AmazonがTrainium外販を検討、Nvidia一強に挑む構想
2026年6月18日

クラウド最大手のAWSが、自社開発のAIチップ「Trainium」を外部企業のデータセンター向けに販売する交渉に入ったと、Bloombergが報じました。
実現すれば、AI半導体市場で圧倒的な存在感を持つエヌビディアに対する、これまでで最も直接的な対抗の一つとなります。
アマゾンのAIチップはこれまで主にAWS上の顧客向け容量として使われ、需要が供給を上回る状態が続いてきましたが、その方針が変わろうとしています。
AWS幹部が認めたTrainium外販構想
Bloombergの取材に対し、AmazonのAI担当幹部であるPeter DeSantis氏は、AIチップTrainiumを他社のデータセンター向けに販売する交渉が進んでいると述べました。具体的な交渉相手は明らかにしていません。
アマゾンはTechCrunchに対し、こうした協議は初期段階だと説明しています。
発端は、2026年4月に公表されたAndy Jassy CEOの年次株主書簡(2025年版)です。同氏は「チップ事業を独立した事業として、今年生産したチップをAWSと第三者に販売していれば、年間のランレート(年換算の売上ペース)は約500億ドルになる」と記しました。
Graviton、Trainium、Nitroを含むAWSの自社チップ事業全体の現在のランレートは200億ドル超で、前年同期比で三桁成長が続いているとJassy氏は説明しています。なおGravitonはCPU、NitroはEC2の仮想化・ネットワーク系チップで、TrainiumのようなAI専用チップとは役割が異なります。
なぜAWSはこれまでチップ外販を避けてきたのか
AWSがチップの外販に慎重だった理由の一つは、収益構造にあります。AWSはチップ単体で稼ぐわけではありません。
AIアプリをAWS上で動かせば、計算資源だけでなく、データ保管、通信、セキュリティ管理、運用監視といったクラウド利用にも収益が広がります。チップをクラウド内で使ってもらう方が、収益の裾野が広がるのです。
もう一つの理由は供給制約です。Jassy氏の株主書簡によれば、Trainium2は同等のGPU比で約30%優れた価格性能を持ち、ほぼ完売しました。
2026年初頭に出荷が始まったTrainium3は、Trainium2比でさらに30〜40%価格性能が向上し、ほぼ予約で埋まっています。広く利用できるようになるまで約18か月先のTrainium4も、相当量が予約済みです。
外販に踏み切れば、既存顧客を順番待ちにしかねません。
500億ドルはエヌビディアにどこまで迫るか
500億ドルという規模は、エヌビディアにとって即座の脅威ではありません。エヌビディアの直近四半期売上816億ドルを単純に年換算すると約3260億ドルになり、500億ドルはその一部にとどまります。
それでも、AI半導体で実質的にエヌビディア一強が続いてきた市場に、クラウド大手が正面から参入する意味は小さくありません。
ただし量産には課題が残ります。チップを増産するには、製造委託先であるTSMCの生産能力を確保する必要があります。一方でTSMCでは、最近アップルを抜いて最大級の顧客になったと報じられるエヌビディアのAI半導体需要も大きく、アマゾンが外販用の十分な供給を確保できるかは不透明です。
そのエヌビディアも、CEOのJensen Huang氏がGPUに加えてAI向けCPUで2000億ドル規模の新たなTAM(潜在的な市場規模)が見込めると述べており、両社の主戦場は広がりつつあります。
今後の注目点
外販交渉は初期段階にとどまり、販売先の企業も明らかになっていません。
アマゾンが既存のAWS顧客を順番待ちにせず外販用の供給を確保できるか、そのためにTSMCなどの製造・先端パッケージング能力をどこまで確保できるかが、構想の現実味を左右します。
500億ドルという数字も株主書簡で示された仮定の試算であり、実際の販売規模は今後の契約次第です。
情報源
Amazon – Amazon CEO Andy Jassy’s 2025 Letter to Shareholders
NVIDIA – NVIDIA Announces Financial Results for First Quarter Fiscal 2027
Bloomberg – Amazon in Talks to Sell AI Chips Competing With Nvidia to Other Companies
TechCrunch – Amazon hopes to challenge Nvidia more directly by selling its AI chips
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