CB Insights社から、世界の投資状況がわかる「State of Venture Q3 2022」が発表されました。

四半期毎に発表される投資状況レポート。各社が色々とレポートを出しており、細かくはいろいろありますが、全体の大きなトレンドを把握しておくことは重要です。以下にポイントを解説していきます。
10のポイント
本レポートでは、以下の10個のトレンドがポイントだと列挙しています。
- 2022年Q3の資金調達は$74.5B(約11兆円)。前四半期比34%の減少
- 誕生したユニコーンはわずか25社。71%の減少
- $100M以上のメガラウンドは44%の減少
- シリコンバレーの資金調達は$10.7B(約1.5兆円)。36%の減少
- Fintech分野の資金調達も38%の減少
- 欧州の資金調達は36%の減少
- レイトステージの調達額の中央値は42%の減少
- アジアのスタートアップのメガラウンドは欧州を$1.7B(約2500億円)上回った
- M&Aは減少傾向だったが、IPOはリバウンド。前四半期比で42%の増加
- 前期のトップVC3社(Tiger Global M、Gaingels, and SOSV)の投資は109件。前四半期比で半分以下


投資トレンドは継続して下降傾向
いろんな見方がありますが、まずは全体の投資傾向がどうなっているかをグラフで見ることが一番です。ご覧のとおり、2022年Q3は投資件数、投資金額とも継続して下降傾向です。

絶対量は2020年までと同程度
しかし、少し頭に残しておいていただきたいことは、それでも2020年と同程度ということ。2020年はコロナが始まった年ではありますが、それまでの過去10年間ぐらいで最も投資が活発な年でした。このため、2021年の異常に投資が熱かった年を除けば、ここ10年ぐらいでは依然として高い水準の投資状況であることがわかります。2022年の着地見込みは以下のとおりです。2020年までと比べ、投資件数は多くはないものの投資の総額は多いです。(1案件あたりの投資が多いということ)


大型調達メガラウンドは減少傾向
また、$100M(約150億円)以上のメガラウンドも大幅に減らしています。


リテール分野の投資件数は反転
本レポートでは、Fintech、Retail、Digital Healthの分野を注目領域として分析していますが、唯一Retailの分野で投資件数が反転しました。これが何を意味するのでしょうか?

米国での投資件数は反転
全体のトレンドは下降傾向でしたが、地理的に見てみると米国の投資件数は反転していることが以下のグラフからわかります。資金調達額全体は減少していますので、ますます1案件あたりの金額が小さいということですね。

他の地域はどうでしょうか?シリコンバレーは投資件数、金額とも減少傾向ですが、シアトルやマイアミなどではいずれも反転していることが見て取れます。現在のマイアミは、高所得者が集まる投資が熱いエリアと言われています。



日本の資金調達状況
最後に日本の状況を見てみましょう。こちらは驚きかもしれませんが、2021年Q4から順調に回復してきています。日本市場自体のIPOが苦しい時期ではありますが、一方で大型の資金調達が多かったことからも、成長市場であることがうかがえます。


如何だったでしょうか?パブリックのマーケットも非常に苦しい状況ではありますが、スタートアップの状況も下降トレンドであることは間違いありません。しかし、エリアや領域、投資件数などの変化を時系列にみることで、2023年の動きを予想し、コロナが終わりつつあるマーケットがどうなっていくのかをしっかりと考えていきましょう。
(出典)https://www.cbinsights.com/research/report/corporate-venture-capital-trends-q2-2022/