CES 2023 レポート


2023年1月5日 〜 2023年1月8日
門馬 崇氏 Nissho Electronics USA, Manager, Marketing & Business Development
CESは、業界を問わずさまざまなテクノロジーやビジネストレンドをキャッチアップする場として、最適なイベントとなっています。今回、約11万5千名が参加をしました。2020年には参加者数がピークとなっており、17万名が参加していました。昨年は、コロナの影響で5万名弱でしたので、人が戻りつつあります。日本からの出張者もかなり多く見かけました。

※本レポートはNissho Electronics USAからの転載です。オリジナルはこちらをご確認ください。

CES 2023 概要

CESは、業界を問わずさまざまなテクノロジーやビジネストレンドをキャッチアップする場として、最適なイベントとなっています。今回、約11万5千名が参加をしました。2020年には参加者数がピークとなっており、17万名が参加していました。昨年は、コロナの影響で5万名弱でしたので、人が戻りつつあります。日本からの出張者もかなり多く見かけました。 

全体を通しての気づき

当イベントに参加して気づきとなった点は、以下の3点です。

  1. 技術オリエンテッドではなく、体験のデザインに技術をあてはめる
    技術オリエンテッドではなく、きちんと課題を認識、体験をデザインしてから技術をそこにあてはめていくことを意識した製品の展示や講演が多くありました。「技術オリエンテッドのCES」というイメージをもって参加しましたが、イベントコンセプトも進化しているように感じました。
  2. VR/AR、ヘルスケアが特に注目を集める
    モーターショーさながらの自動車関連の出展が、やはり目立っていました。一方、VR/ARやヘルスケアも注目を集めていました。VR/ARに関する画像解析技術は、非常に進んでおり、実際の現場での利用も進んでいます。ヘルスケアについては、コロナをきっかけに、大きな進化を遂げています。
  3. DXやサステナビリティはもはや当たり前に
    会場ではDXという言葉を見聞きする機会が、ほぼありませんでした。デジタルの利活用は、かなり浸透してきています。サステナビリティについては、引き続き重要視されていますが、昨年と比較しますと露出が減っていました。こちらも浸透をしてきていると言えます。

注目セッション

特に興味深かったセッションについて6つピックアップをします。

1. 移動をもっと簡単に、楽しく(BMW社)

BMW社と言えば、優れた走行感覚を提供することにこだわり、ハードウェアを主体とした開発に注力してきた歴史があります。今回、「体験」を提供するためのソフトウェアの重要性について、CEOが説明をしていました。実際、開発の段階から、ハードウェアとソフトウェアの開発チームが、一体となりプロジェクトを進めているそうです。

2. 人口の増加、土地の減少。未来の食糧問題は深刻(John Deere社)

前回のCESでは、農業機器が、雑草の生えている場所を画像解析で認識をし、ピンポイントに除草剤を撒く技術が紹介されました。今回は種付け時にスターター肥料をピンポイントでスプレーする技術が、紹介されています。同社は、農業機械のメーカーですが、もはやロボティクス+AIの先進企業に進化。リアルとインパクトにこだわったデジタル活用については、ぜひお手本としたいアプローチをしています。

3. AIプログラマブルなチップの開発。ハイスピード、省電力を提供(AMD社)

AIの利用が進む中、AIを利用するには、ハイスペックなコンピューティングが必要です。AMD社は、AIのアクセラレーション機能をチップに組み込み、かつプログラマブルな実装をしています。PC業界だけではなく、医療機器や宇宙産業における機器にも、同社のチップは採用されています。AMD自体も、単なるチップメーカーではなく、各産業にアドバイスをする立場に変わってきています。

4. 高品質のWifiを無料で提供(デルタ航空社)

衛星通信会社との提携により、すべての飛行機で、2月より無料で高品質のWifiサービスを提供することを発表しました。今後は、コンテンツ開発にも注力。現状は、利用者のスマホアプリベースのコンテンツ提供を行っていますが、今後は、スマートスクリーンの活用にまで拡張をしていきます。

5. 米国ヘルスケアの将来。あたらしいハイブリッドモデルとは?

コロナの影響で、遠隔医療が浸透してきました。しかしながら、地理的な条件、社会経済的な条件があり、サービスへのアクセスに格差がある状況です。ヘルスケア業界は、もっとデジタル活用がされるべきであることが、言及されています。

6. 女性の活躍を支援する

女性起業家への投資は、全体の3%未満とかなり低い状況です。また、人材不足が問題になっている中、優秀な社員の確保のため各企業は努力を続けています。Wellthy社は、働く女性に対して、育児、介護、財政やメンタルヘルスに関するサービスをBtoBで提供し、企業の離職率低下に貢献しています。

展示会場の様子

1. 大手ブース(SONY社、SAMSUNG)

SONYのブースでは、EVプロトタイプであるAFEELAが、展示されていました。車のフロントに搭載されたバーや、車内の液晶、フロントガラスにエンターテイメントコンテンツを提供している点が、特徴的でした。その他、SONY社の強みであるカメラやセンサーを車内外に45個搭載しています。カメラによる監視により、事故を防止しながら、自動運転機能の実装を目指します。また、同ブース内でされていた、仮想現実上にリアルな人間を投影する技術の展示では、仮想現実上に映った人の輪郭が、はっきりと識別され、高精度に投影されていました。

