 1 文である。
内訳はこうだ。大災害の損害まで含めたグロスの損害率が、過去 5 年平均で 55%。同じ期間のカリフォルニア大手 10 社の加重平均が 86%。根拠になる図の表題は「カリフォルニアの損害率」である。ばらつきも小さく、標準偏差は 11% 対 45% だと書かれている。
損害率は、集めた保険料のうち何割が支払いに消えたかを表す。ここでいう支払いには、保険金そのものだけでなく、事故を調べて示談するための費用も入る。低いほど引受がうまいということになる。30 ポイントを超える差がついている。なお 55% と 86% の差は表示上 31 だが、会社は 32 ポイントと書いている。その 32 がどこから来るかは、問 6 で開く。
この数字が、この会社の主張のすべてを支えている。資本の出し手が増えるのも、代理店が寄ってくるのも、ここが起点である。だから問 6 で、この数字だけは開いて確かめる。
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- 問 3 市場はどれだけ大きいか
- 問 4 誰が使うか
- 問 5 どう稼ぐか
- 問 6 数字は健全か
- 問 7 誰が動かすか
- 問 8 誰が握るか
- 問 9 何を恐れるか
- 問 10 集めた金は何になるか
- おわりに 10 の問いの先に