まだ始まっていないのに、もう疲れそうな気がする理由 ─日本特有の「引き継ぎ」と人間関係の話

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何も起きていないのに、気持ちだけが落ち着かない

仕事上の大きなトラブルがあるわけではない。
今の業務も、表面上はいつも通り回っている。

それなのに、
なぜか集中しづらい。
新しいことに手をつける気にもなれない。

少し先のことを考えると、
理由ははっきりしないのに、気持ちがざわつく。

人事異動の時期が近づくと、
「まだ何も始まっていないのに、もう疲れそうな気がする」
そんな感覚を抱く人が増えてきます。


前にも進めず、終わりにもできないという状態

この感覚の正体は、
仕事が難しいからでも、忙しいからでもありません。

多くの場合、頭の中はこんな状態になっています。

・いずれ引き継ぐことは分かっている
・だから大きな新しいことは始めづらい
・でも責任はまだ自分にある
・周囲の視線が、少しずつ変わってきている気がする

前に進めない。
でも、完全に終われるわけでもない。

仕事としても、人間関係としても、
どこにも腰を落ち着けられない。

この「宙に浮いた状態」が、
日本の職場で、この時期に特有の消耗を生みます。


日本では、人間関係の負担が早く始まりすぎる

もうひとつ、この時期をしんどくする要因があります。

それは、
人間関係の負担が、実際に始まる前から発生することです。

まだ新しい上司や同僚に会っていないのに、

・どう振る舞えばいいだろうか
・どこまで踏み込んでいいのだろうか
・最初で失敗したら、評価が固まってしまうのではないか

そんな想像が、頭の中で繰り返されます。

何も起きていないのに、
人間関係だけが先に動き始める。

この段階で、
人はもう少しずつ疲れ始めています。


海外では、関係は「始まってから」つくられる

海外の職場を見ていて、
この点はとても対照的に映りました。

環境が変わる前に、
人間関係を完成させようとすることは、ほとんどありません。

・役割が決まってから関係が始まる
・実際に一緒に働きながら調整する
・最初から正解の距離感を決めようとしない

そのため、
「まだ始まっていない段階」で消耗することが少ない。

違いを生んでいるのは、
性格や能力ではなく、
人間関係をどう扱っているかの前提です。


引き継ぎが見えると、人は必要以上に背負ってしまう

日本の職場では、
引き継ぎが視野に入ると、
多くの人が無意識に背負うものがあります。

・次の人が困らないように
・上司に悪く思われないように
・最後まできれいに終わらせなければ

本来、自分が担うべき役割は限られているはずなのに、
その先まで自分の責任のように感じてしまう。

ここで起きているのは、
「自分がやること」と
「相手がどう感じるか」が混ざってしまっている状態です。

これが、人を静かに消耗させます。


今の時期に、あえてやらなくていいこと

もし今、
「まだ始まっていないのに疲れそうだ」と感じているなら、
無理に前向きになる必要はありません。

その代わり、
次のことを、少し手放してみてください。

・すべてを完璧に引き継ごうとしない
・相手の評価まで先回りして引き受けない
・正解の人間関係を今決めようとしない

自分が果たすべき役割と、
相手がどう受け取るかは、同じではありません。


余白を残しておくという選択

これから環境が動き始めたとき、
調整は必ず必要になります。

だからこそ、
今の段階で全部を固めなくていい。

全部を整えない。
全部を引き受けない。

その余白が、
あとから自分を助けてくれます。


疲れの理由が分かるだけで、人は少し楽になる

この時期の消耗は、
あなたの弱さでも、準備不足でもありません。

引き継ぎが前提にあることと、
人間関係を早く整えようとする文化が重なった、
日本特有の構造が生んでいるものです。

理由が分かるだけで、
人は少し楽になります。

この記事が、
「まだ始まっていないのに疲れてしまう」
その感覚を、静かにほどくきっかけになれば幸いです。


次は、
実際に環境が動き始めたとき、
どこまで踏み込み、どこで距離を取ればいいのか
もう少し具体的に書く予定です。

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