CES®︎2024振り返り


ラスベガスで開催されたCES®︎2024が閉幕し、その盛況ぶりはテクノロジー業界の勢いを象徴していました。CTAによる100周年の記念イベントとして、「ALL ON」をキーワードに掲げ、13万人以上の来場者があり、特に中国からの来場者を除くと、コロナ前の2020年の状況に匹敵する盛り上がりを見せました。Tomorrow Accessとして、このCES®︎2024を振り返り、私たちの視点で分析しました。

はじめに

CES®︎は、テクノロジーの最先端を象徴する世界最大級のイベントとして、毎年1月に開催されます。2024年のイベントも例外ではなく、将来のトレンドを垣間見る絶好の機会となりました。弊社では、イベント参加前の仮説を設定し、その後の結果を振り返ることを常としています。

2024年の主要な焦点は、生成AIがどのように商品やサービスに統合されており、将来のテクノロジーとしての位置付けがどうなっているかを検証することでした。特に、生成AIが「視覚」の機能をどのように活用し、それがUI/UX(ユーザーインターフェイスとユーザーエクスペリエンス)にどのような影響を与えているかに注目しました。

結論から申し上げると、残念ながら、生成AIが目立った形で商品やサービスに統合されている事例は少なく、既存のAI技術が自然に組み込まれているという印象を受けました。

モビリティ関連

モビリティ関連では、やはりソニー・ホンダモビリティが目立っていました。昨年のCES®︎2023で発表された新ブランド AFEELAは、外観こそ多く変更はありませんが、詳細が作り込まれてきた印象があります。2025年の受注開始に向けて、近い未来の動きとして注目でした。

また、ホンダは新しいEVシリーズ「Honda 0シリーズ」を発表しました。コンセプトモデル「SALOON」と「SPACE-HUB」が展示され、これらのモデルは2026年から市場に登場する予定ですので、こちらもかなり現実的な車のように見えました。

一方で、昨年ソニーが行ったように、今年はLGがEVのコンセプトカーを展示しました。この「Alpha-able Car」は、パーソナライズされた車内空間を提供し、自動運転の進展に合わせて、車の内部をエンターテイメント空間としてデザインしました。このような動きは家電企業からくるもので、自動車メーカーとの連携も予想され、来年のCES®︎でのさらなる事業提携が期待されます。

CES®︎は4-5年前からオートショー化しており、自動車の未来が多く展示されていますが、CES®︎2024では、遠い未来というよりは、近未来の自動車がどうなるかを目の当たりにしたような印象を受けました。

デジタルヘルス関連

CES®︎ Innovation Awardsでは、デジタルヘルス関連の製品やサービスが最も多く受賞しました。高性能で小型化されたセンサーや、進化したコンピュータビジョン技術が、この分野の発展を後押ししているように思います。キーノートスピーチではロレアルが登壇していることや、今年は資生堂も初出展。ヘルスケアだけではなく「ビューティーテック」というキーワードも飛び出すほどです。

コンシューマに近いサービスという意味では商品化されてきた印象ではあるものの、これらのサービスが消費者に受け入れられ、実際に成立するかどうかは、まだまだこれからという印象で、これからはビジネスモデルがどう進化していくのかに注目しています。

ロボット関連

IoTがブームになった2015年ぐらいから、コンパニオン型のロボットがたくさん出てきましたが、改めてまたいろいろなものが発表されています。コンシューマ向けではSamsungのBallieが話題になりました。

また、ロボットは、ターゲット別に製品が進化してきており、子供向けにはEmbodiedのMoxie Robot、高齢者向けにはIntuition RoboticsのElliQがあります。ここで考えたいのは、製品化には相当の時間がかかるということです。実はEmbodiedの創業者Paolo Pirjanian氏は掃除機で有名なiRobotのCTO。私は2016年ごろまだステルスモードだったころに彼と面会していて、「ロボットは特定のユーザ向けに作らないといけないと思うんだ。私は子供向けの教育ロボットを作っているんだよ」と話していたことを思い出します。それから約8年の時が経ち、ようやく2024年に商用展開できる予定というものですので、この分野は相当の時間がかかりますね。

Samsung Ballie

各国の動き

CES®︎2024は、各国のスタートアップ支援の動向が際立っていました。日本政府もスタートアップ支援に力を入れていますが、CES®︎での国際的なスタートアップ支援の傾向は、2013年にフランス政府が「フレンチテック」のイニシアティブを打ち出してから始まりました。2014年以降、フランスのスタートアップがCES®︎のEureka Parkで目立つ存在となり、毎年のイベントで重要な役割を果たしてきました。

今年のCES®︎では、フランス勢が引き続きEureka Parkで強い影響力を持っていましたが、韓国勢の台頭が特に顕著でした。昨年から目立ち始めた韓国勢は、今年さらに勢いを増しました。注目すべき点は、韓国のスタートアップがEureka Parkだけに留まらず、Venetian Expoの2階フロアや、大手企業が並ぶLVCCでも活躍していたことです。LGやSamsungのような大手企業の存在もあり、CES®︎2024では韓国勢の力強さが際立っていました。

しかし、韓国の企業が技術的に他国の企業を圧倒していたわけではありません。企業数が多かったことが影響して、優秀な商品やサービスが目立ちましたが、技術やサービスの面で特筆すべき飛躍があったわけではありません。このことから、日本を含む他国の企業にもまだ十分な活躍の余地があると感じられました。これは、今後の国際市場における競争が更に激化することを示唆しています。

まとめ:UI/UX(ユーザ体験)の変化

冒頭にお話したように、今年のCES®︎2024において、我々は「UI/UX(ユーザー体験)がどのように変化しているか」に注目していました。このイベントでは、生成AIをベースにした数多くの新製品が登場し、特にRabbit R1のような新しいデバイスが注目を集めました。しかし、これらの製品やサービスにおいて最も重要なのは、ユーザーが直面する使い勝手とレスポンスタイムです。この点で、革新的な改善が見られる製品は限られていました。スマートフォンの登場以降、市場を席巻する新しいデバイスの登場は稀であり、これは新製品がユーザーの期待に完全に応えていないことを意味しています。

来年のCES®︎においては、画期的なテクノロジーやサービスの登場を期待しています。同時に、今年発表された製品やサービスが市場に広がり、私たちの日常生活にどのように溶け込んでいくかを注視するのも魅力の一つです。Tomorrow Accessとしては、2024年も変わらず、最新の情報を迅速かつ分かりやすく皆さまに提供し続けることを目指しています。

おまけ(Sphere)

https://www.thespherevegas.com/

※Tomorrow Accessはポケトークの紹介パートナーです。英語にお困りの方はぜひどうぞ。