感動の卒業式!

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2024年5月30日に息子の高校卒業式、6月15日に娘の大学卒業式があった。どちらも卒業式は野外で行われ、両日とも晴天で普段以上にジリジリと日差しが照りつける暑い日だったが(日焼け対策に帽子を被っていって大正解)、「これぞアメリカ!」という自由な雰囲気が溢れる式であった。

ちなみに私たち夫婦は二人とも日本の高校、大学を卒業しており、卒業式というと大変厳かでしーんとした雰囲気の中で執り行われるものという認識で一致している。式の最中にうっかり近くの友達とおしゃべりなどをしたら、先生に叱られた記憶がある昭和世代の私。入場の時にはもちろん黙って整列をして、真面目な表情で歩いて席に着くのが当然の習わしであった。(令和となった今も同じなのだろうか?)

打って変わって、アメリカの卒業式は実に自由で卒業生が思い思いに式を楽しんでいた。まずは高校生の息子の卒業式の様子についてお知らせしよう。エドワード・エルガーの「威風堂々」(英語では”Pomp and Circumstance”)の曲に合わせて、卒業生が会場の2階から2名ずつ姿を見せ、1階の来場者に手を振りながら思い思いのポーズを取る。二人でハイタッチをしたり、観客を背にしてセルフィーを撮ったり…と見ている方も楽しい。息子の場合は、一緒に行進した相手とじゃんけん勝負をしていた。

余談だが、曲が流れ始めて入場する学生たちの姿を目にした途端、なぜか涙が溢れ出てきて自分でも驚いた。アメリカに引っ越してきた時に小学生だった息子の姿が目に浮かび、これまでの日々が一気に走馬灯のように蘇ったのだった。息子の晴れ姿をしっかり見るためにも泣いている場合ではないと自分に言い聞かせ、なんとか涙を引っ込めたが、涙って自然に溢れてくるものなのですね。

高校の卒業式会場

大学生の娘の卒業式の場合も、入場時は「威風堂々」が流れ、学生は自分の席に向かって撮影のカメラに向かって手を振りながら周囲の学友と言葉を交わしながら会場入りしていた。運よく自分の姿がカメラにクローズアップされたら、「ヒャッホー!」と喜びのポーズ。お祭り気分満載である。卒業生数の多い大学の場合は会場の左右に大きなモニターが設置され、式の様子が参列者によく見えるように映し出されていた。

大学の卒業式会場

卒業生は卒業式の定番の装いとしてガウンとモルタルボード(mortarboard)という平らな四角の帽子を着用する。高校生の場合は帽子に自分の進学先の大学名をデコレーションすることが多い。我が家の子供たちもデコレーショングッズを購入して、娘は4年前に、息子は今年それぞれ自分らしさを活かしたデザインの帽子にしていた。

息子デザインの帽子
娘デザインの帽子

そして、この帽子にはタッセル(房)がついているのだが、卒業式の開始時にはタッセルは帽子の右側にあり、卒業証書が授与されるときにタッセルを右から左に移動させる。この動作が学生が卒業したことを示す象徴的な行為とされていることを今回子供達の卒業式に参列したことで初めて知った。

高校も大学も卒業生は1名ずつ名前を呼ばれ、スポットライトを浴びる瞬間を与えられる。自分の子供の名前が呼ばれると、来場している家族や親戚は精一杯の声援を送る。親戚縁者の多い家庭はこの日のために枚数規制のある入場チケットをできるだけ多く獲得すべく、ありとあらゆる手段を尽くす。(我が家も1家庭あたり4枚配布された高校の卒業式のチケットのうち、使わない分は息子が友人に譲っていた。)

アメリカに親族は誰一人いない我が家の場合、卒業式は当然ながら家族のみの参加であった。息子の卒業式には夫と私の2名が参加(離れた場所に住む娘は大学の期末テスト中で参加できず)、娘の卒業式には夫、私、息子の3名が参加した。

高校の卒業式で、息子の名前が呼ばれる瞬間が近づき、夫婦ともに撮影スタンバイOKの態勢でいると、なぜか予想以上の早さで息子の名前が呼ばれた。慌ててカメラを覗くが、そこにいるのは息子ではない他人。「えっ、誰?どういうこと?」とカメラから目を逸らし、肉眼で息子の姿を追うと、息子の順番はまだ数名後であった。どうやら担任の先生が緊張のあまり生徒の名前をかなり早く読み上げてしまったらしい。その時、気合を入れてビデオ撮影に入っていた夫が泣きそうな顔で「どうしよう・・・T(息子)の姿を撮り損なった」と言ってきたので、「まだだよ。これからよ!」と急いで伝える私。さっと再び撮影モードに戻る夫。

先生も人間。やっぱり緊張するのですね。子供の名前が呼ばれた瞬間に奇声(?)をあげて祝福する機会は失われましたが、息子が校長先生と握手する姿をしっかりと夫婦分担制でカメラ、ビデオ両方に収めることができたので良しとします。

夫、私、息子の3名が参列した大学生の娘の卒業式では、娘の名前が呼ばれた瞬間、息子が姉への愛情を示す渾身の雄叫び!私も負けじと”Yay!!!”と全身で叫びました。嬉しそうに壇上で手を振る娘の姿を目にした時に、アメリカに来た当初はほとんど英語が話せない中、必死の努力で受験をしてアメリカの大学に入学したのに、世界中を恐怖の底に突き落としたコロナのせいで楽しみにしていた高校の卒業式がオンラインとなり、仲の良いお友達と集うことも禁じられ、たった一人で高校の卒業式に着る予定だったガウンと帽子を身につけ、自宅の近くで卒業記念写真を撮った娘の姿が浮かび、またしても涙が溢れそうになった。

「よかったね。ようやくお友達と一緒に卒業式を祝えることができたね。」と娘のRに心の中でそっと語りかけました。

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