💼チャーリー・ジャビス詐欺事件──1億7500万ドルの買収に潜んだ落とし穴とは?
学生向けのスタートアップ「Frank」の創業者、チャーリー・ジャビス氏を巡る詐欺裁判が、アメリカの金融業界で注目を集めています。この事件では、JPMorgan Chaseが約1億7500万ドル(※2021年当時のレートで約190億円、現在のレートでは約260億円)でFrankを買収したにもかかわらず、その根拠となったユーザー数が実際とは大きく異なっていたことが明らかになりました。
Frankは、大学生の奨学金や学費申請を支援するプラットフォームです。買収当時、ジャビス氏はJPMorganに対して「Frankには400万人のユーザーがいる」と主張していました。しかし実際には、その数はわずか約30万人だったのです。
🧑💻偽データ作成の依頼と証言
この買収が成立する1週間前、ジャビス氏は元エンジニアのパトリック・ヴォヴォー氏に対し、「偽のユーザーデータを作ってほしい」と依頼していたと証言されています。ヴォヴォー氏はこれを拒否し、ジャビス氏は「心配しないで。オレンジの囚人服は着たくないから」と冗談めかして語ったとも伝えられています。
その後、彼女は大学の数学教授に依頼して合成ユーザーデータを作成し、それをJPMorganに提出したとされます。これが、JPMorganがFrankを高額で買収する決め手となったのです。
🏛️JPMorgan側にも甘さが?
一方で、JPMorgan側の調査体制にも疑問が残ります。取引を主導した幹部の1人が、CEOジェイミー・ダイモン氏の株主向け年次書簡を引用し、「ときには分析なんて不要」とチームに送った内部メモが裁判で明かされました。ジャビス氏の弁護団はこれを「杜撰な調査の証拠」と主張しています。
🚨スタートアップ界への警鐘
この事件は、スタートアップ企業が提示する「成長データ」や「ユーザー数」が、どれだけ信頼できるかを再考させる大きな警鐘となっています。資金調達や買収が日常的に行われる現代において、企業側の「過信」と投資家側の「慢心」が引き起こすリスクは決して小さくありません。
今後、裁判の行方によっては、企業買収やスタートアップ評価のあり方そのものが見直される可能性もあります。スタートアップに関わる全ての人にとって、学ぶべき教訓が詰まったケースといえるでしょう。
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