S-1 ジャーナル
週刊 S-1 ジャーナル|米国 IPO × S-1 の定点観測

Jersey Mike's の株の約54%が、大株主の借入れの担保になっています

2026年9月28日|株価は 9月25日 終値時点

株の約54%が、借入れの担保になっています

9月22日、サンドイッチチェーンの Jersey Mike's Subs が、臨時の報告書である 8-K を SEC に出しました。載っているのは、株の過半を持つ大株主 Blackstone の関係会社からの知らせです。以下、この関係会社を Blackstone 側と呼びます。会社は、この知らせの中身を自分では確かめていない、と断っています。

ひとことで言えば、Blackstone 側が、持っている Jersey Mike's の株を担保にしてお金を借りる契約を結んだ、という知らせです。借入れの総額は、前からある同じ種類の契約と合わせて約10.9億ドルと決められています。前からの契約の分も含めて担保に入った株は、知らせの計算で、9月16日時点の A種株と B種株を合わせた発行済み株式の約54.3%にあたります。

投資家向けの説明書である目論見書は、上場の前から、こうした担保の差し入れがありうると書いていました。ただし、貸し手も額も株数も書いていません。目論見書の日付から180日の間、既存の株主は株を売ったり担保に入れたりしないと約束します。これをロックアップといいます。それでも目論見書は、Blackstone 側のロックアップは、株を担保に入れることも、貸し手が差し押さえることも、差し押さえた株を貸し手が売ることも止めない、と書いていました。今回の契約は、この180日の中で結ばれました。

ロックアップを「売らない約束」とだけ覚えていると、この8-K は意外に見えます。目論見書は、その約束が届かない場所を、上場の前から名指ししていました。

契約の中身

契約を結んだのは9月16日です。貸し手側のまとめ役である代理人は、Morgan Stanley Senior Funding です。住宅ローンで家が担保になるのと同じで、借り手が契約を守れなければ、貸し手は担保の株を差し押さえることができます。

知らせ自体は、約54.3%を A種株に対する割合として出しています。A種株のほかに、Blackstone 側などが持つ、A種株に1対1で換えられる傘下の Jersey Mike's HoldCo, LLC の持分があり、B種株はその持分と対になっています。知らせは、会社自身が持つ分を除くその持分を、すべて A種株に換えたとみなして計算しています。これは、A種株と B種株を合わせた数に対する割合と同じです。

目論見書は、上場の前に書いていました

上場のときの目論見書は、7月29日付の最終版です。そのリスクの章に、こう書いていました。Blackstone 側は、株を担保にしてお金を借りることがある。株価が一定の水準まで下がれば、担保を足すよう求められることがある。契約を守れなければ、貸し手は株を差し押さえ、市場で売ることができる。同じ段落は、7月2日に出た S-1 にもあります。

ロックアップについては、こう書いています。「Blackstone 側が引受人と結んだロックアップは、担保の差し入れも、貸し手による差し押さえも、差し押さえたあとの貸し手による売却も制限しない」。180日は、目論見書の日付から数えます。

会社も、貸し手の邪魔をしないと約束しました

会社はこの借入れの当事者ではなく、義務も負っていません。それでも貸し手に対して、差し押さえなどの権利を貸し手が使うのを、大きく妨げたり遅らせたりすることをねらった行動はとらない、と書面で約束しました。法令と取引所の規則の範囲で、という条件がついています。

目論見書には、Blackstone との株主間契約として、Blackstone 側が株を銀行などへの借入れの担保に入れる一定の場合に、会社が協力するという取り決めも書かれていました。今回の書面がこの取り決めにもとづくかどうかは、8-K には書かれていません。

会社はこの報告を、会社の支配権が将来変わることにつながりうる取り決めとして出しています。

表は、担保のことを言いません

私たちのスコアボードの「直近の上場」11社は、それぞれの上場初日の終値で1,000ドルずつ買っていたら、9月25日の終値で合計1万142ドルです。Freenome だけは、SPAC 合併が完了した日の終値で数えています。それぞれの上場日に同じ額を S&P500 に入れていたら、1万1,723ドルでした。

Jersey Mike's もこの11社のひとつです。表に出るのは株価だけで、株の約54%が担保になっていることは出てきません。

目論見書の「ありうる」に、名前と数字が入りました

目論見書は、担保に入ることがある、とだけ書いていました。誰から借りるのか、いくらか、何株かは書いていません。9月の8-K で、そこに Morgan Stanley Senior Funding、約10.9億ドル、約54.3%が入りました。照合したのは1社の1つの取り決めで、どの行を見るかを選んだのは私たちです。担保がこの先どうなるかを、目論見書も8-K も予想していませんし、私たちも予想しません。

Jersey Mike's の S-1 を10の問いで読んだ記事(問1・2は無料)

先週の提出物

9月21日から25日に、私たちが記事・答え合わせ・スコアボードで追っている会社が出した書類です。

Jersey Mike's

9月22日・8-K:上に書いた、株を担保にした借入れの知らせです。

Holtec Nuclear

9月25日・登録の取り下げ申請:7月10日に出した S-1 の取り下げを SEC に申請しました。理由は「現時点では、証券の公募をもう望まないため」です。この S-1 にもとづく株の発行や売却はありません。

Oura

9月21日・S-1 改訂版1号:1株40ドルから44ドルという価格の範囲と、株数が初めて入りました。会社が新たに出す株が1,350万株、既存の株主が売る株が3,650万株です。Eli Lilly が最大1億ドル分、Dragoneer 系のファンドが最大3億ドル分を買う関心を示していますが、拘束力はありません。手取りは1株42ドルなら約5億3,260万ドルの見込みで、そのうち約5億2,640万ドルを、上場に合わせて株に換わる株式報酬の源泉税などの支払いに充てる計画です。

9月21日・24日・目論見書を補う資料:上場手続きの開始の発表文と、Robinhood の CEO が Oura の CEO に聞いたインタビューの書き起こしです。

SB Energy

9月21日・S-1 改訂版2号:価格の範囲は、まだ空欄です。

Freenome

9月23日・S-8:株式報酬の制度で渡す株を登録する届け出です。

値決め・上場

ありませんでした。上場を待っている Bamboo、SB Energy、Oura は、値決め後の最終目論見書をまだ出していません。

新しく出た S-1/F-1

記事の候補として読んだのは3件です。SPAC、上場済みの会社の届け出、小型の案件は外しています。

Iambic Therapeutics:9月21日・S-1。AI を使って薬の候補を探す、臨床段階の会社です。記事の候補です。

City Therapeutics:9月24日・S-1。RNA干渉という仕組みの薬を開発する、臨床段階の会社です。見送ります。

TFP Group:9月25日・F-1。資本を出す保険会社などに代わって、保険と再保険を引き受ける会社です。記事の候補です。

そのほか

上場済みの SpaceX、Cerebras、Snowflake などでは、役員や大株主の持ち株の増減や、売却予定の届け出が出ています。1件ずつは挙げません。

週刊 S-1 ジャーナルを、メールでも受け取れます。

無料です。むやみに送りません。停止は、届いたメールに「停止」と返信するだけです。

全銘柄の成績表(スコアボード)を見る →これまでの号を読む →S-1 ジャーナルのトップへ →

速報と答え合わせは X @S1Journal_JP でも

S-1 JOURNAL

次の上場・決算が出たら、S-1との「答え合わせ」を無料でメールでお届けします。