CES 2026 まとめ:なぜ『フィジカルAI』にIoTブームの既視感を覚えたのか?現地考察レポート
本レポートは、Tomorrow Access CEO・傍島がCES 2026の会場を実際に歩き、現地で感じた空気感や違和感をもとにまとめた考察レポートです。
単なるトレンド整理ではなく、2015年前後のIoTブームを現場で見てきた立場から、「フィジカルAI」という新たな潮流に対して覚えた既視感と、その先に産業が進むべき方向性について、独自の視点で整理しています。

CES 2026に参加して、まず単純に感じたのは「会場の物理的な熱量が戻ってきた」ということです。
たとえば、LVCCサウスを少し歩くだけでもそれは分かりました。ここ数年は静かだったエリアに、中国企業などのサプライチェーンが戻り、アクセサリー系のブースが所狭しと並んでいる。「ああ、人が戻ってきたな」と素直に感じられる光景でした。
しかし、私にとって今年のCESのハイライトは、そうした「人の多さ」ではありません。
会場全体を回る中で、今年のトレンドである「フィジカルAI」を見れば見るほど、ある種の既視感(デジャヴ)が強まっていったのです。
それは、2015年前後の「IoTブーム」の記憶です。
今年のCESで私がいちばん気になったこと。それは、会場全体から感じたこの「既視感の正体」と、そこから産業がどう進化すべきかという「願い」にも似た考察です。
1. AI・ロボティクス:”フィジカルAI”への回帰と、過去の教訓
今年のCESのトレンドは、間違いなく「フィジカルAI」でした。
一般的に「生成AI」といえば、ChatGPTのような「画面の中のチャットボット」をイメージする人が多いはずです。しかし今年の会場では、そうした対話相手としてではなく、物理的なロボットやハードウェアの制御に生成AIを組み込む展示が目立っていました。




しかし、この「ハードウェアへの回帰」という会場全体の潮流こそが、私の脳裏に2015年頃の記憶をフラッシュバックさせました。
当時は「すべてのモノがネットにつながる(IoT)」が大ブームでした。「スマホで操作できるコーヒーメーカー」「ログが取れる歯ブラシ」。会場は“面白いガジェット”で溢れ、誰もが“次”を信じました。
ところが、その熱狂の結末はどうだったか?
2〜3年後(2017年頃)には、その多くが市場から消え、屍の山を築きました。「面白いハードウェア」だけでは、ビジネスは続かなかったのです。
今年のフィジカルAIブームを見て、私はふと考えます。我々はまた、同じサイクルを繰り返そうとしているのではないか?「AIが入った」というだけで、2015年の二の舞になるリスクは十分にあります。では、当時の「IoTガジェット」と、これから生き残る「フィジカルAI」を分ける決定的な差は何なのか?
2. 生存の条件:「完成品」を売る時代の終わり
その答えのヒントは、昨今のテスラや自動運転車が「当たり前」にした常識の中にあります。
かつてのハードウェア(そして多くのIoT機器)は、「出荷された瞬間」が最も価値が高く、あとは古くなっていくだけでした。しかし、今のモビリティはどうでしょうか。出荷時点はあくまでスタート地点。ソフトウェアがアップデートされ続けることで、同じ車がまるで“別物”のように進化していく。
「中身(ソフト)が、外見(ハード)を追い越していく」
この感覚こそが、今のフィジカルAIやロボティクスに必要な絶対条件です。単に「AIを搭載したハード」を作るだけでは、2015年の焼き直しで終わります。
- 中身が継続的に賢くなる
- 使われ方がアップデートされる
- 購入後の方が、価値が上がる
ハードウェアを「完成品」として売るのではなく、「進化し続けるサービスの器(うつわ)」として再定義できるか。ここが、フィジカルAIが「一過性のブーム」で終わるか、「次世代のインフラ」になるかの運命の分かれ道だと確信しました。
3. 会場の温度差が示す「産業の現在地」
もう一つ、非常に示唆的だったのが会場ごとの温度差や、主要企業の動きです。
- LVCC(テック大手):冷静と模索
例年、巨大テック企業が未来を見せるLVCCセントラルなどは、少し様子が変わってきました。長年出展していたソニーが単体出展を見送り、SamsungがWynnに独自の巨大スペースを構えるなど、企業側が「CESという場の使い方」をシビアに見直しています。 - NVIDIA(ジェンセン・フアン):圧倒的な勢い
一方で、NVIDIAのジェンセン・フアンCEOの存在感は別格でした。自身の発表に加え、Sphereで行われたLenovoのキーノートにも登壇するなど、昨年からの勢いがさらに加速し、会場の至る所にその影響力が偏在している印象を受けました。 - Venetian(スタートアップ):混沌と熱気
対照的に、Venetianは歩くのも大変なほどの盛り上がりでした。各国のパビリオンが密集し、スタートアップの「何者かになってやる」という渇望が渦巻いている。



これは単なる場所の違いではありません。「見せ方を再定義する大手の冷静さ」と「技術の可能性に賭けるスタートアップの熱」。このコントラストこそが、今のフィジカルAI産業の現在地そのものです。熱はあるが、勝ち筋(ビジネスモデル)はまだ確定していないのです。
4. 最大の論点:フィジカルAIは“儲かる”のか?
最後に突きつけられる現実的な話は、これに尽きます。
「で、それは儲かるのか?」
市場は今、SaaSや生成AIソフトウェアが「爆速で収益化する($100M ARR到達など)」スピード感を知ってしまいました。投資家の目は、かつてないほどシビアです。
ハードウェアやロボットは、原価もかかれば、物理的なメンテナンスも必要です。ソフトウェア単体のような利益率は出にくい。このハンディキャップを背負いながら、
- 進化するハードウェアとして継続課金モデルを作れるか
- 生成AI並みのスピードで市場を拡大できるか
ここが証明できなければ、CES 2026の熱狂は、再び「ブーム」の記憶として歴史に埋もれるでしょう。
熱狂のあとで
CES 2026には、確かに久しぶりの熱がありました。LVCCサウスやVenetianをはじめ、会場を埋め尽くす人の波。現地でこれらを浴びて、「やっぱりリアルは面白いな」と感じたのも事実です。

ただ、どうしても2015年の記憶が頭をよぎります。あの時も私たちは熱狂しましたが、結局、生き残ったハードウェアはほんの一握りでした。だからこそ、願わずにはいられません。今回のフィジカルAIこそは、技術のすごさだけでなく、地味でも確実な「ビジネスモデル(稼ぎ方)」を発明し、私たちの生活に定着してほしい、と。
来年の今頃、どの企業が生き残っているか。答えはそこにあるかもしれません。

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