SAMSUNGブースでは、スマートホームの展示がされていました。「スマートホームハブ」とよばれる小型のデバイスが、スマホと連携し、あらゆる家電をスマホから操作可能です。昨年10月に定められたスマートホームの共通規格である「Matter」にも準拠しています。これにより、将来的には、ベンダーを超えた連携が、期待されます。その他、子供および高齢者の監視、水漏れやガス漏れのセンサーの活用など多数のスマートホームのアイディアが、展示されていました。

2. 注目の「VR/AR、デジタルヘルス、フードテックの展示」

製造の現場、医療の現場では、VR/ARの活用が進んでいます。もちろん、エンターテイメントの分野でも活用されています。Magic Leap社は、外科手術で、心臓の3Dマップとカテーテルの位置をリアルタイムで重ね合わせた映像を出す技術を提供しています。「Magic Leap 2」は、ARデバイスとして初めて、医療用電気機器の国際技術規格であるIEC60601を取得しました。その他のスタートアップでは、AIによるリアルタイムなフィードバックが得られる仮想現実上のジムや、簡単にVR/ARを切り替えられるグラスなどが、展示されていました。

デジタルヘルスでは、小型のセンサー胸につけて、肺の異常な音を検出し、記録することで喘息などの病気における病状の悪化を即座に検出することができる製品や、足のサイズや圧力を10秒で測定できるスキャン装置、歯磨きが正しく行われているかを把握できるセンサーなどが展示されていました。

フードテックでは、ビーガンを対象とした植物性のチーズが、参加者の関心を集めていました。現在市場に出回っているビーガンチーズは、崩れやすかったり、熱を加えても溶けなかったり本物とは程遠いものとなっています。現地で試食ができた本製品は、本物のチーズと言っても遜色ないくらいの完成度でした。その他、食材をのせるだけでカロリー計算ができるボールやまな板を提供しているスタートアップや、廃棄物の写真を撮ってAIが画像解析を行い、レストランに最適な食材在庫を提案する製品などもありました。

スタートアップ

ウェビナーでは、展示を行っていたスタートアップから3社、スタートアップのピッチコンテストで受賞をした3社を紹介しました。

展示ブースで気になったスタートアップ

1社目:Zeals(チャットボット技術を通じた接客体験のデジタル化)

日本のスタートアップです。LINEやInstagtramを活用したチャットボットを提供しています。利用用途は、マーケティングやサービス案内です。同社の製品を利用することで、個人のプロファイルに応じた、パーソナライズされたプロモーションの提供をすることができます。

2社目:I Virtual(スマホやPCのカメラで心拍数、ストレス度などを測定)

利用者は、カメラに向かってリラックスした状態で、自分自身の動画を30秒から1分程度撮影します。独自の画像解析技術によって、瞬間心拍数を推定することができます。また、あごの下のあたりの動きを観察し、人の呼吸数も計算することができます。その他、血圧、ストレスレベルなどのデータを高精度に取得することができます。

3社目:odaptos(テレビ会議でのユーザーの満足度を測定する)

テレビ会議上で、会話する相手の表情をみて、感情をAIが分析するツールです。テレビ会議上での説明内容について、会話する相手がポジティブだったのか、ネガティブだったのかなどを記録していきます。顧客対応の改善や製品開発におけるUXの向上を図ることに、活用されています。

スタートアップピッチ(受賞者)

1社目:Good Maps(障害者向けの方向ガイドを音声で提供)

マップに沿って、目が見えない人向けに、スマホから方向を音声で指示するためのツールです。利用者は、スマホアプリを立上げると、正確な方向をアプリが音声で案内してくれます。カメラで撮影された映像からAIによる分析を行い、正確に利用者の位置を特定します。店舗や工事現場などで利用が想定されています。

2社目:Rebokeh(スマホの動画を活用した視力補助ツール)

中程度の視力障害の方のために設計されたスマホベースの視力補助ツールです。写真編集アプリのようなもので、強力なズーム機能や、色味の調整機能などがついています。ユーザーは、見えにくいものをスマホで動画撮影し、スマホを見ることで見たいものを見やすくすることができます。

3社目:Xander(会話のキャプションをARで表示)

話をしている人の発言内容を、眼鏡のガラス面にキャプション表示をします。キャプションの精度は90%と高く、静かな環境であればさらに高精度になります。製品自体は、クラウドやネットワークへの接続は不要のため、会話内容を傍受されることはありません。

最後までお読みいただきありがとうございました。
Nissho USAは、シリコンバレーで35年以上にわたり活動し、米国での最新のDX事例の紹介や、斬新なスタートアップの発掘並びに日本企業とのマッチングサービスを提供しています。紹介した事例を詳しく知りたい方や、スタートアップ企業との協業をご希望の方は、お気軽にお問い合わせください。

【レポート作成者】

Nissho Electronics USA

Manager, Marketing & Business Development

門馬 崇氏

2007年に日商エレクトロニクス入社。Arbor Networks(現 Netscout)などネットワークおよびセキュリティ関連製品立ち上げ、事業推進を担当。2022年よりNissho USAに赴任。当社が目指す「お客様との事業共創」を実現すべくシリコンバレーの最新情報の提供、オープンイノベーションをベースとしたビジネスモデル開発に向けて活動中。 趣味はサッカー。

門馬 崇氏

※本レポートはNissho Electronics USAからの転載です。オリジナルはこちらをご確認ください。